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街中で見つけたMyアートをご紹介!アートサプリウォーク勉強会レポート

街中で見つけたMyアートをご紹介!アートサプリウォーク勉強会レポート

ひっそりと佇む史跡、小さいけれど魅力的なギャラリーや美術館。
私たちが暮らす街の何気ない風景の中には、実はたくさんのアートとの出会いが隠れています。
そんな身近なアートを再発見できるイベント 、“アートサプリウォーク”をご存知でしょうか。
アートエバンジェリストの案内で街の中のアートを訪ね歩く、「自分の足で作品に会いにいく」がコンセプトの、アートエバンジェリスト協会公式イベントです。

この度、アートエバンジェリスト(以下AE)の認証資格を所得した方々が、活動の一環としてアートサプリウォークを実施するための勉強会が行われました。
企画、案内役はAEの春山博美さん。

AEの春山さん
AEの春山さん

春山さんの案内を受けながらお客様の立場で参加し、散策エリアのチョイスや情報収集の仕方、ルート設定のコツ、解説をする際のポイントなどを学びます。

今回散策するのは、番町文人通りエリア。
仏教美術を展示している“半蔵門ミュージアム”からスタートし、“戸嶋靖昌記念館”で孤高の芸術家・戸嶋靖昌の作品を鑑賞。多くの文人たちが住んでいた“番町文人通り”を通ってスペイン国営“セルバンテス文化センター”を目指します。
春山さんはこのエリアを選んだ理由として、
「AEが研修などでよく訪れる“美術アカデミー&スクール”がある四谷周辺にも、こんなに面白いアートスポットがあるとご紹介したかった。昨年の初夏にセルバンテス文化センターで戸嶋靖昌展を観て心惹かれ、いつかは取り上げてみたいと思っていましたし、半蔵門ミュージアムが今年オープンしたので、良い機会だと思いました」
と話していました。

東京メトロ半蔵門線の半蔵門駅4番出口に集合し、まずは半蔵門ミュージアムへ向かいます。

貴重な仏教美術に出会える半蔵門ミュージアム

半蔵門ミュージアムは、真如苑が所蔵する仏教美術品を一般公開している文化施設です。
運慶作と推定されている大日如来坐像(重要文化財)や、ガンダーラの仏伝図浮彫りを常設しており、仏像や仏画、経典などを定期的に入れ替えながら展示を行っています。

半蔵門ミュージアム
半蔵門ミュージアム。入場無料。

一階の受付で入館証を受け取り、地下の展示室へ。
内部の建築設計は、平等院鳳翔館などで知られる栗生明氏によるもの。大理石の床と壁で地層をイメージしたという地下1階の展示室は、諸仏を納める神聖な御堂として建てられたそう。
落ち着きのあるその空間は、美術品の展示室というより、神聖な祈りの空間といった雰囲気で、心が安らぎます。

続いて、半蔵門ミュージアムから歩いて2分の場所にある戸嶋靖昌記念館分館へ向かいます。

戸嶋靖昌記念館で孤高の画家の魂と出会う

戸嶋靖昌記念館は、芸術家の戸嶋靖昌の死後、その作品を守り伝えるため、親交の深かった執行草舟氏が設立した記念館です。

戸嶋靖昌記念館(事前予約制)
戸嶋靖昌記念館(事前予約制)

戸嶋靖昌は秋田県出身で1934年生まれ。武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)彫刻科を卒業後、40歳でスペインに渡り、グラナダのアトリエで制作を続けました。
2000年に日本に帰国し、その2年後に執行氏と出会います。ほぼ無名だった戸嶋は、作品を完成させることなく加筆し続け、作品を売ることもなく、名誉もお金も手放し、ただひたすらに自分の芸術と向き合い続ける画家でした。そんな戸嶋の作品に高貴な芸術性を感じ取った執行氏は、戸嶋に肖像画の製作を依頼し、以降、戸嶋が2006年に亡くなるまで深い親交を続けました。
癌を患い余命宣告を受けた戸嶋が、最期まで描き続けたのは《魅せられたる魂》と題した執行氏の肖像画でした。
この絶筆となった作品について、執行氏は著書の中で次のように述べています。

“  その絵の前に立てば、私も含めて多くの人間が無言になる。
人間を無言にさせる力とは、絶対に技巧や技術のなせる力ではない。
ひとりの人間の命懸けの表現がそれを可能にしているのだ。”
執行草舟著『孤高のリアリズム ―戸嶋靖正の芸術―』講談社エディトリアル

「分かりやすいもの」が持て囃される昨今、抽象的に描かれる戸嶋の作品はそれらとは対極的かもしれません。しかし、観る者が思わず口を噤み、作者である戸嶋の人生や精神性に想いを馳せ、やがて観る者自身の心の内にまで向き合わせてしまう、そんな力が戸嶋の作品にあるように思われました。
本当のリアリズムとは何か。生きるとは何か。
作品と向き合い、静かに思索に耽る。
素敵な時間を過ごすことができました。

戸嶋靖昌記念館の展示室で作品を鑑賞
戸嶋靖昌記念館の展示室で作品を鑑賞

 

戸嶋靖昌記念館入り口にて
戸嶋靖昌記念館入り口にて

 

知られざる文人町

戸嶋靖昌記念館をあとにし、番町文人通りを通って、ゴールのセルバンテス文化センターへ向かいます。
この番町麹町界隈には、明治・大正・昭和にかけて、藤田嗣治、島崎藤村、与謝野晶子・寛、有島武郎・生馬兄弟、泉鏡花など多くの作家や芸術家たちが住んでいました。

 

旧居跡などに解説の看板が出ています
旧居跡などに解説の看板が出ています

 

スペインの文化発信基地

スペイン政府により設立されたセルバンテス文化センターでは、スペイン語教室や、アート作品の展示、歴史講演会などの文化イベントが開催されています。
ここで入場無料のギャラリーでアート作品を鑑賞後、近くのお店でランチをとりながら反省会をし、勉強会は無事終了しました。

施設について解説する春山さん

アート鑑賞の楽しさを沢山の人に伝えたい

今回の勉強会にはAEの資格取得をご検討されている方にもご参加いただき、散歩にはもってこいという秋らしい空の下、和やかな雰囲気で開催することができました。
勉強会を企画した春山さんは、活動の仕方に迷っていらっしゃるAEの皆さんに向けて次のようにコメントしています。
「多くのAEの方々は、『AEの認証資格を取得するということは、“アートに対する感動を伝えたい”という気持ちを行動に移すためのトリガーになる』という期待を持ってAEになられたのだと思います。その行動に踏み出す第一歩として、ご自分の好きなコースを選んで『アートサプリウォーク』をプランニングしてみてはいかがでしょう。最初はご友人やご家族をご案内するところから始めてみるといいと思います。あえてあまり知られていない作家の紹介を組み入れると、参加者にご関心を持って戴きやすいのではないかと、私の経験から思います。
今回の続編としてワークショップ形式の勉強会もできたらいいなと思っています。
みんなで楽しみながら活動を盛り上げていきましょう!」

アートを鑑賞することは、喜び・学び・楽しみ、そして人との繋がりを与えてくれます。
『アート鑑賞の楽しさを沢山の人に伝えたい』。
この想いを改めて心に刻み、アートエバンジェリストの活動をより広げていきたいと思います。

2018年度AE協会カンファレンス
(2019年2月2日(土)開催)

2018年度AE協会カンファレンス
(2019年2月2日(土)開催)

年に一度のアートエバンジェリスト協会カンファレンスを2019年2月2日(土)に開催します!
今年度は、アートブログの草分けである「青い日記帳」主宰、また、『いちばんやさしい美術鑑賞』(筑摩書房)の著者でもあるのTak(たけ)氏をお迎えして、「アートを伝え続けること」をテーマとしてお話をお伺いします。
また、現在アートツアー企画、開催やライター活動等で、勢威活躍中のアートエバンジェリストの方々による2018年度活動報告も予定しています!アートを伝えること、アートエバンジェリスト活動にご興味のある方は、是非、この機会にご参加ください!

この記事のライター

aloreライター橘高あや
千葉県在住。アートエバンジェリスト。美術検定2級。楽しい美術鑑賞の伝道師を目指して精進中。
得意分野は浮世絵と宗教画。絵画から物語を読み解くことが好き。
趣味は読書と料理、御朱印集め。
好きな言葉は温故知新と不易流行。古きものも新しきものも、一時の流行からも学び取り面白がれる人間が理想。
アートは心を、人生を豊かにしてくれます。作品との対話は自分との対話。思いもつかないような多種多様な表現と出会い、それに対する自身の反応から、自分に対する新たな発見を得ることができます。異なる価値観を知り理解することは、他人への理解や許容につながります。アートと付き合っていると、自分にも人にも優しくなれる気がするのです。閉塞感に苛まれる現代社会をアートの力で変えていけたら。そんな思いでおります。
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