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「伝説の画商」木村東介と「画壇の風雲児」中村正義との出会いが遺した「从展」

「伝説の画商」木村東介と「画壇の風雲児」中村正義との出会いが遺した「从展」

「伝説の画商」と言われた木村東介

米沢出身の木村東介は昭和11年に湯島天神上に羽黒洞」を開業し長谷川利行斎藤真一らをいち早く見出し、肉筆浮世絵や大津絵等も取扱いました。オノ・ヨーコに連れられて来店したジョン・レノン曽我蕭白を購入したり、世界的な名ヴァイオリニスト、アイザック・スターンが来店したこともあります。現在、日本橋高島屋横にある「不忍画廊」は「羽黒洞」の洋画部門を独立させたものです。

「画壇の風雲児」と言われた中村正義

豊橋に生まれた中村正義は「速水御舟の再来」と騒がれる程の卓越した画力を持ち、日展で立て続けに「特選」を受賞し、36歳の若さにして日展審査員となりました。しかし、日展や師の中村岳陵と袂を別って以来、従前の日本画の枠を飛び越える型破りな作品群を残し、晩年には病気と闘いながらも今日まで継承されている「从(ひとひと)展」「東京展」を精力的に立上げました。

終生続いた二人の深い交流

若い頃から病弱だった正義の入院中に、東介が「日本のゴッホ」長谷川利行の『安来節の女』を見舞品として贈ったことがきっかけで、東博で開催されていた「ゴッホ展」の帰りに「羽黒洞」立ち寄った正義が東介と初対面して以来、二人の深い交流は終生続きました。日展を飛び出したこと等により、画商や百貨店によって正義の作品がボイコットされている時でも東介は正義を支え続け、後に学者をも論破していった正義渾身の「写楽」研究のトリガーは羽黒洞で目にした肉筆浮世絵でありました。東介の実弟木村武雄代議士を介し、時の自民党幹事長田中角栄に紹介された正義が角栄に住宅の新建築工法を売込んだこともあり、その時の応接室には正義の作品が意識してかけられていたという、いかにも気配りの角栄らしいエピソードが残っています。東京都美術館新館(今日の建物です)で行われる「東京展」準備段階時に、癌が進行していていた正義の代弁者として、まとまりが悪かった出展者達に団結を呼びかけたのは他ならぬ東介でありました。

3/30のツアー企画に至った経緯

現在は東介のご令嬢木村品子氏が代表を務める「羽黒洞」、ご令孫荒井裕史氏が代表を務める「不忍画廊」、そしてもちろん「从会」と諸先生方からの温かいご支援を戴きまして、3/30(土)に東京都美術館での「第43回从展」と湯島の羽黒洞での「小さな从展」を観賞するツアーを企画しました。反骨精神溢れる中村正義が、タテ系列の画壇に異議を唱え《人》を敢えてヨコに並べる形で命名した「从展」では、今回の「特別陳列 井上洋介」の解説を受けるところからスタートし、個性溢れる(”作品”がの意味です(笑))出展作家先生方からギャラリートークを受けながら、参加者から質問することも出来ます。また「小さな从展」では気に入った出展作家の小品を購入することも可能です。

当初は中尾部長や私がファンである箕輪千絵子先生のギャラリートーク+得意(私は谷中幼稚園出身です)の谷中巡りコースをプランしていました。しかし、「从会」に入って日が浅い箕輪先生からは話を通しにくそうな感じでしたので、所属の不忍画廊に相談し、ご紹介を受けた亀井三千代先生から「从会」にお話を通して戴き、更に羽黒洞「小さな从展」もコースに入れてみては如何?とのご提案を戴きました。なるほど、それならばいっそのこと木村東介も前面に出そうかという様に、その後は企画自体がひとりでに膨らんでいった次第です。

こんな方々にご参加戴ければ…

「羽黒洞」と「不忍画廊」のお客様や「从会」の関係者にとっては一年のビックイべントである「从展」と「小さな从展」に行くのは当たり前のことです。「从会」では外部からこういった提案を受けるのは初めてのことですと喜んで戴き、むしろ「木村東介っていったい何者?」「東近美等で中村正義作品を目にしたことはあっても、正義と強く意識して観たことがない」というような方々のフレッシュな眼で私達の作品を観て戴けると嬉しいですと期待をされています。

「羽黒洞」では木村品子社長から生前の木村東介や中村正義のお話も伺える予定ですし、正義と共に「从会」創立会員の一人だった大島哲以の大作二点が常時画廊の外に展示されています。当日、「不忍画廊」では、その「大島哲以展」が開催されていますので、ご希望の方にはツアー終了後、「不忍画廊」にもご案内致します。因みに私の大島哲以コレクションも展示される予定です。もともと、正義の大作『源平海戦絵巻』を久しぶりに目にしたくて川崎市岡本太郎美術館にて開催されていた「岡本太郎と中村正義「東京展」」展に足を運んだところ、「東京展」に出展されていたと思われる大島哲以の大作を目にし、惚れ込んでしまいました。こんな風に関心がぐいぐい拡がっていくというのは実に楽しいものです。

二つの展覧会場を移動する時は、花見客による大混雑がひどくなければ不忍池を横断し、東介が弁天堂横に建てた「利行碑」(揮毫はあの熊谷守一です)を見学する予定です。運が良ければ東介や正義が花嵐を吹かせてくれるかもしれませんね。同時期の上野地区で開催されている大型企画展とは一味違った、ユニークな展覧会をこの機会に一緒にのぞいてみませんか?会社の役員室や家庭のリビングに展示してあるような作品とはテイストが異なった、人生と対峙するようなインパクトを受ける数々の作品が皆様をお待ちしています。冬でも汗だくオヤジが大判タオル片手に汗(冷汗かも?)を吹き出しながらご案内させて戴きますので、ご参加をお待ちしています。

2019年3月30日(土) 伝説の画商・木村東介と画壇の風雲児・中村正義の出会いが遺した
「从展」を桜と共に追う

2019年3月30日(土) 伝説の画商・木村東介と画壇の風雲児・中村正義の出会いが遺した
「从展」を桜と共に追う

「伝説の画商」と言われた木村東介と「画壇の風雲児」と言われた中村正義をご存知ですか?  
この二人の出会いが産み落とした「从展」を春の上野で追いかけてみましょう!

この記事のライター

aloreライター春山博美
2008年に美術検定1級合格、2009年東京都美術館で開催された『美術館名品展』にてアートナビケーターとして初ボランティア参加。
その後、美術アカデミー&スクールが主催するART LABO等で研鑚を積みつつ、2015年に初代アート・エバンジェリスト認証を取得。週末は冬でも汗だくで専ら美術館・画廊を巡っている。
ガイド歴はDIC川村記念美術館、朝倉彫塑館等の個性ある美術館を好み、また「アトリエ巡り」として新宿落合地区での中村彝、佐伯祐三の西洋画アトリエ、川端龍子記念館での日本画アトリエ等の紹介を得意とする。
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