
―有り金を叩いて閉館映画館よりポスターを買い漁る
今回はジャック・ベッケル監督の映画『モンパルナスの灯』です。モディリアーニをジェラール・フィリップが、恋人ジャンヌをアヌーク・エーメが、画商をリノ・ヴァンチュラが演じています。
1990年代に旧池袋文芸坐が閉館された時に所蔵ポスターの販売会があり、有り金をはたいて金星映画社配給のコクトー『恐るべき親達』等のポスターを手持ちの現金を叩いて買い漁った後、出口付近に展示してあったポスター(『男と女』『明日に向かって撃て』等)も売り物なのかと気付き、既に購入したポスターを現金代わりに使って買い換えた時に、何だか厭らしいなと自己嫌悪に陥り、この『モンパルナスの灯』でのヴァンチュラの画商の姿を思い浮かべていました。
というのも、映画のラストではリノ・ヴァンチュラ演じる画商が未だ世に出ぬ天才モディリアーニの死を確認してから、彼の作品を買い漁るのです。そうとは知らぬジャンヌは夫の作品が売れたと大喜びします。実際、ジャンヌは夫の死を知った後に自殺してしまうのです。
―東アジア文化都市への脱線
今回の脱線は「東アジア文化都市」へ飛びます。というのも、盟友エバンジェリストとのメールやり取りの中で、アートに深い関心を持っているAEの方でも「東アジア文化都市」は未だ深く馴染んでいないのかと感じたからです。毎年、日本・中国・韓国の3か国において1都市が選定され、幅広いアートイヴェントが開催されています。今年の日本は京都市で、中でも二条城での展示は世界のトップランナー達が出展するもの凄いもので、足を運べず残念でした。(二条城は太っ腹で土を掘らなければ何をやってもいいという条件で、大台所まで開放しました。)アートテラー・とに~さんのブログ、二条城での展示紹介時に「三つ星」をつけていて、流石とに~さんの感性とシャープさは、ステージが違うなと思いました。(お笑い芸人の方にシャープと申し上げるのは褒め言葉にならないかもしれませんが…)
2014年の横浜市を皮切りに、新潟、奈良、京都、金沢と文化都市が続き、2019年の候補都市(正式決定は2018年に開催される日中韓文化大臣会合時ですが)は何と豊島区に先日決定致しました。一時期「消滅の危機?」との報道も流れたことがある豊島区が「アートの力」に賭けたようです。
私としては上述のように池袋文芸坐は中学生時代からお世話になりっぱなしで、本ブログに登場した、あるいは今後ロンドする映画の数々も、ここで観てきました。勿論、復活後もよく訪れています。また、豊島区には池袋モンパルナスの面影が残っているエリアなんかもあり、街歩きをするにも大変魅力的な地でありますので、何か関わってみたいなと思っています。
―薄倖なジャンヌ像
昨年上野の森美術館展で開催されていた『デトロイト美術館展』、過去に訪れた名古屋市美術館、大原美術館等々でモディリアーニよるジャンヌのポートレイトを、私は今まで数多く観てきましたが、大原にあるセーター姿のジャンヌが醸し出しているいかにも薄倖の雰囲気に一番心惹かれています。
他の作品(『甘い生活』等)では有閑マダム的な役柄の印象が強いアヌーク・エーメは、この『モンパルナスの灯』で薄倖のジャンヌを健気に演じています。
幸せそうな?アヌーク・エーメ『男と女』
前述の旧池袋文芸坐閉鎖時のポスター販売会でゲットした『男と女』のポスターは初公開時のものです。 (初公開時とリバイバル時のポスターをどうやって識別するかですって?実に簡単なことです。映倫番号の若い方を選べばよいのです。)次回は、本作にて薄倖のジャンヌを演じきったアヌーク・エーメが、多分(少なくても映画の終了時点では)とても幸せそうに思われる映画『男と女』にロンド致します。