
新緑がきれいな季節となりました。
紫外線はちょっと気になりますが、過ごしやすい気候なのでお散歩にもってこいの時期ですね。
遠出をするほどでもないけど、緑の中で過ごしたいと思っている方も多いのでは無いでしょうか?
そこで、今回はこの時期ならではのARTと庭園散歩を楽しめる、根津美術館をご紹介します♪
根津美術館とは・・・
東京、青山。都内の一等地に静かに佇む、”ザ・都会のオアシス” 根津美術館。
東武鉄道の社長などを務めた実業家の、初代根津嘉一郎さんが蒐集した日本・東洋の古美術品を、保存・展示する為に作られた美術館です。
建物も素敵で、現在の和風家屋を思わせる本館のデザインは、建築家の隈研吾さんです。
昭和15年に財団が立ち上がった時は4643点の美術品だったそうですが、平成28年度3月の時点で7420点もの作品を収蔵しており、そのうち国宝は7点、重要文化財は87点とのこと。
これは見逃せませんよね。
賑わう表参道から少し離れたところで、ゆったりとARTを楽しむことができる素敵な美術館なのです。
この時期に楽しめるARTといえば・・・
春に楽しめる根津美術館のARTといえば、ズバリ国宝『燕子花図屏風』です。
お庭に咲く燕子花と、光琳の代表作であるこの屏風を毎年楽しみにされている方も多いのではないでしょうか?
2017年の春は、『燕子花図と夏秋渓流図』の特別展が開催されています。
贅沢に琳派の二大傑作を同時に見ることが出来ます!
特別展【燕子花図と夏秋渓流図】
根津美術館で2017年5月14日(日)まで開催中
国宝 『燕子花図屏風』 江戸中期 六曲一双
作者は尾形光琳。俵屋宗達から約100年後に登場した琳派を受け継ぐ画家です。
受け継ぐと言っても、師弟関係はなく、宗達を私淑し似たような路線を進んだことから、結果的に引き継いだとされており、光琳の【琳】をとって、後に琳派と名前がつけられました。
もともと裕福な呉服屋さんの次男だそうで、彼が21歳頃に家の没落が始まると、放蕩を重ね、女性関係もだらしなかったそうです。正妻の他に愛人が6人もいてトラブルが多かったそうな…。
なんと、まぁ。。。
5歳年下の弟、尾形乾山は焼き物で有名ですね。
さて、この『燕子花図屏風』ですが、光琳が法橋(ほっきょう:本来は高僧に与えられる僧位で、後に絵師や仏師にも与えられたそうです)の位を得た44歳頃に描かれたとされています。
金地に緑青・群青と琳派ならではの色彩で、リズミカルで装飾的に燕子花が描かれています。
よく見ると右隻の第2扇と第5扇に絵柄がそっくりなものがあり、これは型を用いて描かれたためだそうです。(是非本物で見比べてみてください!)
彼は呉服屋の息子さんだから、型使いは慣れていたのかもしれませんね。
後に【光琳模様】という言葉ができるほど、彼のデザインは後々まで影響を与えます。
家具である屏風に描かれた装飾的なこの作品をみると、光琳の空間デザイン能力の高さが伺えます。
そして、もう一つ、燕子花で忘れてならないのが『伊勢物語』ですね。
都から東国へ向かう主人公達が、三河の国八橋で一面に咲いた燕子花をみて、京に残してきた妻を思って歌を詠みます。
から衣
きつつ慣れにし
つましあれば
はるばる来ぬる
たびそしぞ思う
五七五七七の頭に”かきつばた”という文字がはいってます。
燕子花と伊勢物語には深い関係があるのですね。
人物も橋も描かてていないこの燕子花図屏風の10年後に、光琳は燕子花と八橋を組み合わせた作品も描いています。
『夏秋渓流図屏風』 江戸後期 六曲一双
作者は鈴木其一。光琳から100年後に酒井抱一によって再び光琳様式が注目を浴びました。
其一は抱一の弟子で、琳派の伝統に抱一の写実性を引き継いだのが、鈴木其一でした。
昨年、サントリー美術館で彼の展覧会があったので、覚えている方も多いのでは無いでしょうか?
メトロポタン美術館所蔵の「朝顔図屏風」は圧巻でしたよね。
この『夏秋渓流図屏風』も一緒に展示されていました。
其一の画風の特徴として、光琳画からの引用と応用があるそうです。
なるほど、この屏風をみてみると、金地の背景に緑青と群青と墨で描かれ、力強い流水とリズミカルに並ぶ木々が描かれいます。
伝統的な琳派の手法で描かれ、更に、檜の樹林は「光琳百図」にも所収をされ、光琳に先行の作品があることからも、光琳の影響は其一にとってとても大きかったのではないかと推測されます。
この屏風、よく見ると山百合や熊笹が実際より大きく描かれています。執拗なまでに描かれる点々の苔もちょっとくどいと感じます。そのせいなのか、どことなく非現実的な感覚を覚えるのは私だけでしょうか・・・。
光琳と其一の2大傑作が並んで展示されているこの特別展。
直接師弟関係が無かった二人の作品に共通するポイントを自分で探しながらゆっくりと眺めてみてください。
この時期だからこそ楽しめるARTです。
緑の溢れるお庭を散策♪
ART作品を楽しんだら、次は是非ともお庭を散策することをオススメします。
4月下旬から5月初旬は池の燕子花が咲いていますよ。
光琳の燕子花図を観た後に、本物のお花を見ることができるなんて、この時期ならではの贅沢です。
私が行った時は・・・残念ながら一つもお花は咲いていませんでした(涙)。
美術館のHPではGW中が見頃だったみたいですよ。
5月6日は咲いている(HP参照)ようなので、まだ間に合いますね。
お庭は自然の傾斜を利用して日本庭園が作られ、4つの茶室や池、仏像、灯籠、草花、木々が配置されています。
新緑がとてもきれいだし、過ごしやすい気温なので、庭園内のベンチに座ってのんびりするのもいいですね。
疲れたらNEZU CAFEでお茶するのもいいですよ。
日本美術というと敷居が高く感じてしまう方もいるかもしれません。
私も以前はそうでした。
しかし、楽しみ方は自由です。
難しく考えずにTRYしてみてください。
DNAに刻まれた日本人の感性が目を覚まし、これまでと違ったARTの楽しみを見つけられるかもしれません。
ART×新緑のお庭散歩で、心と身体をリフレッシュしてみてはいかがですか?