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美術館と私6 〜デザインとART〜

美術館と私6 〜デザインとART〜

美術館と私6
デザインとART

この記事が公開された時点では終了しているかもしれませんが、前回の「美術館と私5」でも画像を使用した工芸作家インゲヤード ローマンさんの展覧会が12月9日まで、国立近代美術館工芸館で開催されています。シンプルなデザインのガラスや陶芸がストイックではあるけれど凛とした美しさを醸す食器類。IKEAなどのデザインもし、スウェーデンを代表する陶芸家でありデザイナーであると展覧会図録の中に書いてありました。
デザイン商品の並ぶ金字塔ニューヨーク近代美術館のMOMAショップや国内のミュージアムショップなどでも売られているユニークな形の実用品、例えば照明器具だったり文房具だったり、またはMUJIなどでも見られるARTと呼べるほどのデザイン性の高い商品なども数多くあり、そこを意識せずに長年制作を続けて来ているのがインゲヤード ローマンさんなどのケースだと思います。結果的に機能性と美しさを兼ね備えた芸術品のような製品に仕上がっているように感じます。

1. インゲヤード ローマン展フライヤー

1. ARTとデザインの違いってなんだろう?

1) 自己のケースからの比較

手前味噌で恐縮ですが、私の場合は1992年頃に主婦の片手間に余った材料を利用したハンドメイドを始めました。昔卒業したインテリアデザインの学校で使用した住宅模型の材料やちょうどフラワーアレンジメントを習っていた時だったので、その花材の余り、輸入雑誌の古紙などを使用、リサイクルしてNatural Frame (ナチュラル フレーム)というセロファンの袋でラッピングしてある壁掛けを制作、「雑貨」としてフリマや雑貨屋さん、百貨店などを廻り、販売させて貰いました。通常の商品と同じルートです。下の画像にある「Sac Metallique (ワイヤーのバッグ)」というワイヤーのトートバッグも Atelier Pluie de Couleur (アトリエ プリュイ ド クルール)というブランドを創り屋号とし、ハンドメイドで1点ずつ時間をかけ制作販売したものです。昔自由が丘の雑貨屋さんを通し、1995年のELLE Japonの頁にチョットだけ載っていました。今ではハンドメイドフェアのような展示会が各地で開催され、全国から手作りファンが集まって様々のアイテムを創って発表しすごいことになっていますが、当時はハンドメイドといえば、手芸かDIY以外のものは珍しかったと記憶しています。趣味としてのハンドメイド製品の価値があまり評価されていなかったのだと思います。

2. Sac Metallique
ワイヤーバッグ 当ライターによるハンドメイド

私は上の画像にあるような作品を「インテリア雑貨」として制作販売し、「雑貨アーチスト」という肩書きで活動していました(今も少しネットで継続)が、これを現代アートとして評価して下さる方もいて、ARTとデザインの違いは何か考えるひとつのきっかけともなりました。そして先程のインゲヤード ローマン展の図録の中にその回答に近いと自分が感じた言葉を見付けました。
(以下抜粋)
どうしてセンチメンタルじゃないものを作る必要があるのかを考えた時、ボウルとかお皿に何も隠すことがないことが大切だと思うのです。
だって人生ってとても複雑なものでしょう、だから自分が昼間に制作している時にそれを持ち込んだりできません。疑問や自分のなかにあるものを介入させられないのです。アーティストには決してなれなかったのですね。自分の感情や自身をさらけ出すようなことはできないのです。私は日用品を作りたいわけで、それを人々は常にそばにおいて見る必要はないですよね。云々…

つまり、アートには作者の気分や主観的な想いが込められている一方、プロダクトデザインなどといったデザインには作者の個人的な想い出や気分のようなものを持ち込んではいけないもの、と指摘されているような気がします。感情移入して制作された作品は触れる人に作者の気分や時には重い沈み込んだメッセージさえ伝える為に「ART」となり、単なる日用品からそのような用途以外の制作者からのメッセージまで受け取る必要があるのかということをローマンさんは指摘していて、長年モノづくりに取り組んで来た作家から一つの回答を得たように感じました。

2) 単価の違いもしくは量産可能かどうか?

少々短絡的な回答ですが、オークションなどで売買される美術品などを例に挙げれば、取引される美術品の価格は数が限られているか、又は一点しかないからこその価格ということがあるのではないでしょうか?機械で大量に製造可能な商品は生産数が多い程単価が下がります。例えば、有名デザイナーがデザインしたTシャツなどでも、工場で大量生産されるものは通常価格も下がり、ARTとも単なるデザイン性のある商品とも受け取れますね。

3)そして建築はアートかデザインか?

アートの中でも、私達が身近に見ることができる建築を例にとると、ここ30年位の間に住宅産業界でリフォームが盛んになると平行して、一般にも「暮らし」や「住」に対する意識が高まり、インテリアコーディネイターという言葉も各所で聞かれるようになりました。インテリアコーディネイターというのは、主に室内装飾家を指す言葉で欧米ではデコレーターと呼ばれたりもし、もっと昔から職業としてあったようです。家具や壁紙を選んで室内をコーディネイトしたりするのが、インテリアコーディネイターの仕事ですが、建物そのものを考案するのが建築家です。建築家もやはりここ25年位の間、安藤忠雄さんが大学の建築科を卒業せずとも、国際的に評価される建築を創ることで有名になったあたりから、注目を浴びるようになり、2020年東京五輪の国立競技場案のコンペで選ばれたザハ ハディドさんが突然亡くなり、隈研吾さんの案が採用されるなど、各所で話題となりました。そして建築もまた、建築家の作品であり、個性が発揮される場です。隈研吾さんの場合は、安藤さんの作品がコンクリート打ちっぱなしの人工的な素材で構成されるのが一つの特徴なのと対照的に、木を多用する作品が多いようです。木の持つ質感、温かさなど天然のものを活かす設計です。このように設計者の個性を素材という点などで発揮して創られるアートがこの場合は建築、建物です。又、建築がアートとして評価される解り安い例として世界遺産でもあるスペインバルセロナのサグラダ ファミリアなどがあります。スペインの建築家アントニオ ガウディに寄るこのカトリック教会の建物はガウディが事故で亡くなり、図面も残されていなかった理由などから工事が100年以上経た今も完成せず、予想として完成は2026年と云われています。ガウディの名言として遺されている言葉が「神は急いでおられない」。20世紀初頭に始まったスピード感と機械に代表される未来派の予言するような今の時代だからこそ、時間に追われることなく続くサクラダ ファミリアの例をことのほか重要であると感じます。そしてそれはやはり「芸術」だからなのではないでしょうか。

4) デザインスクールで見付けたARTとデザイン

もう終了しましたが、自分が卒業したインテリアデザインの学校 (現在ICSカレッジオブアーツ) のイベント「バラバラなデザイン展」でARTとデザインの次のような例を見付けました。

3. SOL style 代表 剣持さん

こちらの剣持さんの場合、切り子細工の万華鏡を作ったり、配線ケーブルを束ねるネジのような形のものをデザインしたりされています。また、商業ブースの設計などで国内外でも幅広く活躍されています。遊び心のあるとてもユニークなアイデアをお持ちでそれを商品化されています。そしてこれはART(作品)というよりデザイン性のある商品かな、というシンプルな感想を私は持ちました。

4. MicroWorks の作品

上記の画像はMicroWorksという卒業生海山さんが主宰するデザインスタジオのディスプレイ棚。ゴミとして処分される空き瓶などにデザインを加えた雑貨や、購入者が自由にアレンジできるオリジナルデザインの小さい植木鉢を一つずつ箱に詰めたものなどを販売されているのですが、実用品ではなく、装飾の為の雑貨で「美しく飾る」ということが一つのポイントとなり、こちらは量産されていてもART(作品)」という感じがします。ちょうど画家のリトグラフが何枚も刷られ販売されるケースと同じしくみではないでしょうか。

5. (株)maison 代表 建築家松野さんの施工例

上記のパネルには、一級建築士松野由夏さんによる老人福祉施設 (詳しくは小規模多機能型居宅施設) の施工例が展示されています。隠されがちな施設の壁を取払い、代わりにガラスにしてその部分に棚を取り付け、内と外とをつなげた例 (右下画像) 。時間があれば建物の中で使用する食器や家具類もデザインしたいとおっしゃってました。この場合は、ARTかデザインかというより、既に建築家の方が “無から有” を創り出す 「クリエーター」である、という感想を持ちました。

以上事例を取り上げてみましたが、もうすぐクリスマス。このようなユニークで楽しい作品も美術館に行けばミュージアムショップで数多く販売されています。他ではあまり見ることができない自分ならではのギフト選び、上記のSOL Styleさん、MicroWorksさんお二人も原美術館などのミュージアムショップでのお取り扱いがあるそうです。ぜひ足を運んでみて下さい。因みに、現在私の <Atelier Pluie de Couleur アトリエ プリュイドクルール> のハンドメイド作品は手作りサイト<minne>(注1) のVOYAGEURTK’S GALLERY のギャラリー内、一部たんぽぽモールやYahooショップ<A.Gallery>でのみ公開販売しています。中々UPできないのですが、こちらへも足をお運び下さると幸いです。
*因みに品川にあるアールデコ様式の邸宅を改装した原美術館は2020年に老朽化の為、閉館されるそうです。詳しくは原美術館のサイトでどうぞ。

注1. 手作りサイトminnne

https://minne.com/@voyageurtk

2. ライターが選んだ印象に残る美術展2018 ベスト10 10位〜6位

2018年も師走、今年最後の「美術館と私」として一年を振り返りました。

6位 ゴードン マッタ=クラーク展 
2018.6.19〜9.17  東京国立近代美術館
7位 ピエール ボナール展
2018.9.26〜12.17 国立新美術館

6. ピエール ボナール展
プロジェクションマッピング

8位 彫刻コトハジメ 明治150年記念特別展
2018.9.14〜11.25 小平市平櫛田中彫刻美術館
9位 Re又造
2018.4.11〜5.5 EVENT SPACE  EBIS 303

7. Re又造 展示風景


10位 巡りゆく日々 サラ ムーン写真展
2018.4.4〜5.4 CHANEL NEXUS HALL シャネルネクサスホール

3. ARTなスクリーン

*バスキア、10代最後のとき

アンディ ウォーホルにインスピレーションを与え、デヴィッド ボウイのコレクションにも名を連ね、日本の実業家が123億円で落札したことが話題となったジャン=ミシェル バスキア。27歳で亡くなってから早30年、今やダヴィンチやピカソに劣らない美術史の重要なアーティストとなったバスキアのニューヨークのストリートに作品を刻み付けていた1978〜1981年頃に焦点を充てたドキュメンタリー映画。   

http://www.cetera.co.jp/basquiat

4. 今話題の美術展

*民藝
http://www.2121designsight.jp/program/mingei/

*リー キット展
http://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/exhibition/243/

*田根剛 未来の記憶
http://www.operacity.jp/ag/exh214/

 

<引用文献>
*インゲヤード ローマン展
インゲヤード ローマン レーナ フロム 中尾優衣 2018 東京国立近代美術館発行

 

FIN.

この記事のライター

aloreライター@新井隆子
子供の頃に家が城下町にあった為、近所にお堀のある公園、その中に城跡や県立美術館があり、美術館好きになりました。中学の頃からNHK日曜美術館ファン。
’70 大阪万博の時、岡本太郎の『太陽の塔』の前の特設ステージで開催されたアジア少年少女合唱際に参加、歌ったことも想い出の一つです。
昔、大学で(社会)心理学、その後インテリア、建築を学び「コワイ」と言われても元から「美術」&「心理学」が好き。

年齢/昭和3?年戌年生まれ。
職業/主婦。ブログライター、造形作家(1992年頃からリサイクル雑貨制作atelier Pluie de Couleurを設営)。過去、公民館生涯学習部、手作り教室等で講師の経験があります。

*ハンドメイドのオリジナルブランド”atlier Pluie de Couleur” 公開中。
*リトグラフ、古伊万里、鉄瓶のWEBSHOP <A.Gallery>経営中。

趣味/美術館、ギャラリー巡り。地方の隠れ家美術館の発掘。旅行。ピアノ演奏。料理。映画鑑賞。
資格/アートエバンジェリスト認証。美術検定2級。英語検定2級。
家族/既婚。夫婦+息子1人+トイプードル

都会の心のオアシス「美術館」
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