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美術館と私8  〜ART & 女性〜

美術館と私8
〜ART & 女性〜

昨年のブログ「ARTのある暮らし10 〜日本人の美意識について考える〜」でも取り上げた中谷芙二子さんの企画展「霧の抵抗」が、2018年秋から水戸芸術館で開催されていました。また今年2019年は1月16日から東京都庭園美術館で「岡上淑子 沈黙の奇蹟」が開催されています。このお二人のようにシニアよりもっと上の世代の女性アーチストの活躍が最近目立ちます。中谷さんは大阪万博ペプシ館などで「霧の彫刻」という人工霧を発生させるイベントを行い世界的にも有名になられた方で、岡上淑子さんはかつて戦後のアメリカ雑誌を切り抜いたコラージュ作品などを制作、近年シュールレアリストとして世界的にも再注目されています。また周知のように草間彌生さんは25年位前から水玉などで再ブレイクし、今や日本を代表する国際的なアーチストとなりました。これらの作品は、具象画の中の歴史画や肖像画を鑑賞する時に必要な歴史等の知識は殆ど必要としない、創作者側も鑑賞者もイメージやフィーリングだけで対話できるような観念的な世界を表現しています。そしてそこに何か社会的メッセージを感じ取ることも多く、長い歴史の間、虐げられ自由が許されない社会に生きて来た女性の解放への欲求を私は感じたりもします。
今回はこのようなアートの世界に生きる女性に焦点をあてた話題をお贈りします。

中谷芙二子氏の企画展フライヤー等

1. NEW YORK で現代アートを楽しむ

当ライターが2013年にニューヨークを訪問、ツアーの主催が「美術アカデミー&スクール」。こちらのスクールは私も所属するアートエバンジェリストに関わる教育機関なのですが、その時MOMAなどでガイドを担当された山村みどり先生の講習を都内で再び聞けるとあって参加してきました。タイトルは「New York アート最前線」。タイムリーなニューヨークのアートに関わるお話です。

2.山村みどり氏と筆者

参加して驚いたのが、20名程の参加者が総て女性。山村さんは普段はMOMAでレクチャーガイドをされ、ニューヨークに在住しておられます。国内の美大で日本画を専攻された後、経緯を経て渡米、ニューヨーク市立大学大学院センターで博士号を取得、在学中アメリカの各研究機関で研究員を務め、現在はアメリカの母校でも教鞭をとっておられます。
前回、ガイドして頂いた時は、メトロポリタンミュージアムを始め、セントラルパーク沿いにあるグッゲンハイム美術館、ハイラインやニューミュージアム、チェルシーエリアのソーホーなどへ案内して頂きました。このツアーは2017年にも実施されたようで、その際は、貫通したハイラインや工場跡地をリノベしたディアビーコンなどへも行ったそうです。
アートの中心がパリからニューヨークへと移ったのが、20世紀初頭。そして、古い既成概念を打ち砕く現代アートが盛んなのも、このニューヨーク。マルセル デュシャンがレディメードの便器にサインして作品として世に送り出すような気概に溢れた街ニューヨーク。エネルギーに溢れ、常に世界のアート事情を牽引してきたこの街へ今も世界各地から人が集まってきています。しかし、山村さんによれば、そのような背景とは裏腹に現在注目されている作品は色調も暗めで、血生臭い感じのあるアート作品だとか。ヘンリー ダーガーなどのアウトサイダーアートも注目を浴びていて、病んだダークな部分にも人々の眼差しが向けられているというようなお話でした。

2. 卒業制作展で

当ライターがボランティア登録をしている小平市平櫛田中彫刻美術館で昨年開催された「でんちゅうストラット」展に出品されていた木村桃子さんを武蔵野美術大学に訪問しました。今年1月17〜20日まで卒業終了制作展があり、木村さんは大学院修了生として出品されました。木彫を専門にする学生さんで小柄な方なのですが、田中彫刻美術館の時と同じように大きな木彫作品を制作されていました(画像3「解放のカリアティード*1」)。「でんちゅうストラット」では、「ramp」という巨大な一本の三つ編みを制作展示されていました。今回の作品でも女性立像であるはずの部分が編んだ縄の形になっていて、三つ編みや縄という柔軟性のあるものを固い木彫で表現していました。また重い木という素材にマスキングテープを貼って軽さを出したかったというお話で、重量感と軽快感、相容れない素材どおしのアンチテーゼを追求したユニークな作品でした。アトリウムの体育館のように広い黒と白の無機質な空間に違和感無く溶け込む木村さんの作品は、木彫の素朴さや温かみがほっとする居心地の良さも感じさせてくれます。もう一つの作品は「d-o-g」という犬の形をした木彫作品。やはりマスキングテープが貼ってあります。
*1カリアティード (ギリシア語)古代ギリシャの神殿建築で、円柱の代わりに梁を支える役目をする女性立像

3.  作品「解放のカリアティード」木村桃子氏
4. 武蔵野美術大学美術館アトリウム

下の画像は同じ彫刻科大学院卒業生齋藤絵利花さんのミクストメディアの作品。金属のパイプと人工のファー等を使ったインスタレーション。やはり無機質な空間に同化する金属の素材の中で唯一人工のファーが風に煽られて舞っています。人工物に囲まれた生活の中で、毎日端末を使用し人造物のようになってしまった私達自身のように受け取れなくも無い…風に飛ばされて行ってしまいそう。
今年の卒業修了制作展に出品している学生の数は約1200名、大学院彫刻コースの修了生は7名だそう。卒業後は教師になる人も多いそうですが、美の道は長く険しい。だからこそ楽しい。

5.「マシンに煽られている人工毛皮から発生させたこと」齋藤絵利花氏

3.女性の社会進出

色々な時と場所で男女間格差のある社会の中で希有な存在であるアートの社会。昔から文学の世界だけでなく、アートや音楽の世界でも、作品は男女の性差なく評価されてきました。素晴らしい作品は男女の区別なく、愛され評価される平等な存在なのです。かつてボーヴォワールは、「女は女として生まれて来たのではない。女として作られるのだ。」ということを言っています。社会から期待される女性像を演じてしまうからこそ、そこから脱出することも難しい社会の逆境の中でアートに生きる女性はしなやかで逞しいのです。

4. ARTなスクリーン

**やさしい女**
フランスの名優 ドミニク サンダ17歳のデビュー作品。
http://mermaidfilms.co.jp/yasashii2015/

5. ART TOPICS

*「ピアニスト」向井山朋子 展  銀座メゾンエルメス
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-forum/archives/842721/

*イケムラレイコ 土と星 Our Planet  国立新美術館
http://www.nact.jp/exhibition_special/2018/Ikemura2019/

*ル コルビジェ 絵画から建築へ  国立西洋美術館
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019lecorbusier.html

 

fin.

この記事のライター

aloreライター@新井隆子
子供の頃に家が城下町にあった為、近所にお堀のある公園、その中に城跡や県立美術館があり、美術館好きになりました。中学の頃からNHK日曜美術館ファン。
’70 大阪万博の時、岡本太郎の『太陽の塔』の前の特設ステージで開催されたアジア少年少女合唱際に参加、歌ったことも想い出の一つです。
昔、大学で(社会)心理学、その後インテリア、建築を学び「コワイ」と言われても元から「美術」&「心理学」が好き。

年齢/昭和3?年戌年生まれ。
職業/主婦。ブログライター、リサイクル雑貨アーチスト(1992年頃からatelier Pluie de Couleurを設営)。過去、公民館生涯学習部、手作り教室等で講師の経験があります。

*ハンドメイドのオリジナルブランド”atlier Pluie de Couleur” 公開中。
*リトグラフ、古伊万里、鉄瓶のWEBSHOP <A.Gallery>経営中。

趣味/美術館、ギャラリー巡り。地方の隠れ家美術館の発掘。料理。旅行。ピアノ演奏。映画鑑賞。
資格/英語検定2級。美術検定2級。アートエバンジェリスト認証。
家族/既婚。夫婦+息子1人+トイプードル

都会の心のオアシス「美術館」
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