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〜第一回〜 西洋美術の鑑賞に役立つ聖書のお話

〜第一回〜 西洋美術の鑑賞に役立つ聖書のお話

現在、上野の東京都美術館で、ボイスマン美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展が開催されています(7月2日まで)。
ピーテル・ブリューゲル1世の描いた《バベルの塔》は、旧約聖書に書かれた物語をテーマとした作品です。バベルの塔の物語は人間の高慢さを戒めるお話であり、世界に多数の違った言語があることの理由を説明するお話です。

キリスト教の誕生以降、長きに渡り東西ヨーロッパにおける美術の中心にあったキリスト教美術は、西洋の美術史を語る上で避けては通れない重要なテーマです。ですので、聖書の内容を少し知っているだけで、西洋美術の鑑賞がより楽しくなるはずです。

 

旧約聖書と新約聖書の違いは?

『旧約聖書』と『新約聖書』、二つの聖書の名前を耳にしたことがあると思いますが、そもそもどういう違いがあるのでしょう。

『旧約聖書』は全能の唯一神(ヤハウェ)に選ばれしイスラエルの民の興亡の物語。天地創造からバビロン捕囚解放までの壮大な歴史が語られます。イスラエル人の民俗信仰であるユダヤ教の聖典として伝えられ、のちにキリスト教とイスラム教の聖典ともなっています。

一方『新約聖書』はユダヤ教から分派したキリスト教のみが聖典としているもので、イエス・キリストの生涯と教え、使徒の手紙などで構成されています。

「新」「旧」という呼び方は、両方の聖書を採用しているキリスト教の視点からのものです。神がイスラエルの民とのみ交わした契約を「旧約」、神がイエスを人々の元へ遣わすことによってすべての人々と結んだ新しい契約を「新約」とします。なので、ユダヤ教とイスラム教の聖典には「新」「旧」という考え方はありません。

 

聖書とは神との契約の物語

『旧約聖書』『新約聖書』の「約」は契約を意味しています。神が恩恵や祝福を人々に与える代わりに、人々は戒律(モーセの授かった十戒がもっとも基本的な戒律)を守ることや誠実であることで、神に対してただただ忠実に従う、という約束です。
聖書の中にも出てくる表現なのですが、神と人との契約は夫婦関係に例えられます。イスラエルのために心を砕く神ヤハウェを夫、ヤハウェだけに忠実に従うイスラエルの民を妻。男尊女卑の夫婦観なので、現代人には承服しかねるところもあるかと思いますが。

神に対して誠実であった場合、イスラエルの民は契約に則り、他民族との戦いに勝利したり、肥沃な土地を手にしたり、という恩恵や祝福を受けることができます。しかし、戒律を無視したり、ヤハウェ以外の神を信じたりするような裏切り行為をしてしまった時には、国ごと滅ぼされるなど容赦ない仕打ちを受けます。

聖書の物語は、契約により神から人々が受けた恩恵や無慈悲な仕打ちの顛末を説明するという内容になっているのです。

それではいよいよ、次回より2回に分けまして、西洋美術の巨匠たちが描いた聖書の物語について見ていこうと思います。

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この記事のライター

aloreライター橘高あや
千葉県在住。アートエバンジェリスト。美術検定2級。楽しい美術鑑賞の伝道師を目指して精進中。
得意分野は浮世絵と宗教画。絵画から物語を読み解くことが好き。
趣味は読書と料理、御朱印集め。
好きな言葉は温故知新と不易流行。古きものも新しきものも、一時の流行からも学び取り面白がれる人間が理想。
アートは心を、人生を豊かにしてくれます。作品との対話は自分との対話。思いもつかないような多種多様な表現と出会い、それに対する自身の反応から、自分に対する新たな発見を得ることができます。異なる価値観を知り理解することは、他人への理解や許容につながります。アートと付き合っていると、自分にも人にも優しくなれる気がするのです。閉塞感に苛まれる現代社会をアートの力で変えていけたら。そんな思いでおります。
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