AE-Salon Webマガジン「alore(アローア)」

20世紀からやってきたタヌキ型ロボット、21世紀のミディ・ピレネーへタイムスリップ

20世紀からやってきたタヌキ型ロボット、21世紀のミディ・ピレネーへタイムスリップ

サン・ジェルマン伯のごとく時空を超えて

この盆休みに、今世紀に入り初めて国際線に搭乗し、ミディ・ピレネーへの9日間ツアーに参加してきました。何しろ€を使うのも生まれて初めてでしたので、まさに時空を超えての旅でした。アルビ十字軍や黒い聖母所縁の地を巡ったりするマニアックな行程で、果たしてツアーとして成立するのかしらん?という思いもあり、前世紀では汗だくで各国の観光局を巡り、事前に地図やコンサートスケジュールをしっかりと集めていたのに、今回は、旅行会社に申込んだ後は、ろくな下調べもしないでほったらかし状態でした。前世紀末の「冬のリビエラ巡り」では、モンセラットで黒いマリアを撫でたのに始まり、バルセロナとアンティーヴのピカソ美術館、フィゲーラスのダリ美術館、ニースのシャガール美術館、ヴィル・フランシュ・シュル・メールのコクトー「シャぺル・サンピエール」、ミラーノでのロンダニーニのピエタ、ブレラ美術館、ポルディ・ペッツォーリ美術館等と今でも同じコースをそのまま再訪したい位のアートじゃぶじゃぶの旅でした。なもんで、今回はペリゴールでフォアグラ同士、共食いでもしてくるか(笑)、あまりアート色はないかなといささか引いていたところも正直ありました。

事前に佐藤賢一『オクシタニア』も読まずに旅に出るなんて、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」

学生時代の夏休みに、パリに着いて真っ先にモロー美術館に向かったところ、一番のお目当て『出現』はヴァカンスシーズンの南仏に貸出中でがっかりしました。今回はまさにそんなフランス人家族が愛犬連れでヴァカンスに訪れるような地を巡りました。聖地ルルドを除いては、アジア人を見かけることも殆どなく、どこでもフランス人ばかりでした。アート色はさほど期待せずと小生意気に決めつけていた私は、このサイトの読者層やチコちゃんからは見出しのようなお叱りを戴きそうですが、流石欧州だけあって、教会建築、美術館の充実ぶりはやはり素晴らしく、大きな公園や街角等には洗練されたコンテンポラリーアートが溢れ、ブルトンら数々のアーティスト達に愛された美しき小さな村々にはギャラリーや工房が沢山ありました。(冒頭の写真はコルド・シュル・シエルで撮りました。この村は大変美しく、今回の旅の一押しでした。)

ささやかなお勧めスポットガイド

宿泊した地は、トゥールーズ、サルラ、ボルドー、ルルドで、これらの地を拠点に16の地を訪れましたので、アートファンのご参考になりそうなお勧めスポットを紹介させて戴きます。

1.トゥールーズでは市庁舎をお忘れなく
無料だったので、さほど期待もせずに気軽に市庁舎に入ったところ、何とトゥールーズ生まれの「アンリ・マルタンの間」があり、四季の超大作が拝めるという嬉しいサプライズがありました。ご承知のように大原美術館での絵葉書売上№1はアンリ・マルタン作品という日本でも大人気の画家ですので、見落しをなさらぬようお気をつけ下さい。

2.アルビのロートレック美術館、定番スポットも流石の充実
あえて言及するまでもなく、アルビを訪問する観光客が必ず覘くスポットでしょう。中の雰囲気は、なんとなく三菱一号館を思わせました。私が一番好きなロートレック作品はアーティゾン所蔵の『サーカスの舞台裏』なのですが、そんなサーカス連作も鑑賞できた上、ブールデルによるアヴリル嬢胸像なんかもありました。ここでもアンリ・マルタンが沢山あり、お気に入りのヴァロットン、デュフィ―なんかも並んでいて時間が足らなくなりました。ラ・トゥールの十二使徒の模写も揃っていました。ここはお時間をかけてご覧戴くことをお勧めします。

3.アンドレ・ブルトンを探せ
サン・シル・ラボピーにはアンドレ・ブルトンが毎夏過ごした別荘が残っています。指差し案内版を二つまでクリアしたので、近くまで行っていたか、実際に辿り着いていたのかもしれませんが、流石シュル・レアリズムの法王ブルトンだけあってハードルは高く、残念ながら特定には至りませんでした。トゥーリスト・インフォメーション等で確認すればよかったのですが、ツアーとしての時間の制約もあり、まあ旅では一つや二つ位はやり残したことがあった方がいいのかも…と自分に言い聞かせました。因みに、ここも「美しい村」の名に偽りなしです。

4.音楽ファンはボルドーを目指す♪
感覚で綴ってしまってはいけないのでしょうが、パリでは夜の選択肢が多いせいか、クラシック・コンサートは他の都市に比べると充実度が低いような気が昔からしていました。現在のボルドー国立歌劇場総監督はかのマルク・ミンコフスキで、同じツアーに金沢から参加されたご夫妻はアンサンブル金沢で彼の『ペレアスとメリザンド』を聴いたと熱く語ってらっしゃいました。ボルドーでは、生憎公演日とぶつかりませんでしたが、垂れ幕に記された演目、演奏者の豪華なラインナップには、1シーズンをボルドーで暮らしてみてもいいかなと思いました。「水鏡」等の夜景観光に宿泊ホテルからタクシーで中心地に移動したところ、ドライバーが夏祭りのテーマは日替わりで今晩はテキサスなんだと教えてくれたので、ヴェンダース映画『パリス、テキサス』を振ったところ見事に反応してくれました。こんな会話が出来るのも欧州ならではです。

5.紋章チェック
フォアグラの街サルラ(正式名はサルラ=ラ=カネダ)の紋章はフランソワ1世所縁の火蜥蜴(サラマンダー)です。フォアグラと並んで、🦎も街のいたるところに潜んでいましたので、カメラで🦎狩りをしていました。こんな視点で街歩きをするのも実に楽しいものです。

6.ルルドの楽しみ方
聖地ルルドだけは、流石にフランス人ばかりではなく、カトリック圏各国、イタリア、スペイン、ポーランド、アイルランド、アフリカ諸国等世界中からの観光客も集まっていて、8月15日の聖母被昇天祭の直前だったせいか街中やホテルは大賑わいでした。定番の蝋燭行列(プロセッション・マリア―ル)ではマリア像を先頭に皆で讃美歌を唄いながら行進し、あまりにも有名な♪アヴェ アヴェ アヴェ マリ-アの旋律が繰り返される件では、一同手にしたキャンドルを揃えて上に掲げ、イヴェント終了後は人種を超えて握手し合うという感動が味わえます。キャンドルはプラスティック容器製よりも安価な紙製を選んだ方が(燃えるリスクはありますが)、讃美歌の歌詞(多分、おそらく)が書かれているようで、より楽しめると思います。

ルルドから、列車(フランス国鉄SNCF)で西に30分程で行けるポーへの散策もお勧めです。この地はアンリ4世や、ナポレオンにそでにされたデジレと結婚し、後にスウェーデン国王となりナポレオン包囲戦争の一翼を担ったベルナドット将軍の出身地であり、8月の夜はこの2人のイヴェントが開催されているようです。佇まいは高級リゾート地といった趣で、ブティックも飲食店も洗練されたハイソ感に溢れていました。ピレネー山脈も綺麗に見えました。

7.その他
ロカマドゥールの聖剣デュランダル(聖剣マニア垂涎の的?)や黒い聖母子像、リュック・ベッソン『ジャンヌ・ダルク』のロケ地ベナック・エ・カズナック等にご関心のある方は、是非お声掛け下さい。ジャンヌ軍の高官であった後の青髭侯ジル・ド・レなんかについては語りたくてたまりませんので…(笑)。

最後に実に個人的な感傷をたらたらと

以前、佐々木昭一郎リバーズ について綴らさせて戴きました。クレモーナ編『川の流れはバイオリンの音』ではヒロインのアルコバレーノ(伊語で虹)の叫びに心をときめかせ、アンダルシア編『アンダルシアの虹』ではアルコイリス(西語で虹)とグラナーダのひと夏の物語に酔いしれました。今回、サルラの早朝(欧州の地での早朝や黄昏時の街歩きは素敵です)散策で、雨上がりに現れてくれたアルク・アン・シエル(仏語で虹)を自ら拝むことが出来ました。自己満足そのものですが、世紀をまたいで「虹の三部作」を紡ぎ終えることが出来たかなとの感慨があります。また冒頭で言及した「冬のリビエラ」の回ではサンテックス図柄の旧フランスフラン新券を自らへのお土産としたと綴りましたが、彼が飛行機教官を務めていたトゥールーズでは今回も『星の王子様』の有名な台詞入りグッズを大人買いしてきました。更に「黒い聖母」でも、幼稚園児の時に入院病棟でグリム兄弟『子供と家庭のための童話集』を読んでいて、何故いい人(?)である筈のマリア様が人々に虐げられるかが、やたら不思議でならなかったことを懐かしく思い起こしていました。

aloreがアートファンの虹の架け橋とならんことを願いつつ

この記事のライター

aloreライター春山博美
2008年に美術検定1級合格、2009年東京都美術館で開催された『美術館名品展』にてアートナビケーターとして初ボランティア参加。
その後、美術アカデミー&スクールが主催するART LABO等で研鑚を積みつつ、2015年に初代アート・エバンジェリスト認証を取得。週末は冬でも汗だくで専ら美術館・画廊を巡っている。
ガイド歴はDIC川村記念美術館、朝倉彫塑館等の個性ある美術館を好み、また「アトリエ巡り」として新宿落合地区での中村彝、佐伯祐三の西洋画アトリエ、川端龍子記念館での日本画アトリエ等の紹介を得意とする。
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