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22.『フライド・グリーン・トマト』を食べて美しく生きる

22.『フライド・グリーン・トマト』を食べて美しく生きる

―食いしん坊ロンドが続きます

今回は前回『マカロニ』でのババ同様に、一度は食べてみたい食物という私らしい食いしん坊ロンドでジョン・アヴネット監督の映画『フライド・グリーン・トマト』です。この映画は、南北戦争が終わった後でも人種差別が厳然と残っている20世紀初頭のアメリカ南部(悪名高きKKKも出てきます)と現代(公開当時の)を交互に描いていく珠玉の作品です。このブログを準備していた盆休みにアメリカ、バージニア州で起きた死者まで出た痛ましい白人至上主義者集会での衝突事件ニュースが流れ、未だに根深いものがあるのだなとの思いを抱きながらDVDを観直してました。この衝突事件は日増しに大きく報道されるようになり、テレビ解説で「第一のKKK」が消滅した後の、むしろこの映画に描かれる20世紀初頭に復活した「第二のKKK」の方が過激でリンチ事件も多発していたことを知りました。何だか嬉しくない偶然でタイムリーな作品紹介となってしまいました。

KKKの名前とか思想とかは、小学校の図書室でドイルのホームズもの『オレンジの種五つ』を読んでいて、長編『緋色の研究』でのモルモン教なんかと共に初めて知ったものでした。今思うとホームズものはイギリスばかりではなく、結構アメリカのことも書いてあったんですね… ルプランのリュパンものでも、モネ作品なんかにも描かれたのエトルタの『奇岩城』、トリュフォー映画でお馴染(ルームナンバー等に頻出)の『813』とか、今日まで長くそのイメージを引きずっているものがかなりあります。小学生の小遣いでも買えた安い新潮文庫は堀口大學の訳だったので「夜の静寂(しじま)」なんていう渋い詩的表現もリュパンもので知りました。正直読むのには骨が折れましたが、値段の安さには勝てずに、頑張って読んでました。

―時代と世代を超えた友情

(出典)フライド・グリーン・トマト [DVD]TCエンタテインメント 2004/10/22
この作品では映画の中の20世紀初頭を描く「過去編」ではDVに悩む妻とその女友達との友情が、「現代編」ではその過去から生きてきて現在は老人ホームにいる老婦人(ジェシカ・タンディ)と現代女性(キャシー・ベイツ)が交流を重ねながら、次第に深めていく友情の物語が、交互に出てきて感動的に描かれていきます。

―幻の「フライド・グリーン・トマト」

タイトルは20世紀初頭「過去編」のエピソードに登場してくる女性達が開くカフェでの目玉料理(南部では有名な料理のようです)の名前で、スライスした青トマトに衣をつけてフライパンで揚げた料理にちなみます。この料理を召し上がったことのある方はいらっしゃいますか?行くとこに行けば、日本でも食べることができるのでしょうか?そもそも、こういった料理はやはり家庭で作るものなのでしょうか?私も死ぬまでに一回は口にしてみたいなと思っています。

最近、とある飲食店内で英語で書かれた食材シリーズ本の一冊としてトマトの形をした体裁の本が置かれているのを目にしました。どうやら食材としてのトマトに特化した料理レシピ本のようだったので、これは天の導きと手に取り開いてみると偶然「フライド・グリーン・トマト」レシピの頁が目に入り、かなり丁寧な(多分、おそらく…)作り方についての英文記載がありました。やはりこうなると自分で作ってみるしかないのかと…

―「フライド・グリーン・トマト」の効能たるやおそるべし!

(出展)ミザリー(特別編) [DVD] 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2008/11/28
映画冒頭では美女からは程遠いような顔立ちと体型のくたびれきった女性を演じていた「現代編」でのキャシー・ベイツが、物語の進行と共に次第に洗練された美女になっていくのには目をみはります。勿論、美女の方が彼女の本当の姿で、冒頭の姿はメイクや演技でそう見せているのでしょう。名女優の力量というのは本当に凄いものです。

考えすぎかもしれませんが、彼女の前主演作『ミザリー』撮影時にこの映画の冒頭シーンを同時に撮っていたということは、まさかないとは思いますが…

後年、地方都市勤務時代に東京に帰省した折に大劇場(地方都市には大劇場がないのです)で『タイタニック』を見ていたらキャシー・ベイツも脇役として出演していました。名女優キャシー・ベイツを出演させながら、下手に印象的な台詞をしゃべらせたり演技をさせたりしないところが、この監督は只者じゃないなと屈折した感想を抱きました。普通ならキャシー・ベイツにも大きなスポットライトを当てて作品全体の印象を大味にしてしまうところだったかもしれません。

 

 

―伊坂文学へのロンド

次回は「次第に美しくなっていく(と感じられる)女性」ロンドで伊坂幸太郎の小説『バイバイブラックバード』から始めます。

この記事のライター

aloreライター春山博美
2008年に美術検定1級合格、2009年東京都美術館で開催された『美術館名品展』にてアートナビケーターとして初ボランティア参加。
その後、美術アカデミー&スクールが主催するART LABO等で研鑚を積みつつ、2015年に初代アート・エバンジェリスト認証を取得。週末は冬でも汗だくで専ら美術館・画廊を巡っている。
ガイド歴はDIC川村記念美術館、朝倉彫塑館等の個性ある美術館を好み、また「アトリエ巡り」として新宿落合地区での中村彝、佐伯祐三の西洋画アトリエ、川端龍子記念館での日本画アトリエ等の紹介を得意とする。
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