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ARTのある暮らし11 最終編 〜 ARTに何を見付けますか?〜

ARTのある暮らし11 最終編
〜ARTに何を見付けますか?〜

WATER’S EDGE


2017年に始まったaLore のブログも年度の最終回となりました。美術館やギャラリーで多くのアートに触れ、時には自宅に飾る為に購入するなど、美術マニアが増加、アートも様々な場所や形で提供される中で、絵画の正しい鑑賞法とは?とかその絵に何を観るべきかといったことを定義するのはとても難しいことだと感じます。それは、一人一人価値観や趣味が異なり、アートファンの集まりなどでも気付くのですが、それぞれ美術に対する感じ方や伝え方が異なるからです。また、自分にない感性をそこにみると時には、驚きと共に畏怖の念を抱いたりすることすらあります。美術館やギャラリーに足を運ぶ理由も、単に好きだから行く人や人に薦められたり誘われたりして行く人、周囲が行くならと話題に遅れない為に行くなど、それぞれ理由も異なります。その時々の重なる思いも千差万別、一昔前なら、美術館より映画館に行く方が解り安いし敷居も高くない、とかスポーツを観戦して熱狂する方が自分には向いている、とか実際に自分でスポーツをやる、とか中々美術館のような特異で敷居の高い世界には近付かないような人達でさえ、美術や美術館に関心を持つようになり、美術愛好家も増え、公立私立問わず美術館もあちらこちらに建てられるようになりました。そこでこの年度最終回では、では、美術鑑賞のどのような点が鑑賞者の役に立っているのか、とか実際アートの何に着眼して鑑賞すべきかといった中々普段は聞きづらい素朴な疑問を掘り下げる事にしました。

1. 美術館って何のためにあるの?

最近美術検定とか世界遺産検定とかよく耳にしますが、かくゆう私も美術検定を数回経験しました。そして、そこから学んだ雑学の一つからお話を進めます。「博物館」に対応する英語(museum)の語源はギリシャのムセイオンにあるのだそうです。エジプトのプトレマイオス一世がアレクサンドリアに設置したムセイオンは展示施設ではなく、図書館機能を備えた総合的教育研究施設だったようで、市民に世界最初に美術館として公開されたものは、ローマのカピトリーノ美術館だと一般的には云われています。
そして、現代の美術館は博物館のうちの一つと数えられ、芸術、それも視覚芸術を対象とする博物館であると「博物館法」では規定され、「社会教育施設」なのだそうです。その為、国や県、市などの公立美術館は博物館法第23条の「原則無料」の法則が存在し、社会教育の精神の元、無料で利用できる図書館と同じく多くが月曜日休館です。そして美術館の教育普及事業の一つとして、講演会、ギャラリートークなど、また、その活動を支えるボランティアの存在、そして学校を含め地域へのアウトリーチなど福祉事業としての側面など多枝に渡ります。

2. どんな時に美術に触れたいか?

心理学者アブラハム マズローに寄れば、人間の本能には欲求段階の生理的欲求である「食欲、睡眠欲、排泄欲」があるとされています。それは人間だけではなく、全ての動物にもあてはまる欲求です。そして、人間が動物と異なるのは「知識欲」であるとする学者がいます。アダムとイヴがエデンの園から追放されたのは、主なる神の “善悪の知識の実だけは食べてはならない” という命令に背いたからであるとされています。神の命令に背いてまで口にしたかった知識の実、これは生来人間の持つ欲求なのだとする説です。
先日、西洋美術館の「プラド美術館展」に行きました。美術愛好家としても知られ、あのベラスケスを寵愛、外交の全てまでを託した「こわい絵展」でもお馴染みのスペイン国王フェリペ4世のコレクションを始めとするプラド美術館のコレクションの展示です。以前、<絵画のヒエラルキー>という話を書きましたが、17世紀に創設されたフランス王立絵画彫刻アカデミーによる絵画の序列では、その最上位にあるのが、歴史画、宗教画そして2位が肖像画です。それは、聖書や神話、歴史などに対する幅広い知識がなければ描けない絵画だからだそうです。そしてこの度の<プラド美術館展>での展示はまさに、その最上位に位置する宗教画、そして肖像画が殆どでした。比較して時折、現代アートは常人では理解不能な高邁な思想が存在する難解な絵画であるかのように耳にしますが、今回の<プラド美術館展>など、歴史の背景の知識が無ければ楽しめない絵画の世界でもありました。そしてまた、現代において、あのピカソの絵が単純な子供の絵と異なるのは、まさにその違いなのかもしれません。ピカソは画家である父親から画家としての英才教育を幼い頃から与えられ、画家になる理想的な
家庭環境の元に育った芸術家です。よくピカソの絵として代表される破壊された顔の絵は、ピカソが磨き上げた素晴らしいデッサン力や知識に裏打ちされたものなのです。ですから、青の時代のピカソの絵など写実的な作品も誰がみても素晴らしさを感じとることができるのではないでしょうか。

国立西洋美術館フライヤー

3. アールブリュットの世界

それでは、最近アートの世界でよく耳にする「アールブリュット」とはどういう芸術なのでしょうか?フランス語を直訳すれば、アールは(art)、ブリュットとは(生の)という意味です。”教育や伝統、流行などに左右されず内側から湧き出るままに表現した芸術” というようなニュアンスです。「アウトサイダーアート」とも称され、画家ジャン デュビュッフェ(仏) が1945年に命名した際は、主に精神障害者によって描かれた絵画を指していました。現在は、障害者のみではなく、正規の美術教育の影響を受けずに制作された独自性の強い作品や、子供の作品も含まれます。2013年のヴェネチアビエンナーレ国際美術展では、アールブリュット作品が国際的に大きな注目を集めました。

4. ビジネスパーソンにとってのART

大部以前から米国のグローバル企業では、幹部候補生をRCAのアートスクールやアスペン研究所などの哲学ワークショップに人材育成の為、送り込んでいます。また、現在の世界情勢を「VUGA」という造語で表現し、様々な場所で聞かれるようになっています。Volatility不安定、Uncertainty不確実、Complexity複雑、Ambiguity曖昧という今日の状況を表す単語の頭文字を合わせたものです。このような時代にあって、これまでの論理性や合理性、数値に基づく問題解決能力だけでは、あらゆる解決の方法になり得ないことに気付き、有効な手段としてARTへのアプローチが始まりました。企業活動として「美意識」を良い悪いの判断の基準に置き、広い解決への糸口としたものです。また、美術鑑賞は、それまで必要とされていた論理性や理性に加えて、直感力や集中力を養うものとして有効な手段であると気付き、早朝からのビジネスエリートの美術館ギャラリートーク参加などが始まりました。確かに私個人が感じることですが、仕事をこなす能力の速い人程、鑑賞の際、作品の全体から瞬時にして何かをつかみ感じ取る能力に優れている感じもします。

NEW MUSEUM 1

5. 美術(ART)とは一体何?

話は日本に戻りますが、岡倉天心は東京美術学校(現 東京藝術大学美術学部)の設立に尽力し、日本美術院を創設した人として有名ですが、自らは ”描かない芸術家” として有名でもあり、芸術家です。東京美術学校を不祥事とされる事件により追われ、賛同する教授数名(横山大観ら)と共に谷中に日本美術院を発足させ、そののち、美術院の拠点を茨城県五浦に移し活動を続けた為、のち1997年には茨城県天心記念五浦美術館が設立されました。
父親が福井藩士で横浜で生まれ海外貿易の隆盛を目の当たりにし、幼少時より英語塾に入るなどし語学力に秀でた人でもあり、のちにボストン美術館中国日本美術部に迎えられたのもこの語学力のお陰でした。1906年にはニューヨークで 英語で ”茶の本” を出版したりと幅広い教養にも満ちあふれた人でした。天心の逸話は限りなくあるようですが、この人はのちに美術を宗教と同じ高い次元のものであると論じています。 

6. 結び

このように多種多様なアートの中から、取捨選択し、自分にとって心地良いアートを見つけ出し、鑑賞することは癒しにもなり、また知識を増やすことへも繋がり、最近のギャラリートークは熱心な来館者で混み合っています。自分で探し出すよりも、学芸員やスペシャリストの解説を道しるべにお気に入りのアートを探索するのも手っ取り早い一つの方法です。また、解説者独自の見解も盛り込まれ、美術鑑賞の見識が広がります。ぜひ、美術館を訪ねたら、ギャラリートークやイベントに参加してみて下さい。目からウロコの面白い話も聞けるかもしれません。

7. 春のオススメ

桜の季節、行楽を兼ねて上野の美術館でアートの鑑賞は如何でしょうか?
*博物館でお花見を*
東京国立博物館   2018.3.13(火) 〜 4.8(日)
http://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=5&id=9509

フランスを代表するポスター作家、レイモン サヴィニャック(1907ー2002)の代表作<牛乳石鹸モンサヴォン>、<ビック>など、約200点の作品をテーマ毎に分類展示。見応えがあります。
*サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法*
練馬区立美術館   2018.2.22(木) 〜 4.15(日)
https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=201709181505718201

aLoreブログ<ARTのある暮らし>も年度最後となりました。昨年7月より購読頂き有り難うございました。次年度もより一層興味の持てる楽しい美術の話題を提供すべくテーマを鋭意検討中です。次年度もどうぞ宜しくお願い致します。

FIN.

<参考文献>
美術検定1級2級美術実践キーワード             美術出版社
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 山口 周   光文社新書

この記事のライター

aloreライター@新井隆子
子供の頃に家が城下町にあった為、近所にお堀のある公園、その中に城跡や県立美術館があり、美術館好きになりました。中学の頃からNHK日曜美術館ファン。
’70 大阪万博の時、岡本太郎の『太陽の塔』の前の特設ステージで開催されたアジア少年少女合唱際に参加、歌ったことも想い出の一つです。
昔、大学で(社会)心理学、その後インテリア、建築を学び「コワイ」と言われても元から「美術」&「心理学」が好き。

年齢/昭和3?年戌年生まれ。
職業/主婦。ブログライター、リサイクル雑貨アーチスト(1992年頃からatelier Pluie de Couleurを設営)。過去、公民館生涯学習部、手作り教室等で講師の経験があります。

*ハンドメイドのオリジナルブランド”atlier Pluie de Couleur” 公開中。
*リトグラフ、古伊万里、鉄瓶のWEBSHOP <A.Gallery>経営中。

趣味/美術館、ギャラリー巡り。地方の隠れ家美術館の発掘。料理。旅行。ピアノ演奏。映画鑑賞。
資格/英語検定2級。美術検定2級。アートエバンジェリスト認証。
家族/既婚。夫婦+息子1人+トイプードル

都会の心のオアシス「美術館」
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