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2人の画家の「パレット」が落合と笠間をつなぐ

2人の画家の「パレット」が落合と笠間をつなぐ

―先ずは落合の話から致しましょう

一年以上ご無沙汰している「冬でも汗だく春山」です。記録づくめだった昨年の酷暑も過ぎ去り、美術館巡りには最適の季節になってきました。(と言いつつ、実は未だに大判タオルで汗だくです)

報告が大変遅くなりましたが、昨年6/10に3回目の「落合ツアー」を実施致しました。「私のツアーは飲まず食わずの上、やたら歩かされる」と認識されていますが、その反省から珍しく「食」にもかなりの気合いを入れてみました。

そんな柄にもないトライアルの反動からか当日は台風が接近し、オフィシャルツアーなら中止もしくは延期すべきでしたが、自主ツアーの上、ご参加各位からも雨位ならやろうと背中を押してもらい強行したところ、幸い普通の雨模様で済みました。むしろ雨に打たれる紫陽花がとても美しく、過去2回の5月、10月(蝶が舞う陽気でした)に開催し、やたら暑かった落合ツアーで汗だくだった私にとってはむしろラッキーな天候でした。

行程はいつもの通り、中村彜、佐伯祐三2人のアトリエ巡りをメインに、アダチ伝統木版(現代の彫師、刷師による色鮮やかな『名所江戸百景』を贅沢に手に取ってじっくりと眺めることが出来ました)や聖母病院等を巡るものでした。落合のこの2人のアトリエの後継者たる鈴木誠と佐伯米子のパレットは「笠間日動美術館」パレット館に常設展示されています。そもそもこの美術館はそういったパレットの数々を展示するために開設されたのです。

イケメン佐伯祐三のアトリエ
イケメン佐伯祐三のアトリエ

鈴木誠は東近美の戦争画等でお馴染みでしょうが、佐伯祐三の第一次パリ時代には佐伯のアトリエで暮らしていました。中村彜没後は中村のアトリエで暮らし、彼が意識的に彜時代のアトリエを保存していたことが、今日の水戸や落合の「再現アトリエ」に役立ちました。佐伯米子につきましては、第二次パリ時代に夫祐三と一人娘を亡くした後、二人の遺骨を懐いて、祐三の名前とアトリエを守り続けました。

―「食」にも気合いを入れた理由と成果は

ツアーの仕上げは「ガッタイオーラドルチ」での会食でした。ここは池袋モンパルナス祭時に例年ワイン会が開催されていましたが、南欧の空間をそのまま切り取ってきたかのような雰囲気に私はすっかり惚れ込んでました。通常ランチ営業はしていないのですが、この雰囲気の中でランチを味わえたらアートファンには受けそうですし、落合⇒ランチ⇒池袋モンパルナスという充実の「アート一日ツアー」が組めるのではとの狙いもありました。

店内にはフレスコ画家であるご主人の作品がふんだんに展示され、料理研究家の奥様が注文を受けてから、こだわりの料理を作るという仕組みで、ランチ対応不可との説明に素直に納得しました。それどころか、アート街巡りとは切り離し、ここに単独で来るだけでも十二分に満足できるツアーになるなと思いました。ご主人が提供して下さるワインはどれも個性ある美味しいものばかりでした。

ご参加各位の感想は「このツアーに参加しなければ来ることがないところばかりで新鮮だった」「佐伯祐三ってイケメン(可哀そうな彜…)」「雰囲気も料飲も魅惑的なレストランにまた来なくては」と大好評でした。

―お待たせしました  やっと笠間ツアーです

「笠間ツアー」は秋の紅葉シーズンまっただ中、笠間菊まつり期間終盤の昨年11/23に実施致しました。

ルートは笠間日動美術館⇒笠間稲荷界隈散策(昼食等は各自フリーに 私は勿論「飲まず食わず」で笠間稲荷美術館)⇒春風萬里荘という私にしてはオーソドックスな一日コースでした。

自由度の高い大人のツアーを気取って、決め事は10時20分に笠間日動美術館チケット売り場集合のみと致しました。つまり美術館以降はコースからも外れても可という設定です。正確な人数が読めない博打的なところもありましたが、価値観が多様化している今日、気軽には足を伸ばしにくい笠間日動美術館に一人でも多くの方にお越し戴きたかったので、こんなツアーもありかなと思った次第です。

―「夢の美術館」を目の当たりに

笠間日動美術館での企画展は「藤田嗣治と陽気な仲間たち」であり、ここに隣接する「鴨居玲の部屋」の2つの解説を贅沢にも金澤学芸部長様に、参加者は皆コアなアートファンですと告知してお願いしました。君代夫人の没後、露出が急増している藤田ですが、都美等での企画展とは一味違う日動画廊ならではのシャープな切り口が見事な展示内容でした。更に公立美術館では実現不可能なワークシートクイズに全問正解するとローランサン仕様の素敵な便箋が戴けるという粋な計らいに参加者も熱心に作品に向き合いました。初めて訪れた方は、同じ敷地内の「フランス館」(常設館ですが、常設と言っても質・量ともに半端なく素晴らしいです)、「パレット館」(落合のところで綴りましたように壁三面に各作家の持ち味を活かした見事な「作品」となっているパレットがぎっしりと展示されています)、「屋外彫刻群」(紅葉とのマリアージュが最高でした)に出くわす度に、漫画のように瞳をキラキラ輝かせて喜んで下さいました。しかし、いくら「夢の美術館」と言っても世の中そう甘くはなく、「落合ツアー」にご参加戴いた方には溢れんばかりのパレットの中から佐伯米子、鈴木誠のパレットを探し出す課題を与えました。ワークシートやこんな課題は、じっくりと作品を眺めるための格好のトリガーとなるわけです。

澤田志功『歪んだモノリス』 カンディンスキーを気取って写真を横にしてしまいました 澤田先生ごめんなさい
澤田志功『歪んだモノリス』 カンディンスキーを気取って写真を横にしてしまいました 澤田先生ごめんなさい

最も歴史のある洋画商「日動画廊」は自分には敷居が高いかなと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、鴨井玲作品は銀座本店によく展示されていますし、是非是非お気軽に足を踏み入れてみて下さい。近々にこの「日動画廊」を含む銀座ギャラリー巡りを比較的少人数で行うべく、目下三沢先生と汗だくでプランニング中です。

ー美術館のアフターもすこぶる充実

笠間稲荷美術館では菊まつり期間中の特別展として「雪村展」が開催されていました。雪村はどうせ1~2点位かなと大変失礼なことを思って覘きましたが、10点以上並んでいて、一昨年の藝大美術館展覧会での名コピー「ゆきむらではなくせっそんです」を懐かしく思い起こしながら鑑賞を楽しみました。

春風萬里荘は北鎌倉の魯山人邸を笠間日動美術館別館として笠間に移設したものです。将に紅葉の真っただ中で、枯山水の石庭や蓮池にかかる太鼓橋等が実に美しく拝めました。魯山人は茅葺き民家の母屋には雰囲気を壊さないようにと意図的に手をつけず、そのかわりに元は馬屋であった洋間にて魯山人ワールドを思いの限りに展開しています。せっかく笠間日動美術館までいらっしゃる際は、春風萬里荘にもお立ち寄られることをお忘れなく!

グッドタイミングで日が落ちてきた帰りの高速バスの車窓からは、満月や魅惑的にライトアップされたスカイツリーを眺めることも出来ました。

ご参加各位の感想は「楽しい一日であっという間だった なんでもっと早く来なかったのだろう」「足を伸ばすだけの価値は十二分にあった」「金澤部長のお話が実に興味深かった もっともっと聴いていたかった」と好評なものばかりでした。

この記事のライター

aloreライター春山博美
2008年に美術検定1級合格、2009年東京都美術館で開催された『美術館名品展』にてアートナビケーターとして初ボランティア参加。
その後、美術アカデミー&スクールが主催するART LABO等で研鑚を積みつつ、2015年に初代アート・エバンジェリスト認証を取得。週末は冬でも汗だくで専ら美術館・画廊を巡っている。
ガイド歴はDIC川村記念美術館、朝倉彫塑館等の個性ある美術館を好み、また「アトリエ巡り」として新宿落合地区での中村彝、佐伯祐三の西洋画アトリエ、川端龍子記念館での日本画アトリエ等の紹介を得意とする。
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