AE-Salon Webマガジン「alore(アローア)」

この春は特別なアートであなたもアート好きに!

聞いたことのない画家の展覧会は
アートを好きになる絶好のチャンス!

名前も知らない画家の展覧会というと、‘知らない’というだけで興味なし!と思っていませんか?

知らない画家の展覧会は、アートを好きになる絶好のチャンスです。

ピカソやゴッホレベルの有名な画家となると、アートが好きかどうかは関係なく、
一度は見たことがあると思います。

しかし、初めて見たのはいつなのか、どこで、何という作品を見たのか覚えていないという人が
多いのではないでしょうか。

アートは、出会う年齢や、その日のコンディションによっても見え方が変わります。

初めて見た時は、「どうしてこの絵がそんなに有名なのかわからない」と思っても、
次に出会う時は「すごく好き!」に変わっていることも。

つまり1人の画家の作品を通して、自分の中の心の変化に気づくこともできます。

名前も知らない画家の展覧会は、その作品を初めて見た時の印象をちゃんと記憶し、
その体験を何度も重ねることで、自分自身の心の変化をも一緒に記録することができるのです。

日本ではあまり馴染みのない画家アドルフ・ヴェルフリ

アドルフ・ヴェルフリ写真
名古屋市美術館【アドルフ・ヴェルフリ[二萬五千頁の王国]】展にて *写真は内覧会で特別に撮影させて頂いたものです。
アドルフ・ヴェルフリ

皆さんは、この画家の名前をご存知ですか?

スイスの芸術家。31歳で統合失調症と診断されると、その後の人生を精神病棟で過ごし、
66歳で亡くなる4日前まで作品を描き続けた人です。

私は、現在開催中の展覧会【アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国】展で初めて名前を知りました。

それもそのはず、日本でのヴェルフリの大規模個展は今回が初めてなのです。

今回、私は画家についての情報は敢えてほとんど何も入れずに展覧会に行ったので、
展示室内に入った瞬間の衝撃は忘れられない体験になりました。

なんて楽しい、踊りだしたくなるような作品なのだろう!

こんな世界がこの世にあったなんて!

それが、最初の印象です。

名古屋市美術館 アドルフ・ヴェルフリ展 展示室内

アドルフ・ヴェルフリ作品アップ
近くに寄って見ると、本当に細かい!絵と文字と音符でぎっしり埋め尽くされています。

画面全体に絵と文字と音符がぎっしりと描きこまれた作品は、全て鉛筆と色鉛筆で描かれたもの。

しかもこれらは全てヴェルフリの架空の自叙伝なのです。

少年ドゥフィが世界中を冒険する空想の自伝的旅行記や、
地球全土を買い上げ『聖アドルフ巨大創造物』を作り上げる方法を説く壮大なる創世記など。

ヴェルフリが生涯で描いたこうした自叙伝の数は2万5千枚にも及びます。

ヴェルフリが絵を描き始めたのは、精神病棟に入院してからのこと。

週の初めに、紙2枚と鉛筆1本だけが支給され、それをあっという間に使い果たしてしまうほど
のめり込んで描いたのだそうです。

初期作品は、絵が全面に描かれた作品が多いのですが、だんだんと文字が多くなっていき、
最晩年に描かれた『葬送行進曲(1928-1930)…番号のない16冊の冊子』は画面のほとんどを文字が
埋め尽くし、絵はほんの一部だけになっていきます。

亡くなる4日前には、涙を流しながらもう描けないことを嘆き、
『葬送行進曲』は未完のままに終わりました。

4メートル68センチもの大作『アリバイ』
4メートル68センチもの大作『アリバイ』も今回展覧会で見ることができます。

アール・ブリュットの意味をちゃんと理解していますか?

アドルフ・ヴェルフリを発掘したのは、画家のジャン・デュビュフェ。

デュビュフェはヴェルフリの作品を見て、

「特別なアートに特別な名前をつけたい」

と、“アール・ブリュットArt Brut”(Art=芸術 Brut=ワインなどが生(き)のままの様子のこと)
という言葉が生まれました。

その後、“アール・ブリュット”は“アウトサイダーアート”と英訳されるようになり、
今では“アール・ブリュット”=“アウトサイダーアート”=“障害者アート”のような
本来の意図とは違う解釈がなされていることが多いように思います。

“アール・ブリュット”

特別な生(き)のままのアート

その作品のパワーは想像をはるかに超えていました。

生まれ育った境遇や、その後の人生も決して明るいものではなかったはずなのに、
作品の前に立つだけで踊り出したくなるほど明るく温かな気持ちにさせてくれました。

ジャン・デュビュフェに“特別なアート”と言わしめたアートとはどのようなものなのか、
是非その目で確かめてみてください。

この“特別なアート”に、あなたならどんな特別な名前をつけますか?

アドルフ・ヴェルフリ展

【アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国】展

会場:名古屋市美術館
会期:2017年3月7日(火)~4月16日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時(金曜日は午後8時まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般1300円・高大生800円・中学生以下無料
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/

東京にも巡回予定
会場:東京ステーションギャラリー
会期:2017年4月29日(土)~6月18日(日)
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201704_adolfwolfli.html

 

この記事のライター

aloreライター羽田沙織
元NHK宇都宮局キャスター/元ZIP-FMミュージックナビゲーター

出演歴:
NHK総合テレビ『こんにちはいっと6けん』『ゆうどきネットワーク』『首都圏ネットワーク』
フジテレビ『めざまし土曜日』インフォマーシャル
テレビ埼玉『彩の国ニュースほっと』サッカー浦和レッズ戦ピッチリポート
映画『インシテミル』場内アナウンス役
ドラマ『下町ロケット』他アナウンサー役
Tokyo-FM『BlueOcean』Fm-yokohama『Kawasaki Sparkling』ZIP-FM『STARTS!』など

現在はフリーアナウンサーをしながら、アートエバンジェリストとしてアートイベントの企画・開催・案内を行っています。
ヒューマンアカデミーで『名古屋アートサプリウォーク』講座も担当。
講座では1日1万歩歩くことを目標に美術館やギャラリー、パブリックアートを見て回っています。
『ARTLOGUE』アートライターとしても執筆中。
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