
暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?
外出するのも辛い、そんな日は室内で美術鑑賞などいかがでしょうか?
数十年も前の話になりますが、伊豆のリゾートホテルに宿泊した時、ロビーのガラステーブルの下にさりげなく、ルノアールの画集が置いてあったことがあり、当時はまだ美術館ブームでもなく、ホテルのロビーにあるとしたら旅行ガイドや新聞程度の時代でとても新鮮でした。客室も綺麗で清潔感があり、温泉からは伊豆の海が一望でき、快適に休日を過ごすことができ、女将の気配りが感じられるホテルでした。そのホテルは十年位前から、タウン誌などの主婦の人気投票でリストアップされる程人気のホテルになったようです。+プラス画集、のような気配りが女性ファン増加に繋がったのかもしれませんね。
夏だ!! 気になる<海>がテーマの作品
夏なので、海に関わる芸術作品を自分なりに選んでみました。
*パウル クレー(1879ー1940 スイス)

この作品は、パウル クレーの幻想喜歌劇<船乗りシンドバッドの冒険>というオペラの一場面を描いた絵です。誰もいない暗い海原で船乗りが怪魚と格闘するシーンが実に上手く表現されています。
パウル クレーは幼少期からヴァイオリンの名手でプロとしてコンサートホールに出演したこともある程の腕前でした。音楽が彼の絵に影響を与えるのか、暗く重い色調でさえ軽快感があり、楽しい子供の絵のような感じもします(実際音譜の描き込まれた作品もある) 。色彩とテーマが、美しくファンタスティックに調和し、謎めいた記号や線など描き込まれ、見る人を魅き付ける魅力に溢れています。この絵は、昔、中学生の頃に”シベール”という行き付けのCAFEに飾ってあり、絵に興味を持つきっかけともなった忘れられない作品です。幻想的で謎めいたシーンにとても心魅かれました。そして、様々なクレーの画集を探しても、この絵を見付けることができず、そのことで益々興味をそそられました。最近になってパウル クレー協会の方に調べて頂き、所蔵美術館がスイスのバーゼル美術館であることを知ることができました。
その当時、この店のオーナーは、複製画をスイス辺りで手に入れたのでしょうね。余談ですが、フランスに修行に行き、ケーキも創るお店を始めたオーナーシェフ自身が店舗を設計、実は、親戚の方が大屋だった為、時々家にケーキのサンプルを持って来てくれていました。上京し時を経て、縁も薄くなってしまいましたが、17〜8年前から急成長、やはり青山や全国各地に店舗拡大、成長企業となっていると当時からの友人に聞きました。昔から、この絵を選ぶセンス、ただものではない感じでした。
*杉本博司 (すぎもとひろし 1948ー)
<海景>という杉本博司の作品は、30年に渡り、杉本が海だけを撮影し続けている海のシリーズです。海と空しか撮影されていないごくシンプルな作品シリーズですが、ニューヨークのメトロポリタン美術館にも所蔵展示されている有名な作品です。淡々とした海の光景がただ映し出されていますが、杉本はニューヨークや日本、海外を飛び回り、絶えず変化する日常に身を置き、この<海景>シリーズなども撮影する生活を送っているにも関わらず、ピントは常に海の水平線に向っていて変わることがありません。杉本は何をどう感じながらそしてその時撮影者と同時に周囲はどのような状況に置かれ、撮影するのでしょうか?
杉本博司は、熱海MOA美術館の2015年から2017年までのリニューアルの際、建築家榊田倫之氏と共にMOAの所蔵作品にふさわしい屋久杉や漆扉など日本古来の素材を活かした展示空間の設計にも参加しています。
*ル コルビジェ (1887ー1965フランス)
<カップマルタンの休暇小屋>は地中海を臨むフランス、ロクブリュヌ、カップマルタンにあり、コルビジェの妻イヴォンヌのために建てられた終の住居です。日本では世界遺産となった国立西洋美術館の設計など国際的な建築家でしたが、人生最後は海水浴もできるこの小屋で夫妻で生活をしました。調理をするスペースも無い程の「最小限住宅」を構想、実践し、食事は毎日、隣接するレストラン「ヒトデ」で取っていたそうです。海水浴の途中、心臓発作で亡くなっています。(画像の提供不可につき、Google等で御検索下さいませ。)
*クロード モネ (1840ー1926 フランス)

あまりにも有名な『印象派』の命名の由来となったモネの作品。モネはル アーブルのホテルの窓から眺めた霧の中の太陽と港の風景を描いたとしています。1874年の印象派展に出品。水平線を上部に置き、水面を大きく捉え、光が反射する様を大胆な色彩と筆致で表現、まさに、モネの目でしか捉えることのできない日の出の光景です。
*ベルナール ビュッフェ (1928ー1999フランス)
戦後を代表する具象画家であり、フランスの国民的画家です。黒い鋭いくっきりとした線が特徴的な作品を描いています。作品に使われる色はブルー、赤、黄色がほとんどでステンドグラスのような印象も受けます。’50年代の実存主義の若者の間で絶大な支持を受けました。あまりにも多作で、同じ画風で描き続けている為に、変化に乏しいと酷評されることも多いのですが、クールでアンニュイな独特の個性はファンを魅了して止みません。

海をテーマにした作品は古今東西を問わず数多くありますが、あなたのお気に入りはどの作品でしょうか?そして季節などをテーマにした作品の中から、お気に入りを見付けてみるのも楽しいかも…
*今月のオススメ
<BOOK>
芸術とは何か 千住博が答える147の質問 祥伝社
芸術とは何か、人間とは何かという根源的な147の質問に答える奥深い本。
<美術館>
奥多摩町立せせらぎの里美術館 小沢七絵展開催中 8.8〜9.10
緑につつまれた奥多摩の渓流沿いの道を歩きながら辿る道のりもまた格別。熱中症予防にペットボトル、水筒必須です!
<美術展>
サンシャワー 東南アジアの現代美術展 国立新美術館X森美術館
2017.7.5 〜 2017.10.23 六本木発アートフェス
365日夏の東南アジアの現在活躍中の若手アーチストによる展示。
開発と未開発の狭間に揺れる東南アジアの現状をアートから垣間見ることができます。
FIN.