AE-Salon Webマガジン「alore(アローア)」

美術館と私5  〜美は細部に宿る〜

美術館と私5  〜美は細部に宿る〜

美術館と私5
〜美は細部に宿る〜

「美は細部に宿る」(God is in the details.) の格言は「神は細部に宿る」が建築やデザインの世界で転じた言葉だそうで、ドイツの建築家ミース ファンデル ローエが語った言葉です。絵画でも小さい部分をほんの少し色合いを変えただけで見違える程美しく見えたり、頭髪で前髪の長さを数ミリカットしただけでバランス良く見えたりする等々、細かい部分を修正することによって理想的な出来栄えになる、ということはよくあります。小さい部分だからといっておろそかにせず、寧ろ神経を細やかに配って仕上げることは、大変だけれども重要なポイントだと云えますね。

1. 超絶技巧の冴え

1.「彫刻コトハジメ」小平市平櫛田中彫刻美術館発行 藤井明編集 2018

1.の画像は現在、小平市平櫛田中彫刻美術館で開催されている「彫刻コトハジメ」展の図録の中の作品です。本物そっくりに制作された昆虫達。これは明治時代(制作年不明) に宗義という作家によって制作された「自在」もしくは「自在置物」と呼ばれる鉄でできた作品です。現在では「超絶技巧」とも云われ、最近特に注目されるようになりました。このような作品は関節一つ一つが本物の虫のように動いたりします。非常に繊細で展示の際には特に注意を要すると美術館の方がおっしゃっていました。
<彫刻四方山話>
このような作品は明治の頃までに主に制作され、「彫刻」というより「置物」に近い作品です。1900年のパリ万博に日本が初めて彫刻として出品したものは今で云えば「置物」のような土台のついた小型の木彫ばかりだったそうです。会場となったパリのグラン パレの一階に等身大かそれ以上の大きな彫刻作品が展示された中に日本人の作品は全くなかったそうです。国内でも欧米と同じようにロダンの影響は多大で、塑像として西洋風の「彫刻」が制作されるようになりましたが、それまでは、土台のある小さな木彫作品や牙彫を「彫刻」として分類していました。

2. ミース ファンデル ローエ (1886ー1969 独)

視点を世界に一転して、この「美は細部に宿る」の格言を残した建築家ミース ファンデル ローエの場合、建築デザインという非常に巨大な作品制作に従事し生まれたこの言葉は、スケールが大きいからこそ細部に拘る重要性を強調したものと云えます。ミースはル コルビジェやフランク ロイド ライトと共に近代建築の三大巨匠の一人とされていて「Less is more.」という有名な言葉も同時に残しました。言葉通りガラスと鉄で出来た壁や仕切りのないがらんとした空間を造ることを得意とした建築家でした。ガラス張りにすることで内と外が一体化しより自然を身近に感じられますが、中にいる人は身の置き所がないのではないかと感じる程です。

2. ミース ファンデル ローエ
バルセロナ パビリオン1929 当ライターによるラフスケッチ

 

2の画像は1929年に開催されたバルセロナ万博ドイツ館として建設されたもので、近代建築の傑作中の傑作と云われる作品です。1986年に復元されました。他に女性歯科医の個人の邸宅であるファンズワース邸 (1951)やニューヨーク シーグラムビル(1958)など秀作が多数あり、ミースの名声は不動のものとなっています。
一方現在、神奈川県立近代美術館葉山館で、「アルヴァ アアルト もうひとつの自然」が開催されていますが、アアルトはフィンランドの建築家 (1898ー1976)で、ミースとほぼ同時代に活躍しました。木やレンガを用い、フィンランドの土地と結びついた新しい近代建築を造りました。フィンランドは気温も低く、木を用いることで鉄やガラスでは出来ない温かみのある建築を造りました。こうした地域の自然や特性に適した建築を「リージョナリズム建築」と呼び、グローバリゼーションが進む中、反動として生まれました。自然、気候風土に寄り添うような建築のディテールに特徴があります。

3. ARTなスクリーン

*世界で一番ゴッホを描いた男   10/20〜公開
http://chinas-van-goghs-movie.jp/

4. 美術展 Pick Up!!

芸術の秋、特に文化の日には様々なイベントも開催される他、珠玉の企画展が目白押し!!

*集英社デビュー50周年記念   一条ゆかり展
弥生美術館   09.29 ー 12.24
http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/exhibition/now.html

*アルヴァ アアルト  ーもう一つの自然
神奈川県立近代美術館葉山館   09.15 ー 11.25
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/exhibition/2018_aalto

*ルーベンス展  ーバロックの誕生
国立西洋美術館   10.16 ー 01.20
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018rubens.html

*インゲヤード ローマン展
東京国立近代美術館工芸館   09.14 ー 12.09
http://www.momat.go.jp/cg/exhibition/ingegerd_2018/

ポストカード by インゲヤード ローマン

 

 

FIN.

この記事のライター

aloreライター@新井隆子
子供の頃に家が城下町にあった為、近所にお堀のある公園、その中に城跡や県立美術館があり、美術館好きになりました。中学の頃からNHK日曜美術館ファン。
’70 大阪万博の時、岡本太郎の『太陽の塔』の前の特設ステージで開催されたアジア少年少女合唱際に参加、歌ったことも想い出の一つです。
昔、大学で(社会)心理学、その後インテリア、建築を学び「コワイ」と言われても元から「美術」&「心理学」が好き。

年齢/昭和3?年戌年生まれ。
職業/主婦。ブログライター、リサイクル雑貨アーチスト(1992年頃からatelier Pluie de Couleurを設営)。WEBSHOP経営。

*ハンドメイドのオリジナルブランド”atlier Pluie de Couleur” 公開中。
*リトグラフ、古伊万里、鉄瓶のWEBSHOP “A.Gallery" 経営中。

趣味/美術館やギャラリー巡り。地方の隠れ家美術館の発掘。料理。旅行。ピアノ演奏。映画鑑賞。
資格/英語検定2級。美術検定2級。アートエバンジェリスト認証。
家族/既婚。夫婦+息子1人+トイプードル

都会の心のオアシス「美術館」
Return Top
error: Content is protected !!