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ARTのある暮らし10 〜日本人の美意識について考える〜

ARTのある暮らし10 〜日本人の美意識について考える〜

ARTのある暮らし10
日本人の美意識について考える〜

神州第一峰他
横山大観

先月、岡山の足立美術館へ行き、特別展示室で横山大観の作品を多数観て来ました。こちらの美術館では130点もの大観作品を所蔵しているということです。この時は突き当たりに「神州第一峰」(昭和7年)が展示してあり、その山々に霧がかる光景の鬼気迫る幽玄さに圧倒され、涙が溢れそうでした。この美術館は枯山水の日本庭園が海外の方にも有名ですが、大観の展示室も見所のひとつ。この横山大観の作品を始め、国内外の方々からも愛される日本の美術や文化、そしてその文化を生み出す日本人の美意識について考えてみました。

1. 霧の彫刻家 中谷芙二子

銀座メゾンエルメスフォーラム「グリーンランド/中谷芙二子+宇吉郎 展」で中谷芙二子さんの霧の彫刻を観ました。この方は、雪氷学の基礎を築いた世界的な科学者中谷宇吉郎氏のお嬢さんだそうです。1994年にその功績を顕彰する為に宇吉郎氏の生まれ育った町、石川県加賀市片山津に「中谷宇吉郎 雪の科学館」が、建築家磯崎新氏によって設計、建設されました。その際、磯崎新氏の計らいで科学館の中庭に芙二子さんの ”霧の彫刻” を創ることになったそうです。当初は、中庭は芝生のスロープでしたが、雪と氷の厳しい自然と戦いながら最期の四夏を過ごしたグリーンランドと同じ、丸い石ではなく尖った石を使いたいと、グリーンランドへ石を拾いに赴いたそうです。
それ以前には、
大阪万博ペプシ館で人口霧を発表し話題となり、現在80歳を超えるベテランの方ですが、まだ意欲的に活動を続けていらっしゃいます。その活動の影にはお父さんの研究者としての存在が大きく影響しているようで、展示室には父から娘へ贈った掛け軸も展示されていました。

霧の彫刻 中谷芙二子
銀座メゾンエルメスフォーラム


ご存知の方もおられると思いますが、このビルは
イタリアの建築家レンゾ ピアノ設計で壁面がガラスブロックで全て覆われています。作家はこの壁面を覆うガラスブロックをグリーンランドの氷壁に見立て、人口霧を多数のパイプの穴から噴出させる仕掛けを創りました。ギャラリー内は当時のグリーンランドを再現し、ドラム缶や霧除けの為に羽織るレインコートまで壁に掛け臨場感を盛り上げています。中谷さんは世界各地、スペインビルバオのグッゲンハイム美術館やアメリカのフィリップ ジョンソンのグラスハウスなど様々な場所で霧の彫刻を続け、画像や映像化したものを作品として発表し続けています。展示室にある写真集や展示された映像作品を見るとまるで動く山水画のようでもあり、消えてしまうからこそ美しい霧をテーマにした作品です。

2. SAKURA

桜と電車

毎年桜の季節は東京も最も雅やかに華やぐ時なのではないでしょうか?私は子供の頃は、自然も多い土地に住んでいた為に、山々の光景や桜の開花、降る雪などあまりにも身近で、その美しさなどに改めて気付かないまま暮らしていました。こうして何十年も都会での暮らしをしてみると、高層ビルが立ち並び、排気ガスの蔓延する中に咲く桜がなんと美しいことか、感銘を覚えます。まれに都会に降る雪すらも叙情性を感じます。それも短い間だけ開花するからこそ美しい、儚い美しさ、散りゆく”もののあはれ”、とでもいうのでしょうか。昔から日本人は満開の桜の木の下で短い春の時を愛おしむように宴を催してきました。今よりずっと貧しく、モノや平和もない太古の昔から、桜はどこにでも満開に花開き、誰でも愛でることが出来る、日本人にとって平等な数少ない幸せな季節の行事だったのでしょう。

3. アイスフィギュアスケート

今年の平昌冬期五輪で羽生結弦選手が右足首の負傷から復帰、個人種目で初、連続で頂点に経ちました。途中バランスを崩し、ハラハラしましたが、金メダル、そして、同じ日本人選手宇野昌磨選手が銀メダル、この選手も最初で転倒し、観ていて信じられない金銀メダルの獲得。アイスフィギュアはスポーツですが、バレエのように芸術性が高く評価される競技で、私のようなスポーツ音痴でも観て楽しめる競技なのです。採点する側にも様々の心の葛藤などがあり、技術点評価だけではない様々な思惑が働くのですね。結果、見事に金銀メダルを獲得しました。そして、このアイスフィギュアというスケートもまた、日本人選手が高く評価される競技の一つです。いずれ溶けてしまう氷の上での舞、これもまた儚く美しいものなのかもしれない、と感じるのです。

4. 最期に

日本はアメリカやヨーロッパ等と異なり、島国の小国で大陸ではありません。しかし、その為にむしろ温存されて来た数々の文化があります。消えゆく儚いもの、もののあはれを大切にする文化、島国だからこそ守り得た文化だと思うのです。大陸であれば、現在でも常に他国からの侵入、脅威、テロなどに怯えながら暮らさなければなりませんが、島国であればそれも少なく、一種純粋培養的に連綿と培って来た繊細な独自の文化があります。
東京五輪も間もなく開催され、世界各国から人々が観戦に訪れます。まだ、2年先でもあり、その間に戦争や天災、人災が起こる可能性もありますが、日本は訪れて来る海外からのお客様にできるだけのおもてなしをもって対応しようと心掛けています。日本のベストな顔でお迎えしようという気運が高まり、改めて自国の文化も見直されています。来て良かったと思える日本の暮らしを創造し続ける努力がしいては、自らの長所や利点に気付き、発展させる礎となるかもしれません。

5. 今号の気になる美術展

執筆の時点で、開催されていない美術展もありますが、話題でとても気になる企画展をピックアップしました。

<写真都市展ーウィリアム クラインと22世紀を生きる写真家たち>
1956年に写真集『ニューヨーク』でデビューし、世界の主要都市、ローマ、東京、パリなどを巡りながら写真、映像、デザイン等様々なジャンルを跨いだ表現で現在も活躍を続ける写真家ウィリアム クラインと現代日本の若手写真家とのコラボ。
会場/21_21 DESIGN SIGHT    会期/2018.2.23(金) 〜 6.10(日)
http://www.2121designsight.jp/program/new_planet_photo_city/

<岡上淑子コラージュ展ーはるかな旅>
昭和20年代に瀧口修三に見いだされ、シュールなコラージュで評判を呼んだ岡上淑子の2000年、44年ぶりの個展「岡上淑子 フォト コラージュ ー夢のしずくー」等を経て、初の大規模回顧展。
会場/高知県立美術館   会期/2018.1.20(土) 〜 3.25(日)
https://moak.jp/event/exhibitions/post.html

<彫刻と人形>及び<平櫛田中弁当イベント>
日本近代彫刻を代表する平櫛田中の邸宅が彫刻美術館を併設し東京小平市にあります。日本建築とモダニズムを融合させた建築家大江宏氏による邸宅で梅を鑑賞しつつ食べる田中弁当。邸宅建設時田中氏98歳、108歳まで生きた氏の愛した惣菜と小平産の野菜を詰め込んだお弁当。

写真提供 「平櫛田中彫刻美術館」


会場/小平市平櫛田中彫刻美術館
会期/「彫刻と人形」2018.2.7 (水)〜2018.5.20(日)
イベント企画「平櫛田中弁当」2018.2.28(水) 〜 2018.3.19(月)
http://denchu-museum.jp/

 

FIN.

この記事のライター

aloreライター@新井隆子
子供の頃に家が城下町にあった為、近所にお堀のある公園、その中に城跡や県立美術館があり、美術館好きになりました。中学の頃からNHK日曜美術館ファン。
’70 大阪万博の時、岡本太郎の『太陽の塔』の前の特設ステージで開催されたアジア少年少女合唱際に参加、歌ったことも想い出の一つです。
昔、大学で(社会)心理学、その後インテリア、建築を学び「コワイ」と言われても元から「美術」&「心理学」が好き。

年齢/昭和3?年戌年生まれ。
職業/主婦。ブログライター、造形作家(1992年頃からリサイクル雑貨制作atelier Pluie de Couleurを設営)。過去、公民館生涯学習部、手作り教室等で講師の経験があります。

*ハンドメイドのオリジナルブランド”atlier Pluie de Couleur” 公開中。
*リトグラフ、古伊万里、鉄瓶のWEBSHOP <A.Gallery>経営中。

趣味/美術館、ギャラリー巡り。地方の隠れ家美術館の発掘。旅行。ピアノ演奏。料理。映画鑑賞。
資格/アートエバンジェリスト認証。美術検定2級。英語検定2級。
家族/既婚。夫婦+息子1人+トイプードル

都会の心のオアシス「美術館」
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