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ネコのアート「ニャート」を探して(1)
~谷中のネコは今日も元気~

ネコのアート「ニャート」を探して(1)~谷中のネコは今日も元気~

アートの中にも、ネコはいる

ネコとの生活を夢見ながらも、今は実現できない私。アートを通してネコと触れあえたら、あの愛らしい姿を心ゆくまで眺めることができたら・・・。そんな気持ちから、ネコをモチーフにした作品や関わりのある場所を探してみることにした。

ネコのアート、名付けて「ニャート」。行く先で、どんなネコたちに出会えるだろうか。

時間がゆるやかに流れる美術館へ

今回訪れたのは、台東区谷中の朝倉彫塑館。「東洋のロダン」と呼ばれる彫塑家の朝倉文夫が生前過ごしたアトリエと住居を改装した美術館だ。朝倉は無類のネコ好きで、なんと十数匹と暮らしていたこともあるそう!

建物の素晴らしさもこの美術館の魅力。アトリエや書斎はシックな洋風の空間、そして住居棟に入ると雰囲気ががらりと変わり、純和風の木造建築になっている。畳に座って中庭の池を眺めていると、都内であることを思わず忘れてしまうほど。また屋上には緑豊かな庭園が広がり、谷中の街並みを見渡すことができる。

人物作品などを楽しみながら館内を巡り、いよいよ2階の「蘭の間」へ。白い壁に囲まれた部屋に、ネコのブロンズ塑像が並ぶ。

 

 

まるで生きているかのようなネコたち

展示されていた作品は、『眠り』『餌食む猫』など、全部で10体。まず目がとまったのは、ネコが前足をぐっと突っ張るようにして身体を伸ばした一瞬をとらえた、『のび』。目も口の端もキューッとつりあがった表情が何ともユーモラスで、一緒に暮らしていたらこんな無防備なところも見られるのかな、とうらやましくなる。

『たま』は、この美術館のシンボルにもなっている作品。丸みを帯びた身体と肉付きの良い足、そしてぴんと立ちながらもゆるいカーブを残すしっぽ。いつも思うことなのだけれど、ネコのしっぽというものは、身体を、あるいは神経をいったいどのように使って動かすのだろう。ふと気が付くと、硬く冷たい手触りをもつはずのブロンズのしっぽを前に、人間が決して知ることのないその感覚を想像していた。そう、本物のネコを見ている時と同じように。

思わずドキッとさせられた作品が、『よく獲たり』。ネズミの首根っこをネコがしっかりとくわえている。前に乗り出したその身体はしなやかさに満ち、しかし、狩りを成功させたばかりの口元の力の入れ具合までが何とも生々しく伝わってくるのだ。普段は人間が都合良く忘れがちなネコ本来の野性が、そこにはあった。

そのリアリティから伝わるものとは

朝倉彫塑館の豆せんセット
豆せんセット

動きやポーズがとにかく自然で、ネコの“筋肉”までも感じさせる朝倉の作品。写実表現を追究した彼は、人物塑像を制作する際、似ていると言われるまで何度でも作り直したという。動物作品の制作にも、きっと同じ姿勢で向き合っていたのだろう。ブロンズのネコたちから、あらゆる生き物に向けた朝倉の敬意と愛情を感じた。

朝倉彫塑館は、ネコに関連するミュージアムグッズも充実している。迷った末に今回は、『たま』のシルエットとネコの足跡が印刷された小さな一筆箋と封筒、シールがセットになった「豆せんセット」を購入。税込300円のお手頃価格だ。

本物のネコと出会えるチャンスも

余韻にひたりつつ外へ出て、ぶらりと谷中銀座へ向かう。この街にはネコをモチーフとした雑貨やお菓子のお店が多いのも、ネコ好きには嬉しいところ。

ふと見ると、夕焼けだんだんの脇をゆっくりと歩く、白い毛に黒ぶちの一匹。ずいぶん人に馴れているようで、小さな子どもが近づいても数人の人に囲まれても、動じる様子はない。お気に入りの場所でうずくまったり立ち上がったり、20分ほどのんびりと過ごしていた。

なぜかこんなにも人を惹きつける、ネコという生き物。これからもネコのアート「ニャート」を探して、少しずつご紹介していきたいと思う。

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この記事のライター

aloreライターノムラシマ
ネコと銭湯と焼肉をこよなく愛するコピーライター。
現代アートが好きで、美術館のほか芸術祭にもときどき出没。ひとり暮らし歴約15年。
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