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リアルでしかない長沢芦雪展 左に虎、右は龍。

リアルでしかない長沢芦雪展 左に虎、右は龍。

愛知県美術館の長沢芦雪(ながさわ ろせつ)展に行きました。本展は、芦雪の代表作とされる和歌山県無量寺の『龍図襖』『虎図襖』その両脇二間の障壁画と合わせて同寺のしつらえを展示室で再現してありました。私は、作品がガラスケースをでて、襖絵をふすまとしてみる展示は、はじめてでした。そこで、今回は、再現された無量寺の様子とみどころポイントをレポートします。

長沢芦雪とは(1754年~1799年)

芦雪は、丹波篠山の藩士の子として育ち、京にでて絵師を志して円山応挙に入門しました。その画風の特徴は、師ゆずりの優れた写実性、大胆奇抜な発想が生む豊かな表現力、そして生き生きとした描法が融合されています。伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)曽我蕭白(そが しょうはく)と並んで「奇想の画家」の一人です。

本展の初公開となる最初期作品4点は、応挙に学ぶ以前の10代半ばから20代半ばのもので、芦雪はすでにかなりの技術をもち、かつ異色ある描き方を目指していたことが、知ることができます。

無量寺本堂再現‼『薔薇に鶏・猫図襖』/『虎図』/『龍図』/『唐子遊図』

天明6年(1786年)10月頃、33歳の芦雪は、応挙の名代として南紀を訪れ、翌年2月上旬まで、無量寺・成就時・草堂寺の3か寺で大規模な障壁画制作を行いました。無量寺では、応挙が描いた襖絵を届けるとともに残り5部屋を自身が描きました。
無量寺方丈の模型が展示してありました。

長沢芦雪展順路
無量寺再現、見学順路

上記のような順序で、見るのです。中央の仏間の空間に入った瞬間は、左側の『虎図』、右側の『龍図』に挟まれ、禅宗の教義や精神、悟りの世界にひきこまれます。
右側、左側は、こんな感じです。

長沢芦雪 虎図・龍図
参照 左側『虎図』
   右側『龍図』

再現展示のみどころポイント ①②

① 中央の仏間の本尊に向かって、立ってみる→どう感じるか

無量寺20世住職の八田尚彦師は、こう述べています。

“本堂室中の間に座り北側の本尊に向かって読経するとき、南から襖2枚目のある虎の目が龍の目がちょうど自分の左右に並び、虎と龍が奥の仏間からこちらへ飛び出して来て読経する空間をゆずってくれているようだ”

私自身は、ゆずってくれるというよりも虎・龍の目力(めじから)に圧倒されて、ちょっと怖い感じでした。

② 『薔薇に鶏・猫図襖』のなかの水中の魚をにらむ猫と仏間の虎の顔を連続してみる→どう思うか

 

薔薇に鶏・猫図襖
参照 魚をにらむ猫のスケッチ

ちょうど虎の顔の真裏に位置する猫は、虎とよく似たポーズで水中の魚をにらんでいる。(参照 魚をにらむ猫のスケッチ)真裏の仏間の虎は、猫っぽい(参照 『虎図』と『龍図』)顔つきをしています。
つまり、この虎は、魚から見た猫だったと気がつくのです。<魚>といえば、芦雪の印章です。

図録の中で、深山孝彰氏こう述べてありました

“芦雪は、この大きな虎の絵を描いた人も絵の中の魚と同じように猫から想像したに過ぎず、世界はまだまだ未知なのだと、あるいは逆に、心を澄ませば身近な世界からでも宇宙を感得できるのだと伝えているように、わたしは、感じられる”

リアルな空間構成の中で感じた芦雪

芦雪は、どうしてこの目線の位置に猫を、魚を、虎を描いたのだろう?猫は、本物と同じ大きさ?芦雪は、仏間にこんなにも私よりも大きく虎・龍を描いたのだろう?とか…ガラスケースに展示してあったら、感じられなかった芦雪作品の在り方・そのときの心情を考えさせられました。芦雪の心情は、実際、正解などないのでしょうが、作品の在り方は体験し知ることができました。本展のようにリアルの空間の中で鑑賞し体験した芦雪作品は、人の動き、目線をとらえ、描いてあるもの全てに何らかの意味があると思わせる魅力がありました。

この記事のライター

aloreライター片桐です
1964年生 既婚 愛知県一宮市住在 会社員
<好きなこと>
美術鑑賞/本、雑誌を読むこと/能のお稽古/着物を着ること/レトロな喫茶店に行くこと/テンションのあがる音楽/人の話を聞くこと/
<取得資格>
国際カラーデザイン協会 カラーデザインマスター/日本カラリスト協会 1級パーソナルカラーリスト/色彩診断士/東商カラーコーディネーター1級(環境色彩)/アートエバンジェリスト/日本色彩学会会員

アート&色。お手すきのときにお読みくださいね。
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