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吉原を語らずして江戸を語れず!『吉原・裏浅草アート散歩』レポート

吉原を語らずして江戸を語れず!『吉原・裏浅草アート散歩』レポート

言わずと知れた東京の一大観光地・浅草。
浅草といえば雷門・浅草寺、そして「観光客でごった返している」イメージが強いでしょうか。
そんな観光地浅草裏手にある千束は、その昔、水田が広がる農村地でした。その田圃の中に吉原遊郭が移転してきたのが明暦3(1657)年。それから公娼制度が廃止される昭和33年まで、約300年もの間、吉原は唯一の公認遊郭として存在し続けました。
吉原、というと名取裕子主演の映画『吉原炎上』を思い出す方も多いかと思います。映画で描かれたような遊女たちの壮絶な生き様も事実としてありますが、一方で、江戸時代の吉原は当時の最先端の流行発信基地であり、絵師や戯作者など文化人たちの集まるサロンの役割も担っていました。また、吉原の遊女たちの姿は浮世絵の題材として好まれ、多くの名作が生まれました。

楽しいアート鑑賞の伝道師“アートエバンジェリスト”として活動している私。吉原文化を知り、江戸文化に親しみを深めれば、日本美術鑑賞をより楽しめるきっかけになるのではないかと考えました。
そこで今回は、江戸時代の人々が吉原へ向かったルートを辿りながら吉原遊郭ゆかりの地を巡り、吉原の文化・江戸の文化に親しんでいただこうとアート散歩イベントを企画。社会人サークル「ART TRANSIT」の企画イベントとして開催する運びとなりました。

史跡をめぐり、歴史と文化に親しむ

2018年7月7日。七夕。
前日までの雨が嘘のように晴れた土曜日、参加者17名・スタッフ3名の計20名が吾妻橋のたもとに集合しました。

まずは隅田川沿いを北上して待乳山聖天に向かいます。待乳山(真土山)聖天は歌川広重の東都名所シリーズにも登場する、有名な観光地でした。

歌川広重 《東都名所 真土山之図》(1818〜1844、国立国会図書館デジタルコレクション)
歌川広重 《東都名所 真土山之図》(1818〜1844、国立国会図書館デジタルコレクション)

 

横の公園にて待乳山聖天について解説

 

そして縁結びと招き猫で有名な今戸神社へ寄り道し、優しい女将さんがおもてなしをしてくれるお茶処・貴船で休憩。女将さん手作りのお茶菓子や紫蘇ジュースなどを頂きながら、私から蔦屋重三郎や酒井抱一といった江戸時代の文化人と吉原の関わりについて少しレクチャーさせて頂きました。

縁結びで有名な今戸神社

 

お休み所・貴船にて解説

しっかり休息した後は、いよいよ吉原へ。

かつて、隅田川の支流である山谷堀沿いに日本堤という人口の土手があり、客は皆この土手を通って吉原に向かいました。現在土手はなく、その場所は「土手通り」という大通りになっています。山谷堀は今は暗渠となり、山谷堀公園として残っています。今回は山谷堀公園の中を通って吉原大門まで向かいました。

山谷堀公園聖天橋からはスカイツリーがよく見える。猪牙舟でやってきた客も、山谷堀の入り口の今戸橋で上陸し、山谷堀に並走する日本堤を歩いて吉原へ向かいました。
山谷堀公園内にはこんな案内板も
さぁ、いざ吉原へ

見返り柳・五十間道・大門・お歯黒溝跡などの旧跡を巡り、全盛期の大見世一文字楼とほぼ同じ敷地面積という吉原公園でその広さを体感しました。

中国の遊郭の風習を真似て、日本中の色街に植えられた柳。この柳は6代目だとか。

 

吉原唯一の出入り口・大門のあった場所にはこんな柱が

 

吉原の外側を通って、次は台東区立一葉記念館へ。明治の文豪・樋口一葉の小説『たけくらべ』は、吉原周辺に住む子供たちを描いた物語です。一葉本人もこの千束に住み、文房具や駄菓子を売る店をしながら小説を書きました。店に来る子供達をモデルにした『たけくらべ』は、思春期の子供の瑞々しい心模様を描きながら、吉原という特殊な色街を抱える千束の住民たちの様子を垣間見せています。

台東区立一葉記念館。とても綺麗で素敵な施設です。

最後は『たけくらべ』にも出てくる千束稲荷神社へ。五穀豊穣の神・倉稲御魂命を祀るこの神社は、かつてこの辺り一帯が稲作が盛んであったことを偲ばせます。

神社の境内に佇む一葉の像。お稲荷さんなので狛犬ではなくお狐様が

かつて遊郭があり今もその名残を見せる裏浅草・千束の町は、なかなか一人では散策しづらい場所かも知れません。しかし、歴史や文化を知りたい、という共通の志を持った仲間たちが集まれば、一緒に楽しく散策できるのではないかと思います。

今回は、史跡を見ただけではわからない吉原遊郭についての話や、江戸の文化人と吉原の関係の話も織り交ぜながらご案内し、楽しんでいただけるように努めました。
参加者さまから帰り際に「楽しかったよ!また参加したい!」とお声かけいただけたことがとても嬉しかったです。今後の活動の何よりの励みになります。
改めて、イベントにお越しいただいた皆さま、ご協力くださったスタッフの皆さまに心よりお礼申し上げます。

秋頃にまた、イベントが開催できればいいな……!

この記事のライター

aloreライター橘高あや
千葉県在住。アートエバンジェリスト。美術検定2級。楽しい美術鑑賞の伝道師を目指して精進中。
得意分野は浮世絵と宗教画。絵画から物語を読み解くことが好き。
趣味は読書と料理、御朱印集め。
好きな言葉は温故知新と不易流行。古きものも新しきものも、一時の流行からも学び取り面白がれる人間が理想。
アートは心を、人生を豊かにしてくれます。作品との対話は自分との対話。思いもつかないような多種多様な表現と出会い、それに対する自身の反応から、自分に対する新たな発見を得ることができます。異なる価値観を知り理解することは、他人への理解や許容につながります。アートと付き合っていると、自分にも人にも優しくなれる気がするのです。閉塞感に苛まれる現代社会をアートの力で変えていけたら。そんな思いでおります。
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