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9.シャンソン『枯葉』だけじゃない、演技派モンタン

9.シャンソン『枯葉』だけじゃない、演技派モンタン

-フランス人と思われがちな元イタリア人

イヴ・モンタンは彼が映画『夜の門』の中で歌ったシャンソンの名曲『枯葉』が余りにも有名で、そんなシャンソン歌手のイメージから生粋のフランス男と思われがちですが、ファシスト政権下の情勢から一家ごと逃れて、マルセイユに移り住んできた元イタリア人です。モンタンはフランスでも大変愛され、大統領にとの声も上がった程です。

-シャンソン歌手だけではない役者は「恋の達人」、しかしその陰では…

シャンソン歌手のイメージがやたら強いモンタンは、役者としても数々の映画に出演し、名演を遺しています。またエディット・ピアフに愛され引き立てられ、シモーヌ・シニョレ(マックス・オフュルス監督版『輪舞』(ロンド)の最初のエピソードに出てきて娼婦役を演じました。その相手の兵士役を演じたセルジュ・レジアニもイタリア出身で、『夜の門』にも出演しています。)と結婚し、結婚後もあのマリリン・モンローとのロマンスさえ噂される程の「恋の達人」でもあった訳です。後年のシニョレの激しい老けこみようは、モンタンの度重なる女性問題による心労が原因に違いないと多くの方々が言及しているところです。シニョレの死後、モンタンは38歳年下の女性と再婚し、60代半ばにして唯一の実子を作りました。

-私の好きなモンタン映画、今一番観直したいのは『パリのめぐり逢い』

 『夜の門』(原題通り)…冒頭に書きましたようにシャンソンの名曲『枯葉』はこの作品の主題歌です。『枯葉』の作詞を手掛けた大詩人ジャック・プレヴェールが、この映画の脚本も担当しています。

(出典) さよならをもう一度「DVD」 復刻シネマライブラリー 2016/07/25

『恐怖の報酬』(原題通り)…モンタンがニトログリセリン運搬車のドライバー役を演じるアンリ・ジョルジュ・クルーゾ監督のサスペンス映画で、後年ハリウッドでウィリアム・フリードキン監督、ロイ・シャイダー主演でリメイクされた程の名作です。

『さよならをもう一度』(原題通り)…フランソワーズ・サガン原作『ブラームスはお好き』の映画化です。ちなみにフランスではブラームス=野暮ったいというイメージだそうです。つまり口説き文句としてはどうなのよ?という意味合いになるそうです。

『仁義』(原題「赤い輪」)…ジャン・ピエール・メルヴィル監督によるフィルム・ノワール作品で、モンタンはアルコール中毒に悩まされる腕利きのスナイパーをカッコよく演じていて主演のアラン・ドロンがかすむ程です。こんなモンタンの役柄に私は『ルパン三世』の次元大介が老けてアル中になってしまったようなイメージを抱いてしまいます。

『パリのめぐり逢い』…原題はvivre pour vivre (直訳すると「生きるために生きる」どんな訳が相応しいのでしょうか?どなたかご教示願います) 監督クロード・ルルーシュ、音楽フランシス・レイという『男と女』の名コンビによる作品です。男性目線での感想になってしまいますが、キャンディス・バーゲンとの浮気を経て世界を彷徨って戻ると妻アニー・ジラルドが雪を被った車の中で笑顔でモンタンを待ってくれているラストシーン(実際のモンタン/シニョレ夫妻を描いたということではないとは思いますが)は素晴らしくハートウォーミングで、ルルーシュはこのラストシーンが撮りたくて逆算して映画を組み立てたのではないかと思うほどです。フランシス・レイの音楽も有名なテーマ曲以外にも佳曲がふんだんに織り込まれていますが、何故かDVD化されていません。大昔にテレビ放映で観ただけなので「記憶の美化」ということもあるのでしょうが、今無性にじっくりと観直してみたい映画です。

『うず潮』(原題「野蛮人」)…カトリーヌ・ドヌーヴとの共演で、名「鼻」(仏語nez  調香師のこと)役を演じています。コミカルタッチの映画ですが、ドヌーヴと恋に落ちる調香師役に憧れたりした思い出があります。ロートレックの絵画が小道具として使われています。

-クロード・ソーテ監督作品に立て続けに出演

モンタンは前回取り上げました『夕なぎ』の後、同じクロード・ソーテ監督『ギャルソン』の主演を務めています。この映画でモンタンはパリのブラッスリーの給仕長役をきびきびと演じていますが、肝心の料理は今日の視点で見るとソースがこってり系でどうしても時代を感じてしまうことは否めません。屈折した私としては、ギャルソンとしての颯爽とした立ち振いよりも、相変わらずモテモテ役で女性間を立ち回る様の方がいかにもモンタンらしくてカッコよく見えてしまいます。更にこの『ギャルソン』の後もソーテ監督『友情』に出演し、ミシェル・ピコリ、セルジュ・レジアニ、ジェラール・ドパルデューという渋い錚々たる役者陣と共演しています。

-パリ訛りを気取ってロンドしてみたり

カフェとキャフェ、ガルソンとギャルソン、どちらもよく耳にする響きかと思いますが、どちらが正しいフランス語の発音なのでしょう?それぞれ後者はパリ訛りのようです。日本人がフランスの地方都市のカフェで気取ってこの発音で注文するとあまりいい顔をされないかもしれませんね。また、パリでも他の都市でもギャルソン(ガルソン)への呼びかけは「ギャルソン」ではなく「ムッシュー」と呼んだ方がいいと思います。

次回はパリ訛り「ギャルソン」ロンドで「伝説のギャルソン」を描いた三谷幸喜脚本のCXテレビドラマの傑作『王様のレストラン』です。なんだかかなり単純な「ロンド」になってしまいました。「記憶の美化」というロンドで中国映画『太陽の少年』あたりに行った方が渋いのですが、今後のロンド展開の都合という大人の事情もございまして…

この記事のライター

aloreライター春山博美
2008年に美術検定1級合格、2009年東京都美術館で開催された『美術館名品展』にてアートナビケーターとして初ボランティア参加。
その後、美術アカデミー&スクールが主催するART LABO等で研鑚を積みつつ、2015年に初代アート・エバンジェリスト認証を取得。週末は冬でも汗だくで専ら美術館・画廊を巡っている。
ガイド歴はDIC川村記念美術館、朝倉彫塑館等の個性ある美術館を好み、また「アトリエ巡り」として新宿落合地区での中村彝、佐伯祐三の西洋画アトリエ、川端龍子記念館での日本画アトリエ等の紹介を得意とする。
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