せっかくだから楽しみたい!
10月から始まるフェルメール展。
必死にネットでチケット取って、決められた時間までに美術館行くのだから、どうせだったら楽しみたい。
でも、そもそもフェルメールって誰なんだ、いつの人、どこの人、何してた人(画家に決まっていますが・・・)、という人もいるのでは・・・?
友人やパートナーに「強制連行」かのように誘われて、チケットを取った(取らされた?)人もいるはず。
そんな人でも、上野や天王寺まで無駄足を踏まないように、パートナーと「任意同行」したくなるような、フェルメール展を楽しむためのちょっとした知識を書いてみます。
フェルメールって誰?
フェルメールは17世紀のオランダ人画家。
ピカソほど世間で知られてないけれど、美術が好きな人なら、ほぼ間違いなく知っている人です。
作品がとっても上品なんですよね。
ほんわかした柔らかな光に照らされて、女性が牛乳を注いだり、首飾りをつけたりしている。
その上品さがたまらないんです。
イライラしたときになど、10分くらい眺めれば、少しずつ気持ちが落ち着くこと間違いなし。
いい気分転換になります。「美術でストレス解消」なんていうのも、品があってよいのでは?
どんな絵描いてたの?
フェルメールの作品は、日常生活を描いたものがものすごく多いんです。
今回見られるのも、そういう作品。

英名が、”The Milkmaid”という作品。
当然、ここに描かれているのは、メイドさんです。牛乳を注いでいるのは主人のため。
きちんと自分のつとめを果たしているメイドさんと、その主人の両方を賛美している作品です。
こういう「地に足のついた」生活を、当時のオランダ人は好みました。

当時のオランダは、識字率が高かったので、手紙が大流行。
17世紀のオランダ絵画には、特にラヴレターを書く場面が多く出てきます。これもその1つ。
一説によると、この婦人が書いている手紙の宛て先は、実は彼女の愛人だとか。
そして、婦人の背後にかかっている絵画(「モーセの発見」という旧約聖書の物語)は、彼女の心が鎮まろうとしていることを、暗に示しているのだそう。
床に投げ出されている紙や赤い封印から、明らかに彼女は苛立っています。愛人を想う気持ちをうまく言葉に出来ないのが、もどかしいのかもしれませんね。
こんな風に、フェルメール作品の解釈は、背景がヒントになることも多いんです。
なんで日常生活なんて描いたの?
では、どうしてフェルメールは、市民の日常生活をそんなにたくさん描いたのか?
これ、実は「キリスト教」の影響なんです。
「どこにもキリストがいない。嘘つくな!」とカッとなりかけた方は、ちょっとお立ち会い。
キリスト教っていくつか宗派があるんです。プロテスタントとかカトリックとか・・・。
仏教の浄土宗とか日蓮宗とかと同じです。
ちなみにオランダのキリスト教は「プロテスタント」。
イタリアやフランスやスペインは「カトリック」です。
これ、日本人には感覚が難しいんですが、ほぼ違う宗教だと思った方がいいです。
プロテスタントとカトリックでは、流行る絵の種類も全然違いましたから。
プロテスタントの国では、フェルメールのような「生活を描いた絵画」が流行ったんですね。
なぜか?
市民がお金をたくさん持っていて、自分達に分かりやすい絵を画家に求めたからです。
「受胎告知」とか「十字架降下」とか言われるよりも、「牛乳を注ぐ女」って言われた方が圧倒的にイメージしやすいし、親しみも持ちやすいですからね。
ちなみに、カトリックの国では、教会が絵を買っていましたから、「宗教的な(キリストが描かれているような)絵画」が大流行しました。
今回は、オランダ人になってみよう!
そういうわけで、今回のフェルメール展は、ぜひ「僕も、私も、オランダ人!」と思って(無理にでもなりきって)、作品を見てみると楽しめるのでは・・・?
自分だったら、どの作品を自宅用に買うかなあ。買ったらどこに飾るかなあ。どんなときに見るかなあ。
そんなことを考えながら作品を眺めると、けっこう細かいところまで注意が行くはず。
絵画を見るときは、観察眼が結構決め手だったりします。
誰かといっしょに行くならば、あとで気づいたところを話してみると、お互いに注目したところが違ったりして性格が分かるかもしれません。
せっかく行くのだもの。楽しまなくちゃ損ですよー。
展覧会情報
【フェルメール展】
東京展:2018年10月5日~2019年2月3日(上野の森美術館、日時指定入場制)
大阪展:2019年2月16日~2019年5月12日(大阪市立美術館、日時指定入場制)