
-あなたの人生はどんな協奏曲?

今回はクロード・ソーテ監督の『夕なぎ』(原題「セザールとロザリー」)というフランス映画です。『リトル・ロマンス』とのロンドは「ラストシーンの再現」です。『夕なぎ』はフランス映画に実によく見られるトライアングル・ラヴをテーマにした映画で、ヒロイン、ロザリーを演じるロミー・シュナイダーはイヴ・サンローラン衣装を颯爽と着こなしています。後年『協奏曲』という建築士業界を舞台とした日本のテレビドラマで、この映画のラストシーンが思いっきり忠実に再現されていたのです。
-ロザリーは何故帰ってきたのでしょうか?
大好きなロミー・シュナイダーについては後日、独立して扱いたいと思いますが、そのロミー・シュナイダー(ロザリー)、中年男イヴ・モンタン(セザール)、若い男サミー・フレイ(ダヴィット)の三人の男女が織りなす愛憎劇の果てに、ロザリーが男達の元から立ち去っていきます。残されたセザールとダヴィットが奇妙な友情で男二人で仲良く暮らしていて、談笑しながら食事をしているところに、お騒がせのロザリーが戻ってくるというのが『夕なぎ』のラストシーンです。ロザリーが戻ってくる前の男たちのいきさつについては、作品の中で名優ミッシェル・ピコリがナレーションで語っています。昔はナレーションを被せることを「トリュフォーする」とか言ったものでしたが、今では何と言うのでしょうか?
-今の関心分野で観るとどうしても画家中心となってしまいます
この作品を現在の私がDVDで観るとセザールやダヴィットの友人画家絡みのシーンが興味深く感じられます。画家が日本土産の絵具をやたら有難がったり、セザールが友人画家の作品を買ってやったんだとロザリーに得意げに自慢すると「売れない画家でも絵画作品の相場ってもっと高いものなのよ」と叱られてしゅんとしたりするシーン等です。
-日本のテレビ番組がこだわりぬいた再現シーン
テレビドラマ『協奏曲』ではこのロザリー役を宮沢りえが、二人の男役を田村正和(セザール)と木村拓哉(ダヴィット)が演じていました。ロザリーが戻ってきて車から降りて、男達のところへ近づいてくるのを室内から窓越しにダヴィットが気付き、セザールもダヴィットの視線の動きを追ってそのことに気づき、その気づいたセザールを見つめてダヴィットの口元がゆるむというシーンがほぼそのまま再現されていて、門を開けるロザリーのストップモーションがラストシーンとなるところも宮沢りえのストップモーションで同じで仰天しました。ロミー・シュナイダーの演じた役をやれるような国際的女優が遂に日本にも出てきたのかと、当時の私は好意的に受け止めました。両作品間には20年位の時が経過していまが、監督か演出家あたりがこの『夕なぎ』の大ファンだったのでしょう。そういえば、デビット・リーン監督、フレディ・ヤング撮影の映画『ライアンの娘』の傘が飛ぶ名シーンなんかもよくドラマに引用されてますね。
-お約束事の脱線…宮沢りえのCМは演奏会曲目をも完全封印
国際派女優宮沢りえと言えば、テレビCMで元カリフォルニア州知事シュワルツネッガーと共演していたことがありました。対象商品はたしかドリンク剤だったように記憶しています。そのCMではショスタコーヴィッチ作曲の交響曲第7番『レニングラード』第一楽章に「チチンプイプイ」という歌詞をつけていて、そのせいかしばらく演奏会演目からこの曲が消えてしまいました。もしこのメロディーがCM放映当時のコンサート会場で演奏されたら、いくらマナーの良い日本人聴衆からでも失笑がもれる可能性が大きく、下手をするとその失笑がトリガーとなり会場全体が大爆笑に包まれる恐れがあったからだと思います。海外オケの来日公演だったら、何で一生懸命に演奏している自分達が笑われてしまっているかオケメンバーには全く訳が判らず、もしかしたら国際問題になってしまい、北方領土は永遠に返ってこなかったりして…
-次回へのロンドはモンタンにお任せ
次回はこの『夕なぎ』で味のある中年男を演じていたイヴ・モンタンにロンド致します。