美しきARTな日々4
〜色ものがたり 「黒」Part1〜
絵画を描く時、または紐解く時にまず色と構図が重要なテーマとなるようですが、そこで今回から隔月に渡りテーマを「色」に書き進めたいと思います。というのが、ちょうどNHKの再放送で天海祐希さんの「スペイン 情熱の女たち」を観たからです。スペインマドリードのキャリアウーマンからプラド美術館のゴヤの絵画に描かれている女性達まで「黒」を愛し、ファッションに取り入れている姿を観てテーマを思い付き、ピカソやダリ、古くはゴヤなど多くの芸術家を輩出してきた国で「黒」という色が非常に重要であることの意義を考えてみたいと思ったのでした。スペインに居を構えた画家鴨居玲や戸嶋靖昌なども無彩色の「黒」という色を用いて多くの個性的な作品を制作しており、「黒」が凄いインパクトをもって巧みに人生の闇を表現しています。スペインが発祥の地と言えなくもない「黒」の色使いや、スペインという国、そして日本でもいつの頃からか、女性も黒を好んでファッションに取り入れるようになったきっかけなど考えてみるのも面白い感じがしたのでした。かくゆう私も女性はフォーマル以外あえて黒を着ない昔、オードリーヘップバーンに憧れ、おませに黒のタートルネックを着こなそうとした少女でもありました。

1. 「黒」
16進表記 #000000
RGB (0,0,0)
マンセル値 N1
絵の具の三原色(赤、青、黄)を混ぜると黒になる。
全ての波長を完全吸収する物質は存在しないが、近づけるべく開発された暗黒シートは光の吸収率が99.5%以上。
2. ベラスケスの「黒」
世界の三大名画の一つとも言われる「ラス・メニーニャス」を描いたスペインの画家ベラスケスは、やはり「黒」を使うことによって、逆に光を表現するのが巧みな画家。そしてルネサンス期オランダのフェルメールもやはり暗い背景に上手く光を表現する画家と言われています。暗黒色の中だからこそ、強調される白い光。バロック期のイタリアの画家カラバッジョもやはり、「黒」を用いた光と闇のドラマチックな表現が巧みな画家です。現代の日本人画家鴨居玲などは「黒」や「赤」を大胆に使用したドラマチックな表現をする日本人離れした作風でヨーロッパの伝統的な絵画表現に底通するものがあるような気がします。
近代になって電気が発明される以前、宮廷や室内は当然暗く、窓から差し込む光やランプだけが光源であるとしたら、室内を表現するのに「黒」は混色するにしても欠かせない色だったのではないでしょうか。産業革命がもたらした機関車や鉄道網の発達、チューブ絵の具の発明によって絵画が戸外で描かれるようになり、印象派絵画が生まれました。電気の発明や産業革命によって、絵画の表現にも明るさや軽さがもたらされ、背景にも有彩色が使われるようになるなどして、暫く忘れられていた「黒」という色彩が、闇や影の表現だけではなく、近年また、色彩として認識され、使用されるようになったのかもしれません。因みに印象派絵画が生まれる以前に、近い表現法の画家ターナーはイギリス人画家で産業革命がいち早くスタートした国ですね。

夏の旅情 〜軽井沢〜
避暑地としてあまりにも軽井沢は有名ですが、各地で避暑地の整備が進み、競合するように美しい町並みのリゾートも増えて来た中で、再び軽井沢に足を運び、美術館などの文化施設の点から金字塔<軽井沢>を比較してきました。
軽井沢国際芸術文化都市推進協議会「略称 KIAC」
1. 軽井沢ニューアートミュージアム

プリンスショッピングプラザでショッピングも楽しいのですが、中軽、旧軽を含む軽井沢駅周辺には美術館やギャラリーが他の施設に比べ数えきれない程あり、中でも「軽井沢ニューアートミュージアム」は特に訪ねてみたかった美術館でもあり、今夏初めて訪問しました。入るとすぐ、このサブタイトルにある「略称 KIAC」の解説の為のキャプションが貼られ、*「美術館をはじめとする数多くの文化施設を誘致し、…………国際親善の名にふさわしい芸術文化都市に育て上げていくことを目的に発足いたしました。」とありました。なるほど、周辺に美術関連施設の多い理由が納得できました。このビルの1階は入場無料の書籍コーナーなどもあるミュージアムショップとなっていて、2階は有料スペースで金沢21世紀美術館のように渡り廊下で繋がる東雲辺りにありそうな倉庫風のギャラリースペースが6つ並んでいます。この時はモノ派の堂本尚郎や草間彌生など堂々たる前衛芸術の巨匠の作品とやはりモノ派の上前智祐作品が並ぶ展示室でポロックのVTRを放送していました。学芸員の方にお聞きしたところ、銀座の画廊<WHITE STONE>が経営するミュージアムで、当初はシャネルが出店する予定だったビルを内装しミュージアムとしてオープンしたのだそうです。画廊所有の堂本尚郎のズラリと並んだ作品群は圧巻で、凄いコレクションの数々、台湾、香港にもギャラリーがあり、特に香港が今注目されているそうです。建築家隈研吾氏による「白樺と苔の森」に現代アーティストジャン=ミシェル オトニエル氏によるハートのオブジェ「こころの門」が置かれたサンクチュアリがあり、展示室を披露宴に利用することができるプランがあるなど、とても素敵な空間になっています。ただ、こちらでは観光地ということもあって、1階の入場無料のミュージアムショップまでは足を運んでも2階の有料スペースまで見学する観光客は少ないとのことでしたが、作品だけではなく、ここでしか味わえない建物や芝生、美しい白の空間、全てがARTであり、一見の価値はあります。1階にも展示されていた巨匠作品の中にも手が届きそうな作品もあり、軽井沢を訪れたら、足を運んでみてはいかがでしょうか?

2. 軽井沢現代美術館
他に池袋西武百貨店にあった頃によく通っていた「セゾン現代美術館」が美しい庭園の中にひっそりと建ち、そちらと軽井沢駅のほぼ中間には「軽井沢現代美術館」が、図書館等の文化教育施設の集落の奥に建設されていました。学生さんなど若い人をターゲットとしている感じで、奈良美智や草間彌生の作品展示が多いそうで、足の弱ったシニアなどは歩いてたどりつけない程の急な坂道を昇りきった所にあり、私などもあと数年で歩いて昇るのは大変かも..。
東京から新幹線で1時間半位、高速バスも本数の多い、金沢とのほぼ半分程の距離の軽井沢、自然も多くこれから芸術文化都市としても発展して行けばいいですね。
おススメ美術展
塩田千春展:魂がふるえる
森美術館 2019.6.20(THU.) 〜 2019.10.27(SUN.)
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/shiotachiharu/
INSTA映えする赤い糸を張り巡らせた場内でスマホ撮影する若い人がとても多かったのですが、作家さんの意図は、自分の癌との闘病などから生と死を見つめた深い作品になっていて、生きるとは何かを問うスケールの大きな美術展でした。現代アートが全て生と死をテーマに直結しなくてもいいのですが、内面を深く掘り下げていった結論は、結局文学も含め全てのARTの課題は「生きるとは何か」の問いとなるのだろうか、と考えてしまいました。塗料を身体に塗る作品など、まさに命を削ってまで制作を続ける生き様と塩田さんのにこやかな笑顔。重いテーマを現代風に表現した展覧会。
ハンドメイド
atelier Pluie de Couleur produit par TAKAKO ARAI
フラワーアレンジメントの教室に通っていた昔からスタートとしたハンドメイドを時間の空いた時に時折minneのサイトにアップしています。こちらへもどうぞ。
https://minne.com/@voyageurtk

庭園
アイキャッチ画像使用 塩田千春 <静けさのなかで> 2002/2019年 森美術館「塩田千春展:魂がふるえる」(2019年) での展示風景
*引用部分 キャプション「軽井沢国際芸術文化都市推進協議会(略称、KIAC)」について 軽井沢ニューアートミュージアム
fin.