
出光美術館に展示されている『色絵 JAPAN CUTE!』を見に行きました。
色絵とは
色絵とは、古九谷(こくたに)・柿右衛門(かきえもん)・鍋島(なべしま)といった磁器(じき)や、野々村仁清(ののむらにんせい)・尾形乾山(おがたけんざん)の京焼に代表される、江戸時代に花開いたカラフルな焼物です。
ちなみに、表題『色絵 JAPAN CUTE!』のCUTEは、私の辞書によれば、①かわいらしい、②ぬけめないとの意味です.
焼物と絵画の大きな違い
焼物(陶磁器)は、人類が最初に発見した化学変化です。柔らかい粘土(陶土)を原料とし火に入れて焼き固くし、粘土とはまったく別のものに変質します。焼物の文化は、中国を発祥の地とし、そこから朝鮮、東南アジアへと伝わりました。そして、この焼物(陶磁器)に筆で描く絵を実現したのも中国です。
陶磁器に筆で描くので、キャンバスに筆で書く絵画と似てはいますが、大きく異なる点があります。それは、使われる色絵具の材質の違いです。焼物(陶磁器)の色絵具の場合は、絵画のそれと違い、絵具を溶かす溶液に珪素(けいそ)というガラスの成分が含まれます。このため、色絵の絵具は、多くの場合、色ガラスのきらめきや透明感を帯びているのです。色絵の色は、時の流れを感じさせない艶やかさがあり、濃い色も鮮やかな色もまるでベールに包まれるかのようになります。
デザインで季節感・ファッション性をあらわす色絵

江戸時代の日本では、移りゆく季節を愛で、宴が開催されていました。色絵は、色彩とその文様におめでたい吉祥のイメージをデザインに取り入れています。将軍家や御三家への贈り物として使用されました。また、ファッションのデザイン画もあります。江戸時代のファッションの最先端は、小袖の着物です。小袖の着物のデザインは、瓜(うり)や蔦(つた)といった植物画や染め織りの絞りの模様に似た細かい地文様などです。古九谷の色絵に同じデザインで描かれています。小袖のデザイン画である『新撰御ひいなかた』とともに色絵作品が展示してあります。
柿右衛門は、中国(明)の鎖国政策によって、欧州に知られるようになった?
欧州の王侯貴族は高価で貴重な中国製磁器を集め、陳列し、その富と権力を誇ったといわれていました。そのころの中国製磁器は、景徳鎮窯の独壇場です。
ところが、17世紀に入ると中国は明朝から清朝への王朝交代期の動乱に覆われ、また清朝樹立後に鎖国政策がとられたため、景徳鎮窯から欧州への磁器輸出が途絶えました。このとき、オランダ商館が生産地として注目したのが、九州の備前窯(びぜんよう)でした。こうして、日本にオランダ東インド会社から注文が来るようになったのです。
この時1650年代、日本の柿右衛門様式の磁器輸出が始まり、欧州貴族の絶大な愛顧をうけることになったのです。
欧州では、ドイツのマイセン窯、フランスのシャンティイ窯、イギリスのウースター窯やボウ窯など柿右衛門を模倣しながら磁器生産が開始されました。
今回の色絵の展示も柿右衛門の色絵を模倣した、景徳鎮の色絵、デルフト窯の色絵が展示されています。始まりは、景徳鎮窯の代替であったはずなのですが、柿右衛門は凄いなぁと思います。
最後に
日本の色絵は、材質感、デザインにおいて、①かわいらしい意味でのCUTE!そしてその有名になる歴史においては、準備不足なく実力を兼ね備えた②ぬけめないCUTE!ではと思いました。