AE-Salon Webマガジン「alore(アローア)」

34.永遠のエリザベートの影に付きまとわれたロミー・シュナイダー

34.永遠のエリザベートの影に付きまとわれたロミー・シュナイダー

イントロでの発言モードは、まさにフランソワ・リュフォー『アメリカの夜』での、ただ目的地に着きさえすればいいのか?Non(何だか岡本太郎ぽく)、今ならまだ間に合う、全力を込めて甦らさなくては…の世界ですね。ジョルジュ・ドリュリューの音楽の調べに乗って頑張ります。

-ロミーに付き纏うシシイの影

(出展)エリザベート ~ロミー・シュナイダーのプリンセス・シシー~ HDリマスター版 [DVD]Happinet 2015/09/02
ヴィーン生まれのロミー・シュナイダーの出世作はシシイ(ミュージカル『エリザベート』でも有名なハプスブルグ家の皇妃エリザベートの愛称です。ハンガリー好きのエピソードなんかもこの映画ではしっかりと描かれています。そう言えば、来年のパナ汐留ミュージアムのヘレンド展のフライヤーにも「皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯」というコピーが見られます。)三部作ですが、かのショーン・コネリーが、なかなか007役のイメージから脱却出来ずに苦労したように、彼女もこのシシィの影に長く付きまとわれました。

シシイ三部作の相手役フランツ・ヨーゼフ1世を演じているのは、往年の名指揮者カール・ベーム(70年代は帝王カラヤンとクラシック音楽界での世界の人気を二分していました)の息子カールハインツ・ベームです。(TVシリーズ『コンバット』にもゲスト出演した回があり、勿論、ナチスではなく国防軍兵士役で、しかも「国防軍とナチは違う」という台詞までしっかりもらってます。)

その後のロミー・シュナイダーはアラン・ドロンと婚約し、ハリウッドにも進出したり、ドロンにルキノ・ヴィスコンティに紹介してもらって舞台(名門貴族は馬を育てるのが得意なので、ヴィスコンティは初舞台に立つ役者を磨くのが得意だったと日伊協会の押場先生に伺ったことがあります。)に立ったり、オムニバス映画『ボッカチオ’70』に出演したりしていましたが、ドロンとは別れてしまいます。

-シシイの影を乗り越えて

別の男性との結婚・出産等でロミーはしばし映画界から遠ざかっていましたが、ドロンが相手役にロミーを選んでくれたこと等により、晩年(なんと43歳の若さで亡くなってしまいました)にかけてロミーは見事に蘇ります。以下に私が好きなロミー映画を列挙致します。

『夕なぎ』(クロード・ソーテ監督) これは拙ブログにて既に綴らせて戴きましたので、よろしければ飛んでみて下さい。

『追想』(ロベール・アンリコ監督)(原題「古い銃」)公開時のこの予告編ではあの『冒険者たち』のロベール・アンリコ監督の新作と表示され、『冒険者たち』の表示だけで画面が一瞬一杯になりましたので、『冒険者たち』がリバイバルするのか?と期待を抱かされました。アンリコ映画ですので、彼女は美しく取られているのですが、ややショッキングな役柄かもしれません。

(出典)ルートヴィヒ 復元完全版 デジタル・ニューマスター [DVD]紀伊國屋書店 2006/07/29
『ルードヴィッヒ神々の黄昏』(ルキノ・ヴィスコンティ監督)

この映画では、長年避けていたエリザベート役を実に魅惑的に演じています。ルードヴィッヒ2世が唯一愛した女性がエリザベートだというのも、このロミー・シュナイダー演じるシシイを見れば誰もが納得する筈です。

-幻のルードヴィッヒ2世救出作戦

エリザベートが幽閉されたルードヴィッヒ2世の救出作戦を企てていたのではとの伝承が地元には残っているそうですが、このヴィスコンティ映画に出てくるロミーのシシイなら、鮮やかにやってくれそうな気がしてきます。史実としてフェルセンのマリー・アントワネット救出計画には心惹かれます。「怖い絵展」の中野京子による『ヴァレンヌ逃亡 マリー・アントワネット 運命の24時間』(文春文庫)は実にスリリングで面白く、結果が判っているくせにハラハラさせられます。ジャンヌ・ダルクを救出しようとする勇将ジル・ド・レエ(後に青髭公となります)の大活躍なんかも架空のゲームの中でもいいから、誰か作ってくれないものかと期待しているのですが…

(出典)ヴァレンヌ逃亡 文春文庫

ルードヴィッヒ2世は『トリスタンとイゾルデ』の作曲家ヴァーグナーのパトロンでもあったので、ヴァーグナー役もしっかりと登場していますし、ヴァーグナーの楽曲も複数使用されています。いささか乱暴な線引きですが、『山猫』にはリソルジメント(イタリア統一運動)のシンボルであったヴェルディの名前が当時使われていた通り(Viva Verdi!)の形で登場してきますので、『ルードヴィッヒ神々の黄昏』はヴァーグナー讃、『山猫』はヴェルディ讃のといった要素があるのかもしれません。

『サン・スーシーの女』(ジャック・ルーフィオ監督)

AE-salon読書の方々にはこのロミーの遺作に印象的に登場するキスリングの絵に言及すべきかもしれせん。私もこの映画を観た後にジュネーブでキスリング作品を追いかけたりしていました。また、欧州での列車移動が大好きな私は『ロシアより愛を込めて』『ジュリア』『婚約者の友人』(原題「フリッツ」)等コンパートメント内や駅のシーンが登場してくる映画はそれだけで好きになりますので、この映画もそのリストに入っています。

ヴィスコンティが出てきてくれましたので、次回は「ヴィスコンティ」ロンドで長らくお待たせしていた『ベニスに死す』を取り上げます。そろそろ終われるかも…

この記事のライター

aloreライター春山博美
2008年に美術検定1級合格、2009年東京都美術館で開催された『美術館名品展』にてアートナビケーターとして初ボランティア参加。
その後、美術アカデミー&スクールが主催するART LABO等で研鑚を積みつつ、2015年に初代アート・エバンジェリスト認証を取得。週末は冬でも汗だくで専ら美術館・画廊を巡っている。
ガイド歴はDIC川村記念美術館、朝倉彫塑館等の個性ある美術館を好み、また「アトリエ巡り」として新宿落合地区での中村彝、佐伯祐三の西洋画アトリエ、川端龍子記念館での日本画アトリエ等の紹介を得意とする。
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