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「すずバス」でめぐる奥能登国際芸術祭(前編)

「すずバス」でめぐる奥能登国際芸術祭(前編)

7月に出かけた「北アルプス国際芸術祭」に続き、9月上旬、こちらも今年が初開催となる「奥能登国際芸術祭」へ行ってきました。会場は、能登半島の最北端にある石川県珠洲市。三方を海に囲まれた地で、歴史や文化を感じさせる魅力的な作品にたくさん出会うことができました。

ほぼすべての作品を回れる!

珠洲へは金沢駅から特急バスで約3時間。少々遠い道のりですが、現地では作品案内バス「すずバス」を利用することで、スムーズかつ快適に作品を回れます。この「すずバス」は予約制・定員制ですが、平日や参加者の少ない時でも必ず運行してくれるのがすごい!しかも地元ボランティアさんのガイド付きです。

「すずバス」は全4コースで、1コースが半日の設定。私は珠洲に2泊して、1日目午後にDコース、2日目午前にAコース、午後にCコース、3日目午前にBコースに参加したので、特に印象に残った作品をその順にご紹介したいと思います。

「あのアートを目指せ!」冒険気分が味わえるDコース

旅の初日、北陸地方は大雨の予報。珠洲に着くと雨は弱まっていたものの、やっぱり残念・・・。そんな気持ちをまず癒してくれた作品が、角文平『Silhouett Factory』でした。古い倉庫、海に向けて開かれた扉の前にいくつもの金属板の切り絵が吊されています。船や灯台、飛行機、廃線となった「のと線」の車輌、名物キリコ祭りの切子灯籠、接待風習「ヨバレ」の料理が盛られたお膳、塩田で働く人たち、地を這うように枝を伸ばす「倒さ(さかさ)スギ」、とんび、カニやタコ、椿の花など、歴史や文化のモチーフから人や生き物までさまざま。ひとつひとつが静かに揺れ、翻り、時に重なり合う様を眺めていると、次第に珠洲という土地全体の個性や魅力が伝わってくるようです。

Silhouett Factory

Silhouett Factory
晴れているとこんな感じです(翌日に再訪)

 

気持ちをさらに明るくしてくれたのが、ひびのこづえ『スズズカ』。天井から吊された色とりどりのオブジェ、実はこれ、衣装なのです!一部は実際に着てみることができます。見た目が小さいので破れないかと心配になりますが、伸縮性があるので大丈夫。これらはコスチュームアーティストであるひびのさんが珠洲の海に潜り、海中の生物をイメージして作った作品だそう。『スズズカ』ではこの衣装を使ったダンスパフォーマンスイベントも多く開催されています。

スズズカ

そして、全作品の中でも最も行きづらい場所にあるのが、鴻池朋子『陸にあがる』。木々に覆われた場所や足場の悪い坂道を歩いて向かいます。特にこの日は雨だったので、ぬかるみに足を取られて何度も滑りそうになりました。

しかし登り切って作品が見えた瞬間、みんな疲れを忘れて大興奮!動物の角のようなものと人間の足が組み合わさった造形は何とも神秘的で力強く、さらに「どうやってあんな崖の上に!?」「どう固定されてるの!?」と驚かずにはいられません。

陸に上がる(崖)古い蔵や倉庫を活かした情緒ある作品から海岸に設置されたダイナミックな作品まで、幅広く楽しめるDコース。途中、海沿いの「カフェ コーブ」で、評判の二三味珈琲をいただくこともできました。ガイドさんのご厚意と時間や人数の関係で運良くという形でしたが、たまたま同じコースに参加した方々と一緒に“さいはてのカフェ”で味わったコーヒーは思い出に残る一杯になりました。カフェコーブ

「入ってびっくり!」驚きのある作品に出会えるAコース

翌日は朝から快晴!青空のもと、気持ちよく作品巡りをすることができました。

すずなり館 旧珠洲駅ホーム
すずバスの発着地である道の駅「すずなり館」に残る旧珠洲駅のホーム

 

個人的にとても好きだったのが、村尾かずこ『サザエハウス』です。子どもの頃、いくら覗いても見えない巻貝の殻の奥になぜか惹かれた人は多いのではないでしょうか。『サザエハウス』は、あの憧れ(?)を叶えてくれる作品。海辺の船小屋の外壁に、なんと約2万個ものサザエの貝殻が貼り付けられています。そして小屋の内部は一面真っ白。すべすべした手触り、なめらかな段々、そう、サザエの貝殻の中をイメージしているのです!小窓から海を眺めることもできる、どこか秘密基地のような空間。「すずバス」は効率よく数多くの作品を回るためひとつひとつの作品の鑑賞時間は短いのですが、特にこの作品はもう少し見ていたかった・・・、一日あの中で過ごしてみたい、とすら思いました。

サザエハウス外観サザエハウス内部

サザエハウス内部
奥には小さなサザエがひとつ

 

そしてこちらも印象的だったのが、塩田千春『時を運ぶ船』。海を見下ろす丘の上にある元保育所の建物の一室に展示されています。塩田さんの作品には以前から赤い毛糸が使われたものが多くありますが、今回の作品はご自分の名前とリンクした能登の「塩田」にインスピレーションを受け、「塩づくり」をテーマとしているそう。どれだけの年数を経ているのかと思わせるほど古びた木造の船、そしてまるでそこから噴き出しているかのように、室内に張り巡らされた赤い毛糸。使われている毛糸の量は、会場で聞いたところ「ざっと珠洲から金沢までくらいの長さ」だとか!

時を運ぶ船

Aコースはバスでの移動時間が長く、回る作品の数は少なめですが、ひとつひとつにインパクトがあるものが多かったです。また、山間を多く回るのもこのコースの特徴で、爽やかな山の空気や景色を作品と共に楽しめました。上黒丸 北山 鯨組 2017見どころがいっぱいの奥能登国際芸術祭。次回は「すずバス」CコースとBコースで回れる作品をご紹介したいと思います。

この記事のライター

aloreライターノムラシマ
ネコと銭湯と焼肉をこよなく愛するコピーライター。
現代アートが好きで、美術館のほか芸術祭にもときどき出没。ひとり暮らし歴約15年。
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