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ネコのアート「ニャート」を探して(3)~百段階段の福ねこたち~

ネコのアート「ニャート」を探して(3)~百段階段の福ねこたち~

和の空間にネコたちが集合!

ネコにまつわるアート「ニャート」を探して、今回はホテル雅叙園東京で開催中の「福ねこat百段階段」へ。目黒雅叙園が4月から改称してホテル雅叙園東京になったのだそう。

「百段階段」は、東京都の有形文化財に指定されている木造建築。それぞれに趣の異なる7つの部屋を、99段の階段がつないでいる。館内の至るところに天井画や柱の彫刻など豪華な装飾が施されており、まず建物自体が見どころ満載!そこにネコをモチーフとした作品が約1,000点も揃うということで、期待が高まる。

招きたん

『招きたん』

自分の一匹”に出会う楽しみ

今回の展覧会では、部屋ごとに作家それぞれの作品が展示されている。「十畝の間」には、アーティストもりわじんさんの作品。多くの人が熱心に撮影していたのが、ずらりと並ぶ手のひらサイズの招き猫『招きたん』だ。一匹ずつ微妙に異なる、愛嬌のある表情。金色の前掛けには一年366日の日付が一日ずつ「おめでとう」の文字と共に刻まれている。誕生日のお祝いメッセージに添えるのにもぴったりだし、誰もが自分に結びつけて楽しめる作品とあって人気が高いよう。

魅せられたり、癒されたり・・・

展示作品は、絵画や立体、陶芸、彫刻、写真など、作家によって技法も個性もさまざま。日本画家の川上けいすけさんが描くネコたちは、どこか荒っぽく、それでいて気高い。引き込まれるような激しさをもった色彩とも相まって、妖艶な花々に囲まれたその姿から目が離せなくなる。

また彫刻家はしもとみおさんの木彫作品は、見る者をほっとさせる、素朴で温かい魅力にあふれている。可愛いだけではない力強さがあり、かなり小さなサイズの作品でも、その一匹一匹に命が宿っているようだった。

あの浮世絵の世界がネコに、さらに立体に

立体浮世絵

『立体浮世絵 歌川国芳「其まま地口猫飼好五十三疋」より』

その技と労力に圧倒されたのが、造形作家である小澤康麿さんの作品『立体浮世絵 歌川国芳「其まま地口猫飼好五十三疋」より』。「漁礁の間」の中央に置かれた台の上で、焼き物のネコたちが、立って伸びて寝転んでと、それはもうさまざまな動きを披露している。

モチーフになっているのは、歌川広重の名作『東海道五十三次』を歌川国芳がすべてネコに置き換えた戯画。例えば日本橋は「にほんだし(二本のかつおぶし)」など、宿場名がネコにちなんだ洒落になっている。そこに描かれたネコたちを小澤さんが陶芸でつくりあげたこの作品は、『東海道五十三次』から見ると、パロディの、そのまたオマージュのようなものと言えるだろう。

解説には「平面の絵から立体の焼き物にするためには、描かれていない部分を想像で補い、立たせるためのバランスなどかたちを破綻なく創り上げ、さらに焼成する技術が求められます」とある。確かに、平面のモチーフを、見た目や世界観を崩さずに立体にするのは、ゼロから作り上げるのとはまた違う難しさがあるはず・・・。しかもよりによってこのネコたちは皆、元気いっぱいなのだから。

踊る猫又

『踊る猫又』

妖怪になっても可愛い!それがネコ

小澤さんの作品をもう1点。こちらも歌川国芳の作品がモチーフの、『踊る猫又』。立ち上がって踊る数匹のネコたちはリアルで、今にも本当に動き出しそうな姿だ。猫又はいわば化け猫であり、その表情には凄みに近い迫力があるが、どこかネコ本来の可愛らしさも感じられる。花見の宴が描かれた日本画との取り合わせも華やかで、百段階段の魅力を活かした展示になっていた。

美術館とはひと味違う百段階段

百段階段バラエティ豊かなネコのアートが揃うこの「福ねこat百段階段」は、まさにすべてが「ニャート」の展覧会。会期が短いため、この記事がアップされる頃には終了してしまうのが残念・・・。しかし百段階段では折々にイベントが催されている。独特の建築のあちらこちらに配されたパワフルな日本美術に触れれば、竜宮城に迷い込んだような楽しさが味わえるはず。アート好きな方は、別の機会にもぜひ足を運んでみていただけたらと思う。

この記事のライター

aloreライターノムラシマ
ネコと銭湯と焼肉をこよなく愛するコピーライター。
現代アートが好きで、美術館のほか芸術祭にもときどき出没。ひとり暮らし歴約15年。
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