AE-Salon Webマガジン「alore(アローア)」

『宇宙と芸術展』にローラン・グラッソ
「黒い太陽」は輝かず 

『宇宙と芸術展』にローラン・グラッソ「黒い太陽」は輝かず 

-はじめまして

“alore”はAE-salon内ブログなので、このブログをご覧になっている方は、旬の企画展についての関心をお持ちの方が多いと思いますが、私は開催中の企画展には触れないように致します。プロキュレーター渾身の企画展を素人が云々するのも気が引けますし、感想も鑑賞者其々の人生・感性により千差万別なのではないかと考えるからです。では何を何のために綴るのかですが、既に古典となっている映画、音楽、作家等についての私の思いを綴ることで、たとえ一人の方でも関心を持って戴き、その方の世界を拡げられるきっかけになれば嬉しいなとの思いからです。私にとってのブログデビューとなりますが、自分に対するハードルとして輪舞(ロンド)形式(キーワードのリレー形式)を取り、一年が終わってこの初回にバトンを渡すことを目標としました。週単位でのアップを予定していますので50回前後となる見通しですが、一年間の長いお付き合いをよろしくお願い致します。毎回、タイトルから意図的に?外れてあっちこっちに脱線しながら、素っ頓狂な考えばかり披露致しますが、温かい目で見守って戴ければ幸いです。

-いきなり?のサンプル

企画展について触れられない恰好のサンプルとして、昨年、森美出館(以下森美)にて長期間開催された『宇宙と芸術展』を私が言及したらどんな感じになるかを記してみます。この企画展フライヤー速報版を見た私の目に飛び込んできたのは出展作家の一人ローラン・グラッソの名前でした。一昨年11月から昨年1月にかけ銀座メゾン・エルメス フォーラムにて開催された『ソレイユ・ノワール/ローラン・グラッソ』が私には大変新鮮に感じられ、何度も足を運んでいたからです。森美展覧会場に入り、先ずはローラン・グラッソ作品群(複数出展されていましたが「ソレイユ・ノワール(黒い太陽)」はありませんでした)との再会を喜びながら、メゾン・エルメスで味わえた感動との比較をしてみました。

  1. 森美の広い展示空間の中で、他の展覧会構成作品に囲まれたone of として展示されているよりも、メゾン・エルメスで作家自らが作製した展示版に囲まれた狭い空間の中で「縄文時代の司祭」等にぬっと出くわした方がインパクトは大きかった。
  2. メゾン・エルメスではエウルの2つの太陽とタルコフスキー映画さながらに遺跡(ポンペイ)を白い犬が彷徨うという二本の魅惑的な映像作品を鑑賞することが出来た。森美では映像作品が多数展示されていたのに、グラッソの映像はなく残念。

との理由からメゾン・エルメスで受けた感動の方が上回り、森美では贔屓のグラッソが今一つ栄えなかったなという印象が残りました。(ご関心を持たれた方は、メゾン・エルメスのサイト「Soleil Noir」ローラン・グラッソ展で展示状態等をご覧下さい。

 -柄にもなくエルメスのファンを気取ってみたり

展覧会スペース「メゾン・エルメス フォーラム」では過去の展覧会を素敵な小冊子に纏めあげ無償で配布してくれています。エルメスビル入口にはイケメンのドアマンがいて、ちょっと入りにくいかなと感じられるかもしれませんが、フォーラムそのものからして自然光が入る快適なスペースですので勇気を出してドアを開けてもらって下さい。11時のオープニングと同時にエルメスビル入りこんだら、スタッフが勝手にバッグフロアのエレベーター釦を押して、私の手に整理番号札を握らせたことがありました。12月だったので気合入れてクリスマスプレゼントバッグを買いに来たスケベオヤジと勘違いされたのでしょう。違う旨を伝えた所、恐縮しつつも実に感じの良い応対をしてくれブランド自体もファンになりました。森美/エルメス財団『シンプルなかたち展』開催時のメゾン・エルメスでのコラボ企画展『線を聴く』では、マリア像が浮かんで見えてくるような石を展示したり、A4コピー用紙に折り目をつけあたかもジャド作品のように壁一面にぎっしりと並べた作品で魅惑的な空間を演出してくれたりと、説田キュレーターのセンスは抜群だなと惚れ惚れしました。

-「アートサプリウォーク銀座編」PRも押し込んでみたり

「メゾン・エルメス」のすぐ近くの老舗洋画画廊「日動画廊」、話題の「渡辺省亭展」をやっていた「加島美術」、新春の吉岡徳仁が面白かった「資生堂ギャラリー」、メイプルソープで賑わっていた「シャネルネクサスホール」(エレベーター釦はシャネルロゴの一部をなしていますが、気おくれしないでどんと押しましょう)、「ポーラミュージアムアネックス」、60年代~70年代のアートファンにはたまらない「ギャラリー58」等の銀座界隈の画廊巡りなんかも面白いと思います。

-久々の「夜のローマ」との再会

『宇宙と芸術展』に戻りますと、がっかりしただけではなく懐かしく嬉しい出会いもありました。エティエンヌ・ルイ・ブーレー『ニュートン記念堂』が出展されていたのです。この作品はピーター・グリーナウェイの映画『建築家の腹』の中でモチーフ(引力・重力のメタファー)として何回も引用されていました。当時の私は夕刊の映画広告欄で目にした浅田彰のコピー「夜のローマはかくも美しい」に惹かれてこの映画を観に行ったのですが、まさか30年後の東京で『ニュートン記念堂』に再会出来るとは思ってもみませんでした。(ピーター・グリーナウェイにはラファエル前派と関連した『数に溺れて』等面白い作品があります。)

-このサンプルが?の理由

メゾン・エルメスでのローラン・グラッソ展と映画『建築家の腹』の両方を観たことがある方で、この森美企画展に足を運ばれた方というのは少数だと思われますので、私のこんな屈折した感想を披露してみても「こいつは一体何をほざいているんだ?」の世界になってしまうと思うのです。そもそも個人展の方が好み(現在の森美「ハルシャ展」をやたら気に入ってます)という私の嗜好の問題なのかもしれませんし…

-初回のロンドは田中泯に託して

私の学生時代は構造主義、記号論が大ブームで、数学嫌いだった私が一般教養課程とはいえ「数学」を選択したのも、その内容が構造主義入門というものだったからでした。当時は新進気鋭の浅田彰、中沢新一らの学者が売れまくっていました。Eテレ「100分de名著」の昨年12月放映では、レヴィ・ストロース著作を中沢新一が読み解くという当時を体感した世代には夢のような顔合せが実現し、懐かしみながら観ていました。次回はその番組に出演していた田中泯について取り上げてみたいと思います。

この記事のライター

aloreライター春山博美
2008年に美術検定1級合格、2009年東京都美術館で開催された『美術館名品展』にてアートナビケーターとして初ボランティア参加。
その後、美術アカデミー&スクールが主催するART LABO等で研鑚を積みつつ、2015年に初代アート・エバンジェリスト認証を取得。週末は冬でも汗だくで専ら美術館・画廊を巡っている。
ガイド歴はDIC川村記念美術館、朝倉彫塑館等の個性ある美術館を好み、また「アトリエ巡り」として新宿落合地区での中村彝、佐伯祐三の西洋画アトリエ、川端龍子記念館での日本画アトリエ等の紹介を得意とする。
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