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ブリューゲルの「バベルの塔」は、宗教画ですがチョット違います

ブリューゲルの「バベルの塔」は、宗教画ですがチョット違います

「バベルの塔」公式マスコット 「タラ夫」

今回は、ブリューゲルの「バベルの塔」を鑑賞してきました。美術展にマスコットがあるなんて、初めてです。エスカレーターの隅のところで、お休みのところ写真撮影。以後、お見知りおきを!!

バベルの塔/ブリューゲル1世

高さ比較:バベルの塔約510m/東京タワー333m/通天閣108m

 

ブリューゲルの「バベルの塔」(1568年)鑑賞の見どころ

見どころは、細密描写。縦約60㎝と大きな絵ではないのですが、近くに複製画(東京藝術大学COI拠点による)があり、リアリティさ満載でした。当時の建築技法がふんだんに盛り込まれているのが確認できます。資材を運び上げる機材、素朴な滑車型や人間が中に入って回す大車輪型、塔からせり出すクレーンなどです。建設中の塔の上部は、赤々としているが、底辺部は、土色。色を変化させることによって、建設に長い年月がかかっていることを表現しています。働く人の様子も細かく、地上には石工や煉瓦工、塔の外廊にも列をなす人の姿です。米粒サイズでおよそ1400人 もの人が描かれています。

描いたブリューゲルとは?

ピーテル・ブリューゲル1世(1526/30~1569年)、16世紀北方ルネサンス(※1)を代表する巨匠画家です。聖書の物語や民衆の暮らしや寓話や諺を主題に、それら登場人物の姿を北ヨーロッパの風景を背景に、生き生きと描きました。ブリューゲルの作品は、版画の下絵も手掛けたことから、版画の作例が多いですが、「バベルの塔」といった現存する油彩画は40点あまりで、比較的少ないです。

(※1)北方ルネサンス

15世紀~16世紀の北方の美術のことです。北方とは、アルプスより北の国々を指しネーデルラント(現在のベルギー、オランダ)ドイツ、フランス等がこれにあたります。イタリアのルネサンスとの違いは、イタリアは、ローマの文化を復活させようというものでしたが、北方ルネサンスは、初期キリスト教の復活と教会権威への反乱が引き起こしたものです。後に宗教改革へとつながっていきます。

「バベルの塔」とは?2点のバベルの塔

「バベルの塔」は、旧約聖書の冒頭を飾る「創世記」の物語に登場する建物です。実は、ブリューゲルの描いた「バベルの塔」は、2点現存します。作成年代順に、ウィーン美術史美術館所蔵の作品(1563年制作)と今回の展示されているボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館所蔵の作品(1568年制作)があります。この2点は、北方ルネサンス(ネーデルラント画壇)の宗教画の変遷(※2)のちょうど過度期に制作されたもので、別人が描いたのかと思うほど違います。前者は、宗教的な物語性が強いのに対して、後者は風景画に近いです。これは、この時期に聖像破壊運動(1566年)、ネーデルラント独立戦争の開戦(1568年)があり、社会情勢の影響をうけて画風が変わったのだと思われます。

(※2)北方ルネサンス(ネーデルラント画壇)の宗教画変遷

北方ルネサンスの宗教画年表

ブリューゲルの版画は、ヒエロニムス・ボスの名前入り

さて、「タラ夫」くんは、どこにいたのかしら?

ブリューゲル1世版画/大きな魚は小さな魚を食う

ブリューゲルの版画の中、左端にコッソリいました。

ピーテル・ブリューゲル1世 彫刻:ピーテル・ファン・ヘイデン

《大きな魚は小さな魚を食う》  1557年 

実際の版画には、前景の手漕ぎ舟に乗った父親が、幼い息子に説いた言葉が、オランダ語の銘に綴られます。

「いいか息子よ、私は昔から知っていた。大きな魚は小さな魚を食うということを」。話がわかったというしるしに、少年は舟に乗り合わせたもうひとりの男を指さす。男は今まさに別の魚の腹を裂いたところである。

版元のヒエロニムス・コックは、1557年版の刷りの左下に(ヒエロニムス・ボスの創意による)と刻ませ、構図を40年以上も前に世を去っているボスだと記しました。当時はブリューゲルよりはるかに名の通っていた画家だから、差し支えなかったらしいです。図録には、ブリューゲルは、ボスの精神を受け継いでこの絵柄を考えたに相違なく、ボスなら歩く魚や空飛ぶ魚を思いついて不思議はない。諺(ことわざ)を初めて絵に描いた画家のひとりもボスであり、ブリューゲルもここで初めてその例に倣った。と書かれています。

最後に

もうひとつのブリューゲルの「バベルの塔」(ウィーン美術史美術館所蔵)は、今回のものより、画面サイズが約4倍も大きいそうです。これなら、原寸大で鑑賞できそうです。一度、見てみたいです。

この記事のライター

aloreライター片桐です
1964年生 既婚 愛知県一宮市住在 会社員
<好きなこと>
美術鑑賞/本、雑誌を読むこと/能のお稽古/着物を着ること/レトロな喫茶店に行くこと/テンションのあがる音楽/人の話を聞くこと/
<取得資格>
国際カラーデザイン協会 カラーデザインマスター/日本カラリスト協会 1級パーソナルカラーリスト/色彩診断士/東商カラーコーディネーター1級(環境色彩)/アートエバンジェリスト/日本色彩学会会員

アート&色。お手すきのときにお読みくださいね。
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