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6.『アメリカの夜』撮影快調のテーマのごとく人生快調といきたいものです

6.『アメリカの夜』撮影快調のテーマのごとく人生快調といきたいものです

-夜よりも夜らしい昼

映画に愛をこめて アメリカの夜 特別版 [DVD]
(出典)アメリカの夜 特別版[DVD]/販売元:ワーナー・ホームビデオ/発売日:2003/04/04
今回はフランソワ・トリュフォーの映画『映画に愛をこめて アメリカの夜』(仏語版原題「アメリカの夜」)です。英語版原題は「夜のための昼」(day for night)についてです。

この映画が製作されてから既に半世紀近くが経っていますので、撮影技術や機器性能の向上によって今日ではもう当てはまらないのでしょうが、当時の解説によると「アメリカの夜」(la nuit americaine,day for night)は撮影用語で夜のシーンを表現しようとしたら、実際の夜に撮影するよりもレンズに赤いフィルターをかけて昼間に撮影した方が夜らしく見える仕上がりになるとありました。虚構の方が真実そのものよりも、より真実のように見えてくるものだとのメタファーともとれます。

-『軽蔑』だけの作曲家ではないドルリュー ♪

この『アメリカの夜』は『天井桟敷の人々』等が撮影された南仏ニースのラ・ヴィクトリーヌ撮影所において「パメラご紹介(Je vous present Pamela)」の製作過程を撮りながらとのスタイルをとった映画で、トリュフォー自身も監督役で出演しています。特に作曲家ジョルジュ・ドルリュー(彼はあのトゥルーズ・ロートレックと同じフィジカル・ハンディを背負っていました)の美しい音楽の数々、なかでも軽快な「撮影快調」というメインテーマに乗ってフィルムが流れるシーンは映画好きなら誰もが永遠に見続けていたいと思えるような至福の瞬間です。(今日でもこの「撮影快調」のテーマはBGMとしてよく使われています。いつもの脱線ですがゴダール映画『軽蔑』にドルリューがつけた音楽も実に美しく、やはりBGMやドラマによく使われています。) 

-全力を込めて蘇らさせなくてはいけないのはこのブログ?

「撮影快調」はオープニング早々から何度も流れますが、中盤の「映画の製作は馬車の旅に似ている、最初は希望に溢れて出発するが、様々なトラブルの中でともかく目的地につきさえすればいいと思うようになってしまう。これじゃいけない、今なら間に合う。全力を込めて蘇らせようとする。」とのトリュフォー演じる監督の台詞の後に「撮影快調」の軽快な音楽が流れて撮影名シーンの数々が被るシーンはその部分だけでも実に見事なアートと言える全編のハイライトです。公開当時はバッハ以前の軽快な旋律のバロック音楽は全てヴィヴァルディと言われていたような時代で、この曲もヴィヴァルディの協奏曲と書いていた某映画雑誌情報を素直な少年だった当時の私はそのまま信じ込み、トランペット協奏曲等のヴィヴァルディのLPを聴いて探しまくりましたが、100%ドルリュー作曲によるオリジナル曲です。

-仮面舞踏会の蝋燭から桜に想いをはせて、いつもの脱線しまくり…

映画の中の映画撮影シーンで、仮面舞踏会で「蝋燭」を手にした男女の撮影方法の種明かし(ここでのドルリュー音楽も実に美しいもので、ドルリューが本人役の声の出演(電話)でどうだとこの音楽を流すシーンは、ドライヤー、ブニュエル、ルビッチ、ベルイマン、ゴダール、ロッセリーニ、ホークス、ブレッソンそしてトリュフォー自身の著作もあるヒッチコックへのオマージュとなります。)がなされますが、これも今のカメラの性能なら普通に撮っても綺麗に撮れるのでしょうね。今の私にとって「蝋燭」と言えば高島野十郎で、昨春の目黒区美術館での「高島野十郎展」は久々の関東での開催ということもあり、待ちきれずに初日に訪れその感動の余韻に包まれつつ、中目黒の郷さくら美術館までの目黒川に沿った道のりを花嵐を浴びて花筏を眺めながら歩きました。今春の「蝋燭」は群馬県立館林美術館での「清宮質文展」を訪れました。展覧会自体は大満足ものでしたが、桜にはいささか早すぎましたので、その翌週に不忍画廊へ舘林の報告方々お邪魔し、高島屋日本橋店横の桜を借景に箕輪千絵子作品「件」(くだん)を箕輪先生とご一緒に眺めるという贅沢な体験をしてきました。(まだラフな構想段階ですが、来年3月下旬に朝倉彫塑館+都美「人人展」会場で箕輪先生のお話を伺うツアーを計画しています。このブログで「中村正義」を取り上げる頃にはもう少し具体化出来る見通しです。)

-コクトーへのオマージュにビセットの美しさが被さる相乗効果

コクトーに出世作『大人は判ってくれない』を高く評価してもらったトリュフォーは、この映画での桶入りバターのシーンで、恩あるコクトーへのオマージュを映像で明確に主張しています。以前取り上げました『黒衣の花嫁』でのディアーヌも同じ文脈から(『美女と野獣』のディアーヌからの引用?)コクトーへのオマージュではないかと思います。マニアックネタですが、桶入りバターのエピソードはかのジャンヌ・モローの実エピソードに基づいているようです。

そして、ヒロインのジュリー役を演じるジャクリーヌ・ビセットの美しさときたら、以前映像番組でテノール歌手ルチアーノ・パバロッティがビセットと友達だと自慢しているのを見たことがありましたが、その時の私はパバロッティが羨ましくてなりませんでした。 

-珍説? ジョージ・ロイ・ヒルのトリュフォーラブ(次回へのロンド) 

次回は、あまり言及されていないようですが、フランソワ・トリュフォーが好きでたまらなかった(と私が勝手に思い込む)映画監督ジョージ・ロイ・ヒルの『リトルロマンス』です。ロンドは「ラストシーンの再現」です。

この記事のライター

aloreライター春山博美
2008年に美術検定1級合格、2009年東京都美術館で開催された『美術館名品展』にてアートナビケーターとして初ボランティア参加。
その後、美術アカデミー&スクールが主催するART LABO等で研鑚を積みつつ、2015年に初代アート・エバンジェリスト認証を取得。週末は冬でも汗だくで専ら美術館・画廊を巡っている。
ガイド歴はDIC川村記念美術館、朝倉彫塑館等の個性ある美術館を好み、また「アトリエ巡り」として新宿落合地区での中村彝、佐伯祐三の西洋画アトリエ、川端龍子記念館での日本画アトリエ等の紹介を得意とする。
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