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色は、作品のイメージとなり人に伝わることがある

色は、作品のイメージとなり人に伝わることがある

Webライターメンバーの方からのおすすめで、「N・S・ハルシャ展」にいきました。
この作品展は、とても不思議な空間でした。
私は、作品を見ているのに逆に作品に見られている視線を感じました。

今回は、N・S・ハルシャの視線の方向を追いつつ、色イメージについて、レポートします。

NS・ハルシャは、インドの現代美術のなかでも 最も洗練されているアーティストのひとりです

ハルシャは、1969年南インドのカルナータカ州にある古都マイスールに生まれます。美術教育をマイスール大学とヴァドダラーのマハーラージャ・サラジラオ大学(MSU)大学院で受けています。この大学院は、異なる進歩的な教育を進めたことで、知られています。1995年初頭、故郷マイスールに戻り、現代アートの全く新しい可能性を求め活動をはじめます。今回の展示は、ハルシャの1995年から現在にいたる約20年間の代表作約70点です。インドの伝統美術、神話叙事詩、インドのグローバル経済、日本の伝統について、動植物・鳥たちの世界、未知の宇宙空間、日本の小学生のワークショップ作品…これらは、「とき」「ところ」を超えています。

ハルシャの視線は、どこにあるのでしょう?

ハルシャの視線は、日常を見ています

ハルシャは、1999年~2001年にかけて、三連画の大作《私たちは来て、私たちは食べ、わたしたちは、眠る》を描きます。人々の日常に視線を向け、連続した人物を描きます。食べる人々を266体、来る(左側から、右側に川を渡って歩く様子)を276体、寝る姿を189体描いています。何百体という人々の日常の営みです。誰ひとりとして、同じ人は、いません。

ハルシャの視線は、故郷マイスールからインド、世界を見ています

ハルシャは、2006年「チャーミングな国家」シリーズを発表します。インドは、1990年代初頭から、経済改革がすすめられ、外国資本に対して様々な分野での投資が解放されました。2000年過ぎる頃には、農業にも影響がみられるようになりました。シリーズとなるそれぞれの物語は、マイスールを舞台にした農業の機械化と農民への影響、宇宙開発への夢と現実、国際競争力の強化と軍事産業など、相反する現象をハルシャは、批評的に対比させて描いています。

「チャーミングな国家」シリーズ 2006年

背景の色に注目します。そのイメージは?

このシリーズ作品は、すべての物語の背景が舞台か、紙芝居のように箱型の中に描かれています。その背景色は、ブラウン(濃い茶色)です。ハルシャ自身は、このシリーズを特別に「ブラウン・ペインティング」と言っていますから、色のイメージを意識しています。ブラウンは、一般的に大地や自然を連想することから、安定感、落ち着き、温もりを感じさせ、人を安心させます。その一方で泥や焦げ、腐敗したものや排泄物の色であり、汚れたイメージもあります。

ハルシャの視線は、宇宙を見てます

 

「ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ」 2013年

形とその色に注目します。そのイメージは?

全長24メートルを超える大作です。巨大な一筆書きのように見えますが、細部には、おびただしい数の星があります。また、多くの惑星もあり、地球もあり、地球の中にインドも見えます。形は、無限大記号をねじったような輪です。色は、黒ではなく、濃いブルーです。濃いブルーは、一般的に空や海といった大自然から無限の広がりを感じさせるイメージになります。この一方で陰鬱・不安・心もとなさといったイメージもあります。ハルシャが意識してこの色にしたのか記述はありませんが、作品のタイトル「ふたたび生きて、ふたたび死ぬ」を意味深く伝えているように思います。

「チャーミングな国家シリーズ」のブラウン、「ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ」の濃いブルー、これらの色のイメージは、ハルシャが伝えたい感情表現したもの(作品)のイメージと重なって、私たちに伝わってきます。

色は、作品のイメージとなり人に伝わることがあります

(注)伝わるではなく、伝わることがあるとしました。なぜなら、他の作品にもこのことが、あてはまるか?と問われるとそうではないからです。色のイメージは、一般的なものです。色は、時代によってイメージに流行があることや、国によりイメージが、異なることがあるからです。色の分野でも色のイメージは、実際には十分に研究されておらず、はっきりと言うことは難しいです。

ハルシャの視線は、今、未来の子供にあります。この先、次回のハルシャ展が、楽しみです。

 

この記事のライター

aloreライター片桐です
1964年生 既婚 愛知県一宮市住在 会社員
<好きなこと>
美術鑑賞/本、雑誌を読むこと/能のお稽古/着物を着ること/レトロな喫茶店に行くこと/テンションのあがる音楽/人の話を聞くこと/
<取得資格>
国際カラーデザイン協会 カラーデザインマスター/日本カラリスト協会 1級パーソナルカラーリスト/色彩診断士/東商カラーコーディネーター1級(環境色彩)/アートエバンジェリスト/日本色彩学会会員

アート&色。お手すきのときにお読みくださいね。
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