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感覚的に見るか、理性的に見るか~私のアート鑑賞法~

感覚的に見るか、理性的に見るか~私のアート鑑賞法~

二通りのアート鑑賞法とは

私はアートの見方には、感覚的な見方と理性的な見方とがあり、どちらも非常に大切であると感じている。では、「感覚的」、「理性的」とは、一体どのような意味なのか?そして、なぜどちらも大切なのか?

「感覚的な見方」

「感覚的な見方」とは、ある作品について、以下のように「鑑賞者個人の印象に基づいた見方」をすることを指す。

  •  明るい/暗い
  •  落ち着く/落ち着かない
  •  立体感がある/平面的である
  •  怖い/安心感がある
  •  楽しい/悲しい

この見方の特徴は、「鑑賞者の数だけ解釈が存在する」ということだ。例えば、同じ絵画作品を鑑賞したとき、その色彩に着目した印象を述べたとしても、ある人は「明るく、楽しげ」と感じた色が、別の人には「暗く、悲しげ」と映ることは十分にあり得る。構図に着目しても、「落ち着く」という人と「落ち着かなくてそわそわする」という人がいて当然だ。また、同じ人が同じ作品を見たとしても、十年前と現在とで印象が大きく異なるということも、「よくあること」といえる。

「感覚的な見方」は「全体先行的な見方」と言い換えることもできる。すなわち、鑑賞者が作品を目の当たりにしたときに、まず最初にわきあがるのは、「作品全体の印象」なのだ。その上で、自身がとらえた「印象」について、理由を探るような形で、作品を構成している「部分」(形、色、主題など)に、発想が移行する。つまり、「全体から部分へ」という流れが「感覚的な見方」には存在するのだ。

「理性的な見方」

一方で、「理性的な見方」とは、以下に挙げるような観点から「鑑賞者の理性で、作者のことを考えながら作品を理解する見方」を指す。

  •  作者は誰か?
  •  タイトルは?それが表現しているものは何か?
  •  いつ制作されたか?
  •  どのように制作されたか?(絵画であれば、素材、大きさ、描法など)
  •  主題は何か?
  •  誰のために制作したのか?
  •  作者は作品を通して何を表現したかったのか?
  •  作者にその作品を制作させたものは何だったのか?(時代背景、個人的な信念など)

この見方の特徴は、「解釈が一通り」ということだ。上記の例においても、いずれの項目にも「唯一解」が存在する。もちろん、「仮説」は複数存在してしかるべきである。しかし、どれだけ多くの仮説があろうとも、この場合、正解は「ただ一つ」なのだ。それゆえ、鑑賞者が「理性的な見方」をするときの楽しみは、「正解」をさぐる試行錯誤のプロセスと、無事そこへたどり着けたときの達成感や充実感といえよう。

「理性的な見方」は、「部分先行的な見方」と言い換えることもできる。すなわち、作品を構成する絶対的な要素を一つずつとらえ、その「総和」として、ひとつのアートを鑑賞するのだ。つまり、「部分から全体へ」という流れが「理性的な見方」には存在する。

「感覚」だけでもダメ、「理性」だけでもダメ

このように、アートの鑑賞には、大きく分けて二通りの方法があり得る。しかし、双方は決して対立するものではない。

「アートは感覚だけで楽しめばよい」という思考だと、鑑賞者自身の理性を、強引に抑え込んでしまうことになる。

逆に、「作品を取り巻く背景を理解することのみが鑑賞である」という態度では、せっかく自身がもっている美的感覚を潰してしまうことになりかねない。

分かりやすく言えば、どちらの見方も、それだけでは非常に「もったいない」のだ。

個人的には、ある作品を鑑賞するときには、まず「感覚的な見方」で全体の印象をとらえるのがよいと思う。

その上で、「理性的な見方」に切り替えて、作品を取り巻く背景を理解していくとよい。

そして、最後に再び「感覚的な見方」に戻り、自身の印象が最初と異なるかどうかを自問してみる。この場合、変化があってもなくてもかまわない。

このステップを踏むと、知らず知らずのうちに、作品を通して、作者と鑑賞者とが一つの世界を共有できるようになると私は思う。

おしまいに

アートの鑑賞法は、もちろん人それぞれ。私もその事実を否定するつもりは全くない。大切なことは、「自分も作者も作品も大切に」ということに尽きるのだと思う。この三者を最大限に尊重できたとき、アート鑑賞も最大限に楽しくなる。

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この記事のライター

aloreライターmilkhoppy
<出身>
仙台生まれの東京・川崎育ち。

<所有資格>
アートエバンジェリスト、美術検定2級、教員免許。
 
<意気込み>
「正確なインプットと分かりやすいアウトプット」を、常に心がけ、頑張りたいと思います。
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