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ARTのある暮らし8 正月編 〜神や仏だけじゃない、奇怪なもの達〜

ARTのある暮らし8  正月編
〜神や仏だけじゃない、奇怪なもの達〜

冒頭にある画像、フランスの写真家シャルル フレジェ氏の「WILDER MANN」と「YOKAI NO SHIMA」という写真集の中の作品です。何世紀も前から伝わるヨーロッパの祭りの衣裳と日本の伝統的な祝祭を各地を取材して撮影した写真集です。2016年には銀座メゾンエルメスで「YOKAI NO SHIMA」という美術展も開催されました。正月の初詣に因み、この奇怪かつユーモアのあるフレジェの世界が、今回のテーマを選ぶきっかけとなりました。

1. 世界の正月の祝い方

2017年も終わり、干支は犬の2018年の到来です。日本では大晦日から三が日まで神社やお寺にこぞって初詣に行き、獅子舞を観たり、お札を貰って家の神棚に祀る習慣が古くからあり、祝い事としてお節料理を食べる習慣がありますね。凧揚げや羽根つきといった伝統的な遊びは今はゲームに変わりました。
正月は日本は1月1日ですが、中国の正月の祝いは2月で春月と呼び、1月1日は普段と変わることのない生活です。サウジアラビアなどのイスラム教の人達はイスラム法で基本的にお祝い事をしてはいけないという法律があるため、普通の日として過ごすことが義務付けられているそうです。祝い事も飾り付けも何もないということですね。南半球のブラジルなどはお正月は夏のシーズンで盛大にパレードをしたりしてお祝いをします。

正月のためのリース作成
筆者

2. 日本の神や宗教

日本は太古の昔は神の国でしたが、538年(公伝)に百済から仏像、経論が伝えられました。その後、蘇我氏物部氏の両豪族間で50年に渡る争いが続き、それ以後現在に至るまで神仏が同居する国となり、お寺と神社に詣でる習慣が続いています。仏教公伝から710年の平城遷都までは仏教が国家的な宗教となり、寺院仏閣の造営が本格化しました。そこへ1538年フランシスコ ザビエルらによってキリスト教がもたらされ、多宗教の共存する国となりました。西洋ではカトリックとプロテスタントの間に激しい宗教戦争が長く続きましたが、日本では秀吉の時代のキリスト教弾圧以外は長くは続かず、現在は、その他新興宗教と共に共存しています。
また、各宗教にはやはりキリスト教で十字架を仰ぐように、仏教には仏像があり、崇拝の対象はそれぞれを象徴する形で個性的です。「YOKAINO SHIMA」
にある奇怪な祝祭の衣裳は五穀豊穣などを祝い、また西洋に取材した「WILDER MANN」では原始神を祀る場合も多く、精霊や霊魂、神様が自然の中に宿るという ”アニミズム” の思想を反映した衣裳だったりします。それらは、神だったり鬼だったり邪悪なものも存在します。

3. 神仏の形色々〜日本の場合〜

仏教で崇められる仏像の形は大まかに立像(立ち姿)、座像(座している姿)、涅槃像(寝姿)の3種類があります。近年まで日本で仏像といえば、座像、立像を思い浮かべるケースが殆どでした。というのも、涅槃像はタイで多く見られる釈迦の寝姿で、釈迦が入滅する際の姿です。但し、仏画としては最も多く存在するスタンダードな姿だそうです。釈迦入滅の際には人や全ての生きとし生けるものが周囲に集まってその死を惜しんだとされています。奇想の画家伊藤若冲 (1716ー1800) の「野菜涅槃図」はその光景を野菜で模して、大根を釈迦に例え、沙羅双樹をトウモロコシ、様々な野菜が弟子としたユニークな水墨画を残しています。


仏像以外に、21_21DESSIGN SIGHT「野生展」で展示されている「丸石神」
など例に取ると、縄文時代から「丸石」が信仰の対象とされ崇められているアニミズムの場合などもあります。

「野生展」21_21DESIGN SIGHT

4. 祝祭について

日本では寺院でも神社でも五穀豊穣などを祈り、祭りは神輿(みこし)を担ぎます。そして、祭り以外でも日本各地では「YOKAI NO SHIMA」にもあるように様々な衣裳を着て伝統行事が執り行われます。例えば、大晦日に行われる秋田男鹿半島に伝わる「なまはげ」など。怖い鬼に扮装した男衆が作り物の包丁を持って怠け心を戒める為に「悪い子はいないかー」と言いながら子供を探して各家々を暴れ回ります。家人は料理や酒でこれを丁重にもてなし、無病息災、田畑の実り、山海の幸の恵みを祈ります。

YOKAINO SHIMA なまはげ(秋田)

ARTの世界でも、このように信仰や祝祭をテーマにした形で、伝統的でより原始的なものへの回帰指向も起こりつつ有ります。話は少しそれますが、10年以上前「人体の不思議展」という企画展が有楽町の国際フォーラムであり、生の人体標本を使った解剖学と提携した美術展がありました。その解説文の中に、IT化が極端に進み、常に機械に触れることによって、人は人の身体感覚を失うことになり、このような人体標本を間近に視ることで、その進行を防ぎ、自分の身体感覚を取り戻すだろうというような示唆的内容が記載されてありました。今まさに、そのような時代の只中にいる私達。そして、私達人類が忘れてはいけない重要な感覚の喪失を、神仏やこれら伝統的な祝祭行事、またアニミズムへの回想、回帰が救ってくれるような気もします。

5. オススメ美術展

*野生展
先にも述べましたが、IT化が過剰に進む現代の私達が置かれている状況を振り返る良いきっかけとなるだろう企画展。明治時代の博物学者南方熊楠(みなみかた くまくす)の発見や発明が示唆する宗教感への展開などユニークな企画展です。
http://www.2121designsight.jp/program/wild/
21_21DESIGN SIGHT  2017.10.20〜218.2.4

*レアンドロ エルリッヒ展 森美術館
金沢21世紀美術館に恒久設置された<スイミング プール>で有名なアルゼンチンの作家 レアンドロ エルリッヒの騙し絵のような作品世界。参加型の楽しめる展示内容です。
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/LeandroErlich2017/
森美術館  2017.11.18〜2018.4.1

 

FIN.

<出典>
「WILDER MANN」シャルル フレジェ (株)青幻舎
4. 「YOKAI NO SHIMA」シャルル フレジェ (株)青幻舎

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事のライター

aloreライター@新井隆子
子供の頃に家が城下町にあった為、近所にお堀のある公園、その中に城跡や県立美術館があり、美術館好きになりました。中学の頃からNHK日曜美術館ファン。
’70 大阪万博の時、岡本太郎の『太陽の塔』の前の特設ステージで開催されたアジア少年少女合唱際に参加、歌ったことも想い出の一つです。
昔、大学で(社会)心理学、その後インテリア、建築を学び「コワイ」と言われても元から「美術」&「心理学」が好き。

年齢/昭和3?年戌年生まれ。
職業/主婦。ブログライター、リサイクル雑貨アーチスト(1992年頃からatelier Pluie de Couleurを設営)。過去、公民館生涯学習部、手作り教室等で講師の経験があります。

*ハンドメイドのオリジナルブランド”atlier Pluie de Couleur” 公開中。
*リトグラフ、古伊万里、鉄瓶のWEBSHOP <A.Gallery>経営中。

趣味/美術館、ギャラリー巡り。地方の隠れ家美術館の発掘。料理。旅行。ピアノ演奏。映画鑑賞。
資格/英語検定2級。美術検定2級。アートエバンジェリスト認証。
家族/既婚。夫婦+息子1人+トイプードル

都会の心のオアシス「美術館」
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