AE-Salon Webマガジン「alore(アローア)」

美術館と私4 〜芸術ARTとしての写真〜

美術館と私4
〜芸術ARTとしての写真〜

最近では、手軽にスマホやInstagramなどを利用して綺麗な写真が撮れる為、プロ顔負けの素敵な作品を撮影するアマチュア写真家も増えて来ました。写真は絵画と異なり、手と対象物の間に複雑な器械(カメラ等)が介在し、器械そのものやそれを操作する技術によって歪曲したり、色を変えたり自在に編集加工することもできるので、作品を制作している時の感覚が絵画の制作などとはまるで異なるようにも感じます。そして、写真は芸術ではないと論じる人がいる一方で、撮った画像を自由に編集したり、更にまた絵画に描き直してそこに加筆修正したりと様々に写真そのものを加工したりする工夫や技術も進化し、写真と絵画、アートとの境界線も曖昧な作品も出て来ました。そのような作品の中から、どうしても目が離せない作品や作家について個人的評価ではありますが、取り上げてみました。

画像1. 「マルセル デュシャン<ローズセラヴィー>」 マン レイ写真展 東京新聞発行 木島俊介監修 2002

 

1. 写真あれこれ

1) 写真技術の誕生

絵画の歴史に比較し「写真」は遥かに新しい技術です。絵画を約3万2千年前のショーヴェの洞窟壁画のような時代まで遡るとすれば、写真はまるで生まれたての赤ん坊のような存在です。カメラオブスクローラというカメラの原型のようなものが考案されたのはバロック期フェルメールの時代で、フェルメールはそれを利用して風景画を描いていたとも云われています。そして銅版写真が発明されたのは1839年のオランダでその4年後に商船により長崎に日本最初の写真機材が持ち込まれました。銀版写真は薬剤の調整が難しく、初めて写真撮影に成功したのは1857年9月17日と云われています。

2) 記録の為の写真とそうでない写真→アート

西洋絵画では中世それ以前から肖像画が多く描かれ、現在までも多くの作品が残され、そこから昔の生活を推測することができます。写真の誕生によって肖像画は肖像写真へと換わり、よりリアルに状況を写し出し、観るものはそこに写し出された過去の生活を容易に推測できるようにもなりました。絵画の場合、細やかで丁寧に描くのに数ヶ月を要したものが、写真の誕生によって、一瞬でありのままを写し出すことが出来、写真の技術は益々発展し、現在の映像化へと進化しました。また、部屋を飾ることを目的とした静物画なども写真技術で簡単に撮影できるようになり、描写するのにわざわざ筆を持って時間を費やす必要もなくなりました。
20世紀初頭になると、カメラの技術も進化し、記録として撮影するだけでは飽き足らず、様々な加工技術を駆使した表現技法も生まれました。画像1のマン レイなどの作品もその一例です。マン レイはニューヨークで1913年に開催されたアーモリー ショウという美術展に<階段を降りる裸婦 NO.2>を出品したマルセル デュシャンを紹介され、時代の先端を行く思想を共に培い、影響を与え合いました。架空の<ローズ セラヴィ>という女性に扮したデュシャンを撮影した作品が画像1です。デュシャンはこのセラヴィという自分が創り出した架空の女性に扮装し、作品をいくつも制作しています。
かたや日本でも第二次世界大戦以前から「芸術写真」というものが誕生し、単なる記録の為に残す作品ではない、感情やモティーフを表現する目的での写真が撮影されるようになりました。そして「新興写真」などというものも中山岩太が1927年に帰国した頃に生まれ、そこからより社会性に富む「報道写真」と「前衛写真」へと分化していきました。大体この辺りからアートとしても写真が認識されるようになっていったのではないでしょうか。

3) アートとしての写真、そして更なる進化した形

多様性に満ちた写真を使って、更にそこから作品を創り出す動きも始まりました。写真をデフォルメしたり加工したり、1950年代から活動し、今年1月に高知県立美術館で初回顧展が開催され、最近またブームとなり、国際的評価も高い岡上淑子さんの、進駐軍が残した洋雑誌の写真をコラージュした作品などもシュールな写真作品として挙げられるのではないでしょうか。

「彷徨 wandering」岡上淑子全作品 河出書房新社 著者岡上淑子 2018

また、最近観た企画展の中でも、原美術館「小瀬村真美 幻画〜像イメージの表皮」では、実在する静物画を模したセットを作成し撮影した作品、ニューヨークの路上に捨てられたゴミなどを使い、17世紀スペインの静物画と見紛う程に仕上げられた写真作品など、また東京都写真美術館で開催された<杉浦邦恵「うつくしい実験 ニューヨークとの50年」>での写真とキャンバスを組み合わせた彫刻のような作品などもあり、様々に写真の技術を用い素晴らしい独自のアートとしての作品世界を表現していると感じます。

3) 最後に

このような写真作品を多く鑑賞できる写真の為の美術館も最近各地に開館し、私などは東京都写真美術館が1995年開館当時から気になり、2016年のリニューアルを挟んで時々訪れています。また、美術館でも最近絵画だけではなく、写真作品の企画展も度々目にするようになりました。絵画、彫刻、写真等々、美術館は様々な文化を受け入れ統合する複合施設へと変貌してきている感じがします。

2. ARTなスクリーン

1) ミッドナイト イン パリ

お馴染みウッディ アレンによるウィットに富んだパリを舞台にしたドラマ。主人公はパリへの旅行中、突然1920年代にタイムスリップ。そこには、ダリやフィッツジェラルドなど名立たる巨匠達が屯するカフェがあり、主人公は魅惑的なパリの魔法にかかります。
https://www.youtube.com/watch?v=_cgX7pnR-xM

3. 美術展Pick Up!!

1) 小平市平櫛田中彫刻美術館

当ライターもボランティアで参加することもあるこの美術館では、明治施政150年を記念した2年に1度の特別展「彫刻コトハジメ」が始まりました。今年11月25日までの開催期間中、田中氏邸宅であった記念館を会場とした津軽三味線世界大会最上級A級演奏家による演奏会や糸あやつり人形一糸座による人形浄瑠璃公演など様々なユニークな関連イベントも開催されます。庭園も美しいこの美術館へ秋の行楽を兼ね、訪れてみては如何でしょう?お車で来館者用に近くの無料で利用できる駐車場も用意されています。
http://denchu-museum.jp/

2) パークホテル東京

パークホテル東京
美術展フライヤーの棚 *2017年8月撮影

”アーチスト イン レジデンス” というアーチストが数ヶ月その場に滞在して制作した客室や東京タワーを間近にみることが出来る客室などアーティスティックなホテルであることを金字塔にした先陣的なこのホテルでは、今、ART coloursVol.26 「いっぱい遊びコト展」が開催されています。25Fロビーとアーティストフロア31Fを利用し、障害者によるアートの展示を行っています。最近頻繁に耳にする障害者によるアート「アールブリュット」。これらの作品を民間企業による自立支援促進、社会貢献事業として行っている<パラリンアート>による展示プログラムだそうです。
*2017年8月撮影時より展示光景の変更が有ります。
https://parkhoteltokyo.com/event/

3) 「草間彌生 永遠の南瓜展」フォーエバー現代美術館

京都祇園で開館1周年を記念し新たに2室拡張しグランドオープンしたこの美術館では「草間彌生 永遠の南瓜展」を開催中。日本家屋の設えと現代美術家草間彌生のコラボレーション。草間彌生作品300点以上を所蔵するこの美術館では、総畳敷の会場内に畳に座って鑑賞するという新しい鑑賞スタイルを提案する美術館だそうです。
https://fmoca.jp/

 

<参考引用文献>
マン レイ写真展   発行 東京新聞
岡上淑子全作品   株式会社河出書房新社

 

 

FIN.

この記事のライター

aloreライター@新井隆子
子供の頃に家が城下町にあった為、近所にお堀のある公園、その中に城跡や県立美術館があり、美術館好きになりました。中学の頃からNHK日曜美術館ファン。
’70 大阪万博の時、岡本太郎の『太陽の塔』の前の特設ステージで開催されたアジア少年少女合唱際に参加、歌ったことも想い出の一つです。
昔、大学で(社会)心理学、その後インテリア、建築を学び「コワイ」と言われても元から「美術」&「心理学」が好き。

年齢/昭和3?年戌年生まれ。
職業/主婦。ブログライター、リサイクル雑貨アーチスト(1992年頃からatelier Pluie de Couleurを設営)。WEBSHOP経営。

*ハンドメイドのオリジナルブランド”atlier Pluie de Couleur” 公開中。
*リトグラフ、古伊万里、鉄瓶のWEBSHOP “A.Gallery" 経営中。

趣味/美術館やギャラリー巡り。地方の隠れ家美術館の発掘。料理。旅行。ピアノ演奏。映画鑑賞。
資格/英語検定2級。美術検定2級。アートエバンジェリスト認証。
家族/既婚。夫婦+息子1人+トイプードル

都会の心のオアシス「美術館」
Return Top
error: Content is protected !!